市町村合併、地方財政「改革」の焦点は?  


Q25 地方交付税は、簡単に減らせるのですか。

A 地方交付税の削減は簡単にはできません。

 そもそも地方交付税は、全国どこの自治体も、独立性をもって標準的な行政サービスを提供できるように国が財源保障することを目的にした制度です。

 仕組みそのものも、地方交付税法だけでなく、地方財政法をはじめ、社会保障・福祉、教育、道路、運輸、港湾などなど、およそ住民のくらしに結びついた各分野の法律にも支えられています。

 たとえば、義務教育の教員給与費の国の負担額は必要額の二分の一です。二分の一は都道府県の負担ですが、この分は、地方交付税の対象(基準財政需要額に算入といいます)になっています。生活保護費も国庫負担金は七割ですが、残りの三割の額は交付税の対象です。東京都や全国に百ほどある普通交付税の交付を受けていない自治体は、こうした交付税対象の分を自らの税収などで賄っています。しかし、東京都以外の道府県とほとんどの市町村では、交付税として受け取り、必要なサービスの財源としているのです。

 地方交付税(普通交付税)は、こうして各分野の法令・制度にもとづいて積み上げられた必要経費の総額(基準財政需要額)から、税収などの収入(基準財政収入額)を差し引いた額として交付されるものです。

 全国的に必要なサービスの水準を、国の都合だけで、そんなに簡単に引き下げることはできません。一方、いまの不況で地方税収が増える見通しはないわけですから、交付税を大幅に減らすことは簡単にはできません。

 実際、政府が地方交付税の削減をめざしても、一昨年よりも昨年、昨年よりも今年と、全国合計では増えつづけているのです(「地方交付税」とその振替制度である「臨時財政対策債」の合計)。

 そのなかで、減らしやすく、改善するのが当然の分野は、公共事業関係費の交付税です。今年度の地方交付税の算定結果をみても、減らしたのはこの分野です。公共事業なら「三年間の計画」を「六年間の計画」にすれば、一年あたりの費用は半額ですみます。しかし、教員給与や生活保護費を半額にはできないし、「財政が弱い自治体は払わなくていい」ということにもなりません。

 もちろん、政府は、「財源保障機能を縮小する」、「歳出を削減して、総額を抑制する」、「段階補正を見直す」などを方針にしているのですから、楽観はできません。あれこれと理由をつけて、削減しようとするでしょう。

 この間、地方交付税の拡充、財源保障機能と財政調整機能の堅持をもとめた地方議会の意見書の採択が、全国的におこなわれてきました。これからも、政府の動向を監視し、必要な世論づくりのたたかいをすすめることがもとめられています。

 同時に、交付税の基本的な制度はかなり堅固であるのも事実です。「地方交付税が減らされるから、もうやっていけない。合併しかない」などと合併に走ったり、あおったりすることは、なんの根拠もないことです。自治体がそうした宣伝をすることはあらためるよう、はたらきかけることも大切です。


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