日本共産党

竹中大臣問責決議案 賛成討論

 2003年7月16日 参議院 本会議 日本共産党 大門実紀史議員

 私は、日本共産党を代表して、竹中大臣に対する問責決議案に賛成の討論を行います。

 竹中大臣、あなたが大臣になってから日本経済と国民の暮らしはひたすら悪くなりました。最大の責任はあなたを任命し経済のかじ取りを任せた小泉総理にあることは明白であります。しかし、大臣自身も、問責決議案など出される前に、もっと早く自らの誤りに気付き、自分でお辞めになるべきでした。

 問責決議案に賛成する理由はほかでもありません。あなたが日本経済をここまで悪くした当事者だからです。

 竹中大臣が掲げてきた構造改革論は、元々、理論的な誤りと幻想に満ちたものでした。大臣は、構造改革なくして景気回復なしと繰り返しながら、この二年間、不良債権の早期最終処理、企業のリストラの奨励、規制緩和等々、実際に構造改革を進めてきました。当初から、我が党は、需要が冷え込んでいるときにそんなことをやれば、ますます景気が悪くなり、不況の悪循環にはまり込むと再三にわたって指摘し、警告をしてきました。しかし、大臣は、全く耳を傾けようとされませんでした。その結果どうなったか。この二年間で失業者を四十万人も増やし、三万六千もの中小企業を倒産に追い込み、株価も一時は二年前の半値近くまで急落させました。

 また、竹中大臣は、不良債権を処理すれば、人、物、資金などの経済資源が新しい分野へ移動し、経済が活性化すると唱えてきました。しかし、資源の移動などどこにも起こらず、ただただ倒産と失業が増えただけです。銀行の貸出しも、大銀行だけで三十六兆円も減らしています。この二年間ではっきりしたのは、不良債権処理を急げば世の中にお金が回るということではなく、無理な処理を急ぐからかえってお金が回らなくなったということではありませんか。

 不良債権の新規発生も一向に止まらない。大臣はこの三月期に不良債権処理が進んだと言っておりますけれども、要管理債権を含む不良債権の残高は小泉内閣の発足時よりも依然二兆円も増えたままです。自分たちの内閣で不良債権を増やしておいて、それを幾らか減らしたからといって、何の自慢にもなりません。正に自作自演のマッチポンプ、イタチごっこをやっているだけにすぎないではありませんか。

 しかも、竹中大臣は、この二年間の経済の悪化に右往左往し、骨太方針第何弾だの、何とかプログラムだの、工程表だの、紙ばっかり出してきました。経済見通しもことごとく修正。その都度、責任をアメリカの経済やテロなど、人のせいにしてまいりました。

 当初、改革によって失業や倒産の痛みは出るが、二、三年の我慢と国民に説明してきたものを、勝手に四年の我慢に延長いたしました。さらに、国民の痛みに対しセーフティーネットを用意するという公約も、結局、絵にかいたもちでした。

 例えば、竹中大臣が胸を張って宣伝していた五百三十万人新規雇用創出プランはどうなったのか。このプランは、サービス業の雇用を今までの倍のスピードで増やそうというものでした。しかし、実績は、一年で百万人以上増やすところを、二年間の合計でたった九十万人しか増えておりません。目標の半分以下、過去の実績さえ下回っているではありませんか。

 有名なペティ・クラークの法則によれば、そもそもサービス業の雇用の伸びは国民の所得の伸びに比例すると言われています。家計部門の所得が増えればサービス消費のウエートが高まり、その需要の増加に応じて仕事も増えるからです。

 今のように、政府がリストラの音頭を取って雇用不安と低賃金を蔓延させ、四兆円の負担増を押し付け、家計を痛め付けているようでは、今までの倍のスピードでサービス消費が増えるわけがありません。

 また、幾ら規制緩和をやっても、不況で民間消費が低迷する下では、小さなパイの中で競争が激化し、かえって倒産、廃業が増加、失業が増え、低賃金化が進むだけです。こんなことは最初から分かり切った話ではありませんか。

 今や構造改革は理論的にも実践的にも破綻し、改革を進めれば進めるほど実体経済を破壊してしまうという自己矛盾に陥っていると言わなければなりません。しかも、大臣は、不良債権処理でさんざん不況と株価を悪化させ、銀行や企業の経営を追い込んでおきながら、今度はその対策と称して、なりふり構わず公的資金の大盤振る舞いを連発してまいりました。今やあなたの政策は破綻から暴走の段階に入ったと断ぜざるを得ません。

 その第一が、銀行に対する公的資金の投入です。現行の七十兆円の公的資金の投入枠は既に三十兆円以上が使われ、このうち、返ってこない公的資金、すなわち国民負担になった部分は十一兆円を超えています。この上、りそな銀行への約二兆円の公的資金注入に見られるように、竹中プランでわざわざ銀行を自己資本不足に追い込み、すかさず公的資金を注入する、こんなやり方では、この先幾ら公的資金が使われるか分かったものではありません。

 さらに、銀行保有株の買取機構、産業再生機構、生命保険契約者保護機構への公的資金の投入の仕組みもつくられました。小泉内閣が進めてきたのは、今回の生命保険の予定利率の引下げを含め、正に国民負担のオンパレードではありませんか。

 私は、財政金融委員会で、竹中大臣に、この間、国民の税金投入の仕組みが次々と出されてきている、もう感覚が麻痺しているのではないかとただしました。大臣は、安易に公的な負担を求めるということは政策の在り方として控えなければいけないと答えました。さらに、こんなことばかり続けていては、結局、大臣のよく言うマーケットの信頼も得られないのではないかと聞くと、大臣は、おっしゃるとおり政府の介入はモラルハザードを招く、自己責任の原則を確立することが社会の大原則であると答えました。言うこととやることがまるで違うではありませんか。

 元々、護送船団方式を批判し、すべてはマーケットに任せればうまくいくと言ってきたのが竹中大臣です。破綻から、それを繕うための政策の暴走に突き進む中で、あなたの自己矛盾も深まるばかりです。いつまでもこんなことを続けて一体何が解決するのでしょうか。

 自民党は、この十年間、景気対策といえば公共事業の積み増しばかりを行ってきました。しかし、結局、景気は良くなりませんでした。小泉総理になって、今度は竹中流の構造改革論に飛び付きました。しかし、景気はかえって悪くなりました。要するに、あなた方の繰り返しておられるのは、誤った需要対策の後に誤った供給対策を行っておられるだけです。

 残された道はただ一つ、我が党がかねてから提案してきたように、家計と中小企業を直接応援する、そういう経済運営への転換しかもはや景気回復の道はないと言わざるを得ません。竹中大臣の好きなアメリカでさえ、レーガン時代の構造改革で経済が疲弊した後、個人消費の活性化を牽引車として景気を回復したのです。アメリカに学ぶとすれば、正にこの点であります。

 以上、経済政策の根本的な転換と竹中大臣の辞任を求めて、問責決議案に対する私の賛成討論といたします。(拍手)


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