市町村合併、地方財政「改革」の焦点は?  


Q24 地方への税源移譲がされても、財政力の弱い自治体は、それほど税収が増えるとは思えませんが。

A そのとおりです。税源移譲だけでは、地方間の税収格差が広がるだけです。地方交付税の拡充などが大事です。

 国から地方への税源移譲そのものは当然の要求です。しかし、自治体関係者の要求は、税源移譲が自己目的ではなく、自治体が自主的に使える財源を増やし、健全な財政運営ができるようにしたいということでしょう。ですから、税源移譲によって、逆に、自治体の収入が減り財政運営に支障をきたすのであれば、本来の趣旨に反することになります。

 全国町村会の基本的立場も、地方への税源移譲を評価しつつも、「人口が少なく、また、課税客体の乏しい町村の自主的・自立的な行財政運営に支障が生じないよう、移譲されることとなる税源の配分や地方交付税の確保等について十分配慮いただくことが必要である」というものです。当然の立場です。

 もともと、税源移譲だけが「一人歩き」することは制度的に無理なことです。現行の自治体財政のしくみでは、地方税と地方交付税、国・県の補助負担金(支出金)が、基本的な収入です。補助負担金は、基本的に標準的な行政水準(ナショナルミニマムなど)を保障する国・県の責任を財源的にもはたすものです。自治体はこれと地方税収で財政運営をおこないます。地方税収が十分でなく標準的な行政サービスを賄うことができない自治体には、国の基準で地方交付税が交付される、というしくみです。大きな構図としては、地方税、補助負担金、地方交付税が相互に補完しあっているといってよいでしょう。

 その意味では、自治体側から大きな改革を求める場合も、総合的な見地がもとめられることになります。

 いま、政府がおこなうとしている税源移譲は、まず、国庫補助負担金を廃止・縮減する、それでも仕事が継続する分は税源移譲するというものです。これが実施されるとどうなるでしょうか。来年度についても、いま国が検討中で結論が出ていないので、大枠で考えられる範囲で見てみましょう。

 たとえば、秋田県(人口一一九万人。全人口に占める比重は〇・九四%)を例にとってみると、国庫補助負担金(国庫支出金。平成十三年度決算)は、県・市町村の合計では二〇八二億円あまりで、全国合計約一四兆円の一・四三%強です。しかし、税収をみると、基幹税の中心である所得税(源泉所得税と申告納税額の合計)は八六四億円で、全国合計約一九兆円の〇・四四%を占めるに過ぎません。地方消費税は清算後の収入額で秋田県は二二五億円で、全国合計約二兆五千億円の〇・九一%です。このように秋田県の財政の実態は、補助負担金は人口比よりもかなり厚く手当てされているが、所得税も地方消費税も人口比よりも下回っていることがわかります。

 もし、二〇八二億円あまりの補助負担金がすべて廃止され、その「八割を税源移譲」とするとどうなるでしょうか。税源移譲は一六六五億円あまりにならなくてはいけません。しかし秋田県の場合、所得税は八六四億円ですから、その全額を移譲されても、まだ八〇〇億円ほど不足します。これを地方消費税の増額で補うとすると、現在(一%分)が二二五億円ですから、三〜四%分が必要です。いまの消費税率五%をほぼまるまる地方消費税に変えないと、帳尻があわないことになります。

 国が、所得税と消費税の全額を地方に移譲することは絶対にありません。税源の少ない自治体にとっては、補助負担金の廃止・縮減を税源移譲でまかなうことは、不可能といっていいものです。

 もう一つ、大きな問題が横たわっています。地方税収が増えると、それに見合って地方交付税は減額されます。そうしないためには、補助負担金の削減分について、交付税の措置の対象にすることが必要です。制度的には「基準財政需要額に上積みして算入する」ことになります。おそらく当面は、この措置をとるでしょう。しかし、それはとりもなおさず「交付税の財源保障機能を拡充する」ことであり、国の方針=「財源保障機能を縮小していく」に正面からぶつかるものとなります。けっして楽観できません。

 「地方への税源移譲」の課題は、総合的に、あくまで農山村地域を広くかかえる県や市町村にとっても財源が豊かになることをめざして、とりくむことが大切です。


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