市町村合併、地方財政「改革」の焦点は?  


Q5 福祉の水準は隣の市のほうが多少よくても、自分の町を残したいのですが……。

A 合併はまちづくりの根本にかかわる問題です。町を残すのかどうか、総合的に判断したいものです。

 たしかに、介護保険料や利用料(減免や補助)、国保税(料)、保育料、上下水道料金など、くらしに密着したサービスでも、市町村ごとに違いがあります。隣の市町村のほうが水準が高い、という分野もあるでしょう。

 ですから、「合併したらどうなるのか」のメリットやデメリットがあきらかでない場合、そうしたこともふくめて、関係地域の実情を調べることや、資料を行政にもとめることは大事なことです。これまで、本誌でも、(1)住民の利便やサービス、負担はどうなるか、(2)住民の声の反映はどうなるか、(3)地域の経済やいまの市町村の未来はどうなるか、(4)自治体財政の将来の見通しはどうか、の四つのものさしを紹介してきました。

 大事なことは、いよいよ合併すべきかどうかを判断するときには、こうした点をふまえて、「では、合併したほうがいいのか、合併しないでまちづくりをすすめたほうがいいのか」を総合的に判断していくことです。合併は、一部事務組合などのように、「介護保険のため」など、個々の施策のためのものではありません。住民のくらしと福祉、地域のまちづくりの全体にかかわる根本的な問題です。個々の施策の比較に終わらず、全体として、どちらが住民の利益と地域のまちづくりに役立つのか、とりわけ合併した場合は、いまの市町村のかたちと役場、議会はなくなることをふまえて、判断することがもとめられます。

 ある県庁所在地の都市(県都)と周辺町村の合併問題が浮上したところで、法定協議会の設置をめぐる住民投票で、県都との合併を相次いで拒否した(法定協議会の設置に反対が多数を占めた)地域があります。そこでは、たとえば水道料金は県都のほうが安かったのですが、町民のなかでは、「吸収合併で、町の独自性がなくなる」、「県都はこれまで開発型の借金体質で、合併したらそのツケがまわってくる」などの不安が多数を占めた結果でした。

 合併は各地ですすんでいますが、どこでも「できればこのままでいい」、「いまの町や村でやっていけるなら残したい」という思いが強いことが共通しています。それにたいして、「財政的にやっていけなくなる」、「いまなら特例債で仕事ができる」といって、「合併もしかたない、やむをえない」という空気をつくりだしている、というのが現在の特徴ではないでしょうか。

 法定協議会がつくられ、住民投票も決まったある自治体では、「いままでのまちづくりを見つめ直そう」というとりくみが始まっています。各地の市町村では、「その町ならでは」のまちづくりをすすめてきているところが少なくありません。住民参加で、さまざまな事業がおこなわれたり、施設が整備されたりしています。しかも、住民にとっては、それが「いつのまにか当たり前」になっていて、ありがたみを感じていない場合が意外と多いのです。

 みずからのまちづくりを見つめ直して、「再発見」した町に誇りがもてるなら、「財政的にもやっていけるなら、合併しないで、まちづくりをすすめよう」という住民が多数になるのではないでしょうか。


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