日本共産党

イラク派兵法案 反対討論

 2003年7月26日 参議院 本会議 日本共産党 小泉親司議員

 私は、日本共産党を代表して、イラク特別措置法案に対する反対の討論を行います。

 まず、私は、戦後初めて自衛隊の地上部隊を戦地イラクに派兵する究極の違憲法案が、わずか三十数時間という極めて不十分な審議時間の下で、自民、公明、保守の与党三党によって強行されたことに満身の怒りをもって糾弾するものであります。

 反対の理由の第一は、戦闘地域と非戦闘地域の区分ができるという虚構の下で、自衛隊を戦地に派遣する危険極まりない法案だからであります。

 参議院での審議のさなかにもイラクの現地の情勢は悪化の様相を呈しており、正に泥沼化しているのであります。ロケット弾や仕掛け爆弾、自爆テロなどによる米軍兵士の犠牲も増大の一途をたどり、イラク戦争による米軍の死亡者はついに湾岸戦争を上回る百五十五人に上っております。七月十六日、アビザイド米中央軍司令官が、米軍はイラク全土で典型的なゲリラ戦闘を実施している、それは戦争であると述べていることでもはっきりと示されています。

 これら一連の事態は、法案で言う戦闘地域、非戦闘地域が全くの虚構であり、たとえ非戦闘地域でも決して安全とは言えない状況に至っていることは明白であります。それにもかかわらず、政府は非戦闘地域を設定し、その非戦闘地域に自衛隊を派兵するのだから大丈夫だと、壊れたテープレコーダーのように繰り返すだけであります。

 こうした中で、元防衛庁教育訓練局長であった小池清彦加茂市長は、全国会議員に書簡を送り、イラク特措法の考え方は詭弁であり、強弁であります、イラク特措法が成立して、私が激励した人たち、自衛隊員が招かざる客としてイラクに派遣されて、万一命を落とすようなことになったら、私は今度は自衛隊入隊者激励会において何と申し上げたらよいのでしょうか、私は言葉を知りませんと厳しく指摘しております。このようなことを現実のものにしてはなりません。

 政府が強調する国連安保理決議でさえも、軍隊の派遣を要請していないことは総理自身が認めていることであります。このような虚構の下に無理やり自衛隊をイラクに派兵することは絶対に認められないのであります。

 理由の第二は、この法案が、政府が言うような自衛隊によるイラクの復興支援ではなく、米英占領軍を支援する以外の何物でもない、憲法に違反する交戦権行使の法案であるからであります。

 イラク特措法案は米英占領軍の治安維持活動への自衛隊支援を定めています。これは国連決議でも専ら占領軍の任務とされているものであります。このような支援活動が国際的にもイラク国民からも占領軍と一体の活動と見られることは明白であります。

 米英占領軍は、砂漠のサソリ作戦やガラガラヘビ作戦など、フセイン軍やバース党の残党を掃討する攻勢的な軍事作戦を展開しています。イラク国民の民家を急襲し、強圧的な捜索と攻撃、パトロールと、武装を解除させるための作戦であります。この作戦によって米軍がイラク国民と敵対関係に陥っていることも報告されています。政府はこのような作戦も支援の対象としており、これらが占領軍と一体の活動と見られることは当然ではありませんか。

 しかも、これらはフセイン前政権の残存勢力の掃討ということにとどまりません。イラクでは、今、仕事をよこせなどの住民のデモ、住民の抵抗闘争まで起きています。米軍はこのデモに対して発砲、鎮圧するという暴挙まで行っています。

 ところが、石破防衛庁長官は、イラクの普通の国民を弾圧する米軍の軍事活動を安全、安定回復の活動とみなすこともあることを明らかにしています。川口外務大臣に至っては、占領当局の同意を得てイラクに入るのだから法的にはイラク国民の抵抗は合法的ではないと答弁して、イラク国民の抵抗に対して自衛隊が武器を使用することもあり得るとまで述べているのであります。小泉総理もこのことを追認いたしました。

 自衛隊の派兵が米英占領軍と一体となってイラク国民の抵抗を抑圧し、場合によれば武器を使用するというのは、イラク国民に銃口を向けるものであり、断じて容認ができないものであります。

 第三は、イラク特措法の前提となっている米英のイラク戦争の正当性は今や根本から崩れているのであります。

 そもそも、米英によるイラク戦争は国連憲章に違反した先制攻撃戦争であり、国連の安全保障体制を侵害するものであり、断じて許されません。米英がイラクに対する武力行使に当たって最大の口実にしたのが大量破壊兵器の問題でありました。ところが、この最大の口実であった大量破壊兵器はいまだに発見されておらず、アメリカでもイギリスでも戦争の正当性が大問題になっています。

 米英のイラク戦争をいち早く支持した小泉総理は、イラクが大量破壊兵器を保有していると断定しておきながら、いまだにその誤りを認めておりません。それどころか、フセイン大統領が見付からないからといってフセイン大統領がいなかったと言えるのかと何遍も開き直りました。こんな詭弁でイラク戦争を正当化する法案を強行するなど、絶対に許されないのであります。

 今、アメリカでは、政府による情報操作が暴露され、戦争の口実の一つとされたイラクがアフリカから核燃料を輸入したという情報がうそだったことが公式に確認されたのであります。ブッシュ大統領は、とうとうイラクが大量破壊兵器を保有していたとは言えなくなって、ラジオ演説の中で、大量破壊兵器の計画があったと言い換えているのであります。

 イラク戦争が何の大義もないことは明白であります。イラク戦争が違法な戦争であることが明白となった今、そして戦争の大義が崩壊した以上、イラク特措法案は廃案にすべきであります。

 このイラク特措法案は、参議院が一九五四年六月二日に採択した自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議をじゅうりんするものであります。この決議に照らせば、現に戦闘が多発しているイラクに自衛隊を派遣することも、米英の軍事占領を支援することも、イラク国民に銃口を向ける米軍を支援し、自衛隊がイラク国民から反発と抵抗の的にされる状況をつくり出すことは許されないことは明白であります。しかも、総理が自衛隊の海外派兵恒久法の検討をするなどというのは言語道断であります。

 アメリカの不当、不法な戦争で傷付けられた、破壊されたイラクの国民と国土の復旧・復興のために必要なのは、自衛隊という軍隊の派兵ではありません。イラク国民が求めている食糧、水、医薬品、学校用具、上下水道や発電施設の修理などの復興支援は国連中心で、憲法の平和原則に基づく非軍事的手段で積極的に進めるべきだということを強調するものであります。

 以上述べたように、本法案はどこから見ても許されないものであります。政府の詭弁と虚構が明らかになるにつれ、国民の反対の声が高まり、どの新聞の世論調査でも反対の声が大きく広がっております。こうした国民の多数の声に背いて法案成立を強行することは、我が国議会政治に重大な汚点を残すものであり、断じて許されないものであります。

 たとえイラクの特措法案が与党三党の暴挙によって成立したとしても、闘いが終わったわけではありません。我が党は自衛隊のイラク派兵の実施を許さないために一層奮闘することを表明して、反対討論を終わります。(拍手)


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