市町村合併、地方財政「改革」の焦点は?  


Q23 補助金制度の見直しは必要だと思いますが。

A もちろん、改革はすべきですが、基本的制度はまもらなくてはなりません。

 「補助金」というと、国が地方自治体の自由をしばる「ひもつき行政」や、「省庁の縦割り行政の弊害・省益」の象徴のようにいわれています。実際、「省益」にからんで「政財官の癒着構造」ができていたり、汚職の温床になったりしています。現行の補助金の制度には、そうした改善すべき点が少なくありません。とくに公共事業の分野では、自治体に公共事業を押しつけるしくみができあがっています。国民や世論も批判し、地方自治体からの改善要望も寄せられてきました。

 しかし、だからといって、補助金制度そのものを否定し、大幅に縮めたり、なくしてしまっていいということにはなりません。

 一口に「国庫補助金」といいますが、大きくは「負担金」と「補助金」の区別があります。「負担金」は、国が法令で支出が義務づけられているもので、「補助金」は、国の制度や裁量で支出しているものです。実は、「負担金」の方がはるかに多いのです。今年度の一般会計でみると、「負担金」が一五兆八〇〇億円で八六・四%を占め、「補助金」は二兆二〇〇〇億円で一二・六%です。

 しかも、問題は、「補助負担金」の中身です。今年度は、国庫補助負担金(自治体向け。一般会計)の合計が一七兆四五〇〇億円です。このうち、社会保障関係費が一〇兆六九〇〇億円で六一・二%、教育関係費が三兆一五〇〇億円で一八・一%、公共事業関係費が二兆八九〇〇億円で一六・六%です。福祉と教育の補助負担金が、七九・三%、約八割をしめているのです。

 額の大きい順に主なものをみても、義務教育費、老人医療給付費、療養給付費(健康保険)、生活保護費、介護給付費、老人保健医療費拠出金、下水道事業費補助、児童保護費などとなっています。国民にとっては、死活にかかわるものも少なくありません。

 いま小泉内閣が、「整理合理化方針」で廃止・縮減の「重点項目」にあげているのも、中心は福祉と教育です。幼稚園と保育所の費用、医療・介護の保険給付、生活保護費、義務教育費、地方道路整備費、農業委員会・改良普及事業費などです。

 戦後の半世紀かけて、たたかいと世論の力で確立・拡充させてきた成果、制度も少なくありません。「補助金制度の改革」の名のもとに実際におこなわれようとしているのは、福祉や教育の制度の根本的な改悪です。

 もちろん、政府も、補助負担金をすべて廃止できないことは十分承知しているので、「補助負担制度」をなくしても引きつづき自治体の仕事として継続しなければならないものは税源移譲する、としています。しかし、それにも「原則は八割分の移譲」、「義務的なものは一〇割。ただし徹底的な効率化をしたうえで」という条件がついています。塩川財務大臣は、「徹底的な効率化」で八割くらいにできるといっています。税源移譲では、税源の少ない県や市町村にはたして財源が補てんされるのか、大きな問題が残ります。いずれにせよ、自治体財政の圧迫と国民犠牲を強いることになりかねません。


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