市町村合併、地方財政「改革」の焦点は?  


Q19 「合併特例法は延長しない」といいますが、どうなるのですか。

A 「合併の障害を除去する特例を中心に定める」新法をつくる方針です。

 六月の総務省の通知「市町村合併の更なる推進のための今後の取組(指針)」では、地方制度調査会の「中間報告」をふまえて、今後の「法的対応」について、(1)現行法の特例的な経過措置として、平成十七年三月三十一日までに「合併を終えた場合」に加えて、「合併関係市町村が議会の議決を経て都道府県知事への申請を行ったもの」も特例法を適用する、(2)「市町村合併推進のための新たな法律の制定」、を掲げています。

 新法については、「市町村合併に関する障害を除去するための特例を中心に定め、現行法のような財政支援措置はとらないものとする」としています。これは、どういう意味でしょうか。

 現行法も、もともと一九六五年に制定された当時は、「(合併の)実現を円滑ならしめるため」(政府提案理由説明)のものでした。政府サイドは、「合併をめぐる障害を除去しようとする法律である」(『市町村合併ハンドブック』)と説明してきました。

 要するに、政府の新法づくりの考え方の基本は、財政の特例措置に関する限りは、一九六五年当時の内容、あるいはそれと同程度の内容にもどす、ということでしょう。

 では六五年当時の特例は、というと、議員の在任期間と定数、協議会設置と新市町村建設計画の作成、それにもとづく建設の支援措置などであり、財政的な特例の中心は「地方交付税の算定の特例」です。合併後五年間は、合併しなった場合の交付税の合算額を下回らないようにする、としました。

 それが、政府が合併支援から推進、さらに事実上のおしつけに転ずるに及んで、改正を重ね、一九九五年には、交付税の算定特例の五年間に加えて、その後の五年間に特例増加分を段階的に削減することや、地方債の「特別の配慮」が加わりました。一九九九年には地方交付税の算定特例期間を五年から一〇年に延ばし、「合併特例債制度」をつくり、各種の交付税の上乗せ措置も加えました。

 これが現行法の財政支援措置です。ですから総務省の考えているのは、財政特例をまったくなくすということではないのです。もし、地方交付税の算定の特例をまったく廃止してしまったら、合併したとたんに、地方交付税は大幅に減ってしまい、職員の何分の一かは退職を迫られることになるでしょう。それを避けることが算定特例の第一の目的ですから。この制度までなくすことになれば、市町村に「もう合併しなくてよい」といっているのと同じことになります。

 ですから、廃止される「財政支援措置」は、合併特例債とあれこれの交付税措置ということになります。過疎の地域であれば、合併特例債より有利な条件の過疎債があります。過疎債が使えない地域でも建設事業をより計画的にすすめればすむことです。

 つまり、「合併するなら今しかない」ということはないのです。現行法の期限後でも、市町村合併には、それなりの支援=「障害の除去」の措置がつくられるのはまちがいないのですから。

 もちろん留意すべきことはあります。新法は、「地方制度調査会の議論を踏まえて行う」としており、強制合併につながる内容が持ち込まれる危険があることです。これから大きなたたかいがもとめられるでしょう。


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