日本共産党

福田官房庁長官 問責決議案 賛成討論

 2003年7月25日 参議院 本会議 日本共産党 吉川春子議員

 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました福田康夫内閣官房長官問責決議案に対する賛成討論を行います。

 新聞の全国世論調査では、イラクへの自衛隊派遣に反対が五五%に上り、賛成の三三%を大きく上回っています。私の下へも、自衛隊イラク派遣に反対する、あるいは懸念する声のメール、ファクスが続々と寄せられています。国民の大多数が反対し、野党が強く反対しているのにもかかわらず、イラク特別措置法案を強引に成立させようとしている法案担当大臣福田内閣官房長官は断じて許すことができません。

 元防衛庁教育訓練局長の小池清彦新潟県加茂市長は、イラク特別措置法案を廃案とすることを求める要望書で、次のように厳しく批判しています。イラクは全土において前線も後方もありません。全土がいまだ戦場なのです。このような地域へ自衛隊を派遣することは明確な海外派兵であり、明らかに憲法九条に違反する行為であります。イラク特別措置法が定める海外派兵さえも憲法九条の下で許されるとするならば、憲法九条の下でできないことはほとんど何もないということになります。このような元防衛庁幹部の言葉を官房長官は何と聞くのですか。

 国際法、憲法、中東研究者六十三名による緊急アピールもまた、そもそも自衛隊は政府の見解によれば自衛のための最小限度の実力であるから違憲ではないとされてきたものである。その自衛隊が日本の自衛と関係のない占領下のイラクに派遣されることは、これまで政府が取ってきた政策が根本から転換され、自衛隊が外征軍となることを意味する。また小泉政権は、この法案を足掛かりに、自衛隊の海外派兵の恒久立法制定を公言している。これは二度と戦争をしないと憲法に掲げて世界に誓った恒久平和の立場を投げ捨てることにつながり、断じて許すことができないと訴えています。

 しかも、国連もイラクも、日本に対して自衛隊の派遣を求めておりません。自衛隊派兵はアメリカの要求によるものであることは明らかです。フランス、ロシア、中国の安保理常任理事国を始め、圧倒的多数の国連加盟国が派兵を拒否しています。安保理決定も米英の軍事占領は正当化しておらず、加盟国にイラク派兵など求めてはいないではありませんか。

 以下、具体的に理由を述べます。

 問責決議案に賛成する第一の理由は、イラクでは、国民の軍事占領への抵抗が強まるとともに、米兵への襲撃が激化し、死者は既に湾岸戦争時を突破し、事態は泥沼化しつつあることです。

 我が党の吉岡議員が、世界で、戦闘地域あるいは非戦闘地域というような分け方、そしてまた武器使用を武力行使と正当防衛に分けるやり方を行っている国があるかと質問したのに対して、官房長官は、これはほかの国にはないと答弁しました。小泉総理に至っては、安全な地域がどこなのか、自分に聞いても分かるはずがないと、無責任極まりない答弁を行っております。

 米英中央司令官がイラク全域でゲリラ戦と言明している状況にあるイラクへの自衛隊派兵は、憲法違反の武力行使となることは余りにも明瞭ではありませんか。イラクでは、米軍だけでなく、米軍を支援する者も攻撃されており、政府も、自衛隊員が殺される可能性があるかもしれないとして、応戦する可能性を認めているではありませんか。

 安全な地域など存在し得ないイラクに自衛隊員、すなわち日本の若者を送ることは、支持政党を超えて国民は絶対に許すはずがありません。官房長官の責任は重大です。

 第二は、小泉総理がイラク戦争支持の理由とした大量破壊兵器はいまだに発見されず、大量破壊兵器保有と断定した根拠を何一つ示すことができないではありませんか。小泉総理は、フセイン大統領が見付からないからといって大統領がいなかったことにはならないなどと、驚くべき詭弁を繰り返しています。福田官房長官は、もうイラク戦争を支持しちゃった、取り消すことはできないと、無責任な答弁に終始しています。総理が総理なら、官房長官も官房長官です。

 米英では、政府による情報操作疑惑が持ち上がり、政権が議会から追及を受ける事態に陥っています。米英による軍事占領への支援が不法かつ不当なものであることは明らかです。不法、不当な憲法違反、軍事占領支援法です。それを強引に成立させようとする福田官房長官の姿勢は断じて容認することはできません。

 第三は、政府は、イラク国民からの攻撃であろうとバース党残党からの攻撃であろうと、自衛隊は正当防衛、緊急避難を口実にすれば武器を使用して反撃し、相手を殺傷することもできるとしています。持参する武器にも制限規定はありません。しかも、法案は、武器の使用について、上官の命令に従って組織的に行うことを認めています。そうなれば、正に応戦であり、憲法違反の武力行使そのものではありませんか。

 憲法で戦争放棄、交戦権の否認を定めている日本こそ、泥沼の戦争に加担するのではなく、米英軍を速やかに撤退させ、国連中心の復興人道支援のために努力しなければならないのではないでしょうか。

 第四に、さらに、福田官房長官は、自衛隊の自由な海外派兵を可能とする恒久法の法制化について、作業は急いでやりたいと答弁し、そのために大綱を作成する考えを明らかにしています。これは小泉首相も将来の検討課題としてきたものです。政府として初めて法制化に向けた作業を急ぐとともに、具体的な手順にまで踏み込もうとしています。恒久法に地方自治体の職員や民間人の動員を盛り込むことまで明らかにし、日本がこれから国際社会で生きていくための筋道だと危険な答弁を繰り返すなど、その責任は極めて重大です。

 政府・与党は、日本が戦後初めて他国民を殺傷し、自衛隊員を犠牲にする危険をはらんだイラク派兵法をなぜ強行するのですか。米英がイラク攻撃の根拠にした情報が虚偽であることが明らかになり、戦争の大義のなさが一層明白になっているのに、なぜ日本が派兵して米軍の戦争に参加するのか、この国民の批判に対し、まともに答えようとしない福田官房長官の責任は極めて重大です。

 加えて、いわゆるレイプ擁護発言も官房長官の資質を疑わせるものです。

 六月二十六日、鹿児島市内の公開討論で、自民党の太田誠一議員が、強姦事件が話題になった際に、集団レイプする人はまだ元気があるから正常に近いんじゃないかと発言して問題になりました。この発言の翌日に、官房長官は、太田発言について問われて、先ほども引用されましたけれども、女性にも、いかにもしてくれっていうの、いるじゃない、挑発的な格好しているのが一杯いるでしょ、そういう格好をしている女性の方が悪いんだなどと発言したと報道されました。

 官房長官、あなたは男女共同参画担当大臣です。政府の男女共同参画基本計画には、女性に対する暴力の根絶について、女性に対する暴力は、女性に恐怖と不安を与え、女性の活動を束縛し、自信を失わせ、女性を従属的な状況に追い込むものである、女性に対する暴力は克服すべき重要課題であり、その根絶に向けて努力を続けなければならないと記されています。官房長官は、本来なら太田発言を厳しくたしなめなくてはならないのではありませんか。それを、レイプされる女性の方が悪いなどとは何事でしょうか。野党女性議員が十六名で官邸にこのことの真偽を確かめに行きましたが、会おうともされませんでした。

 官房長官、あなたは慰安婦担当大臣ですけれども、侵略戦争の反省に基づく謝罪と補償を行うように国連や被害者、その母国から繰り返し要求されてきましたが、耳をかそうとしません。侵略戦争に対しきちんと反省しない日本が今度は武器を持って戦争を終了しないイラクに自衛隊を派兵することは、憲法九条を踏みにじり、アジア諸国に限りない不安を与え、親日的であったイラク、中東と日本の関係を決定的に悪化させ、国益を損なうものでありませんか。

 防衛研究所所蔵の資料によれば、かつて十五年戦争の始まりとなった関東軍の謀略による満州事変、中国東北への侵略の開始の決定となった一九三一年九月二十二日の閣議決定は、全員、賛成も反対も表明せず、反対なしということを決定しました。この過ちを繰り返し、沈黙の協力を繰り返してはなりません。痛苦の体験をした歴史の教訓になぜ学ばないのですか。

 それでもなお数を頼んで、イラク派遣特別措置法を強行しようとする福田官房長官を到底信任できません。

 以上、申し述べて、問責決議の賛成討論を終わります。(拍手)


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