日本共産党

2004年6月14日 参議院 本会議 日本共産党 富樫練三議員

有事関連法案 反対討論 大要

 私は、日本共産党を代表して、有事関連法案に反対の討論をおこないます。

 有事関連法案は、憲法を真っ向から否定し、アメリカの戦争に日本が官民あげて参戦するためのものであります。日本をアメリカと一緒に「戦争のできる国」にしようとする本法案は、戦争はしない、戦力は持たない、交戦権は認めないという憲法九条に違反することは明らかであり、断固反対であります。

 憲法と日本の進路にかかわる重要な法案を、中央・地方公聴会もおこなわず、委員会審議三一時間というきわめて短時間で質疑を打ち切り、採決を強行することは、議会制民主主義を自ら否定するものであり、断じて容認できません。

 政府は、有事関連法案は「日本が攻められたときの備え」だと説明してきました。しかし、法案は、日本が攻撃を受けていない段階=「武力攻撃予測事態」から米軍支援を規定しているのであります。アメリカが、先制攻撃戦略に基づき、我が国周辺地域において武力の行使を行うとき、政府が「予測事態」と認定し、米軍に対する広範な支援を行うことが可能になるのであります。

 重大なことは、日本が支援する米軍の行動に制約を加える仕組みが一切ないことであります。政府自身が、「核兵器の使用」や「敵地攻撃」であっても、米軍の行動自体を規律するものではないと答弁したのであります。

 しかも、米軍支援の内容は、きわめて包括的かつ無限定なものであります。

 自衛隊は、「予測事態」から「憲法上検討を要する」としてきた弾薬の提供を行うことが可能になり、米軍による日本全土の空港・港湾の優先使用が可能になるのであります。

 武力攻撃「予測」事態の際に、アメリカ本国などからわが国に結集する米軍部隊が公海上で攻撃されれば、日本が攻撃されたものと見なして、アメリカの艦隊を自衛隊が防衛することも可能と答弁したことは、重大です。このような米軍支援を行えば、その結果として日本に対する攻撃、すなわち日本有事を呼び込むことになるのは明らかであります。

 さらに、この法案は、非核三原則や地方自治体の自治権をも乱暴に踏み破るものです。例えば、神戸市は、一九七五年以来、市議会の決議に基づいて、核兵器を積載していないという非核証明書を提出しない艦船は一切入港させない方針貫いています。しかし、政府は、有事関連法案の一つである「特定公共施設利用法案」にもとづいて、総理大臣の指揮のもとで国土交通大臣が港湾管理者に命令し、アメリカの艦船を入港させると答弁しました。非核三原則最も忠実に守っている神戸市の権限を取り上げてまで、米軍に港を提供するなど絶対に許されません。

 ACSA改定案は、日米間の軍事兵站支援を、「武力攻撃事態」「予測事態」に広げるだけでなく、「国際の平和・安全への寄与」にまで拡大し、あらゆる事態で日米軍事協力をすすめようとするものであります。

 このように、有事関連法案は、先制攻撃を仕掛けるアメリカと共同して、日本が軍事行動を行い、まさに「戦争をする国」とするものであって、断じて容認できません。

 自民・公明両党と民主党による衆議院段階での修正は、こうした有事法制の枠組みを「武力攻撃事態」から、「緊急対処事態」と称して重要施設や公共交通機関が破壊された場合にも拡大し、さらには、緊急事態基本法を制定し、大規模自然災害にまで広げようとしています。そもそも武力攻撃や戦争は、自然災害等と異なり、人間の力で発生そのものを防止することが可能であります。国と国との平和友好関係を構築し、武力紛争をおこさない外交努力こそ、平和にとって必要なことであります。

 改めて憲法九条と日本の進路について考えるべきであります。

 二度と戦争をしないという憲法に示された戦後日本の基本方向を、「戦争をする国」に大転換することは、絶対に許されないからであります。

 戦後日本の再建にあたって、国民は、平和な世界と日本を決意し、それを憲法の前文と九条に託しました。憲法前文は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」と明記し、九条で、戦争はしない、軍備はもたないと定め、戦争をしないことを国づくりの基本路線としたのであります。

 この決意の背景には、日本がアジア諸国を侵略し、二千万人もの尊い命を奪い、国内でも、三一〇万人もの犠牲者を出したこと、沖縄では、「鉄の暴風」と呼ばれる艦砲射撃と上陸部隊の攻撃で十一万人が犠牲となり、さらに、広島・長崎には原爆が投下されたこと、などがあります。

 一九四六年、憲法制定国会において当時の吉田総理は「戦争のない日本」を創造するとの決意を表明し、「日本国が列国に先立って、あるいは世界を率いて、平和愛好の平和的条約を現出せしむる、その魁になって、自ら戦争を放棄し、軍備を撤廃することに依って、世界の平和を事実ならしめる、その決意に基づいて政府はこの案を提出したわけであります」と強調しました。この発言には、国民全ての願いがこめられていたのであります。

 日本国憲法を制定するに至った経緯やこの憲法にこめられた「平和国家として歩む」という国民のあつい決意と願いに、いまあらためて心を致すべきであります。それこそが、憲法遵守義務を負う国会議員としての当然の責務ではありませんか。

 憲法九条は、現在の世界とアジアの平和にとってかけがえのない値打ちをもっており、有事関連法案の強行は、世界とアジアの平和を求める国際世論、世界の流れに逆行するものであります。

 昨年五月には、韓国の国会議員三十名が連名で「日本の憲法は大韓民国でも『平和憲法』と呼ばれていますが、有事法制は平和憲法の精神に真っ向からはずれる」と警告しています。

 アジアの一員である日本が、アメリカのイラク戦争を支持し、占領軍の一翼を担っていることに、アジアの人々は、不安と警戒の目をそそいでいます。加えて「周辺事態法」や「武力攻撃事態法」に続く今回の「有事関連諸法案」の強行は、アジア諸国民との平和・友好関係に大きな傷をつけると同時に、アジアの人々の不安と警戒を一段と大きくするものです。

 アジアでは、アセアン地域フォーラムでの安全保障対話がすすみ、東南アジア諸国連合の呼びかけで中国、インドを含むアジア全域に広がる友好協力条約も結ばれました。朝鮮問題でも、北東アジアの平和と安定をめざす六カ国協議のもとで、平和への流れが広がりつつあります。

 憲法九条をもつ日本がやるべきは、有事法制の具体化ではありません。憲法九条にもとづく平和外交こそ、アジアの平和と友好への貢献であります。

 最後に、日本の進むべき道は、日本がアジアの一員として、この地域の平和に貢献する自主外交をすすめることであります。そのために、日米安保にしばられたアメリカいいなりの外交姿勢を根本的にあらためることです。

 小泉内閣は、この間、有事法制づくりを推進する一方で、アメリカの大義なきイラク戦争を支持し、イラクに自衛隊を派兵し米軍の占領支配の一翼をになってきました。さらには、多国籍軍に参加することは憲法違反という従来の政府見解をもふみにじり、国会にも国民にも説明せず、自衛隊の多国籍軍参加をブッシュ米大統領に約束してきたのであります。対米約束を最優先し、対米追随外交をすすめる小泉内閣に、日本の平和と安全、日本の進路を託すわけにはいかないのであります。

 以上、日本共産党は、憲法違反の有事関連法案の廃案を断固として要求し、討論をおわります。


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