市町村合併、地方財政「改革」の焦点は?  


Q1 町の資料で「ことしも地方交付税が大幅に減った」と書いていますが、本当ですか。

A 事実とはいえません。臨時財政対策債を加えれば、同程度か、増えている市町村が多くなっています。

 合併推進の行政当局がつくる資料には「財政的にやっていけなくなる」論の例証として、そうした宣伝、議論が横行しています。「地方交付税」の名目の額だけで言えば、たしかにそのとおりでしょう。

 しかし、地方交付税の額が名目で減っている最大の理由は、三年前の国の制度改正で、地方交付税の振替え制度として「臨時財政対策債」が導入されたことによるものです。

 この「臨時財政対策債」は、かたちは各自治体が発行する赤字地方債ですが、その返済は毎年、地方交付税で措置すると法律で決まっているものです。自治体にとっては、手続きは増えましたが、財政運営上は、地方交付税とまったく同じものです。したがって、財政状況を住民に説明する場合に、地方交付税をとりあげるなら、当然に名目上の「地方交付税」と「臨時財政対策債」の合計額でしめすことが求められます。

 七月二十五日に総務省が各自治体に、今年の「普通交付税の算定結果」をしめしました。そのなかで、普通交付税総額は、一六兆九八五五億円で、昨年度と比べて一兆三八六七億円の減(△七・五%)となっていますが、臨時財政対策債への振替え額が五兆二〇二三億円で昨年の一・八六倍に増え、合計では二二兆一八七八億円になり、昨年度(二一兆一六六〇億円)より一兆円余り増えています。

 たとえば、兵庫県の一覧表によれば、「地方交付税」の名目だけでは八十八市町のうち七十三市町が減ですが、臨時財政対策債との合計では減は十八町だけで、減っているといっても、そのほとんどが数百万円から二千万円程度です(資料参照)。

 総務省も「算定結果の特徴」の第一に、臨時財政対策債の大幅増による普通交付税の減をあげて、「普通交付税と臨時財政対策債を合わせた額は前年度以上の額となっている」と説明しています。それなのに、「一億も二億も減った」などというのは、臨時財政対策債の仕組みの無理解か誤解です。もし、仕組みをよく知っているのに、そのような宣伝をしているなら、「財政的にきびしいから合併するしかない」という世論づくりのためのごまかし、といわれてもしかたありません。

 もちろん、交付税は自治体の施策の局面(大きな事業が始まったり、終わったり)や、経済的社会的条件(大きな工場や事務所が移転して税収が増減する、など)によっても、年度ごとに変わりますから、大幅に減った町村もあるでしょう。しかし、その理由は行政自らがいちばんよく承知しているはずです。


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