日本共産党

2004年12月21日(火)「しんぶん赤旗」

ムダにメス入れず、暮らしは削る

05年度 財務省原案


図

税収は4年ぶり増加

公債依存度、41%台に

一般会計(歳入)

 来年度の税収見積額は二○○四年度当初比5・4%増の四十四兆七十億円です。法人税、消費税収が堅調に推移し、当初予算ベースで四年ぶりの増収に転じます。この結果、一般会計の歳入全体に占める税収比率は53・5%と2・7ポイント改善します。一方、税収の不足分を補う国債の新規発行額は6・0%減の三十四兆三千九百億円と四年ぶりに減額、公債依存度は44・6%から41・8%に低下します。

 財務省は、○五年度見積額算定の土台となる○四年度の税収見込みを、四十四兆四百十億円に増額修正しました。○五年度は法人税などの自然増収が期待できるほか、所得課税の定率減税の縮小をはじめとした税制「改正」による増税分千七百億円を加え、実質的な税収を四十四兆七千億円規模とはじいています。

 ただ、○五年度は「三位一体改革」に伴って、国から地方へ配分される所得譲与税六千九百十億円を差し引くため、国の財源としては四十四兆円強に目減りする計算となります。国有財産の売却など税外収入は0・3%増の三兆七千八百五十九億円の予定です。


「自然増」を大幅圧縮

介護保険 施設利用者に居住費負担

一般会計(歳出)

社会保障

図

 社会保障関係費は前年度比五千八百十六億円(2・9%)増の二十兆三千七百八十六億円。高齢化によって上積みが必要になる「自然増」を大幅に圧縮しました。年金改悪法による厚生年金、国民年金の保険料引き上げに加え、介護保険の施設利用者からの「ホテルコスト」(居住費等)徴収、生活保護の老齢加算、母子加算の削減などが盛り込まれています。

 国民年金保険料は来年四月から月額二百八十円引き上げられ一万三千五百八十円に。今年十月に引き上げられた厚生年金保険料は来年九月も0・354ポイント(労使折半)引き上げられます。

 さらに、基礎年金国庫負担引き上げの「財源」として、老年者控除の廃止と公的年金等控除の縮小が来年一月から実施され、〇五年度は約千六百億円の負担増です。

 介護保険の「ホテルコスト」徴収は来年十月から実施予定で、給付費は千三百十億円減、国庫負担は四百二十億円減。

 生活保護費は七十歳以上の人に支給される老齢加算の削減が〇四年度に続き実施され、月額九千六百七十円(一級地基準額)が三千七百六十円へ約六千円削減。十八歳までの子を養育する母子家庭などを対象にした母子加算も年齢要件の引き下げで削減する計画です。

 医療では、国民健康保険の都道府県財政調整交付金導入にともない、国庫負担が五千四百四十九億円削減されます。

わずか1%減

「ミサイル防衛」は1198億円

軍事費

 軍事費(防衛関係費)は、今年度予算よりわずか1・0%減の四兆八千五百六十三億円(四百六十七億円減)。内閣官房予算に含まれる軍事偵察衛星(情報収集衛星)経費六百二十四億円を加えると、四兆九千百八十七億円です。

 「ミサイル防衛」は千百九十八億円(百三十億円増)。イージス艦発射新型ミサイル(SM3)発射試験費五十九億円を初めて盛り込みました。

 陸上自衛隊では、海外派兵のための教育訓練を行う「国際活動教育隊」の新設準備経費二十一億円。航空自衛隊では、四機目の空中給油機に二百四十八億円、航続距離六千五百キロに達する次期輸送機開発費に七百八十億円(部品を共用化するP3C哨戒機の後継機開発費も含む)を計上しました。

 沖縄の米軍基地をたらい回し・強化するSACO経費は二百六十三億円(三億円減)。米海兵隊普天間基地に代わる新基地を名護市沖に建設するためのボーリング調査や環境影響評価費は二十七億円。在日米軍駐留経費負担の日本側負担である「思いやり予算」は、二千三百七十八億円(六十三億円減)です。

16年ぶりに8千億円下回る

ODA

 ODA(政府開発援助)は七千八百六十二億円(今年度予算比3・8%減)で、六年連続の削減となり、十六年ぶりに八千億円を下回りました。

 内訳は、▽無償資金援助二千八十五億円(3・5%減)▽二国間技術協力三千八十七億円(1・0%減)▽国際機関への出資・拠出九百四十五億円(7・6%減)▽円借款千七百四十四億円(6・5%減)――。

 無償資金援助では、途上国の自治体やNGO(非政府組織)などに対する支援(草の根・人間の安全保障)も減額され、6・7%減の百四十億円。一方で、イラクなど「復興開発支援」は二百六十八億円と0・5%の増額となりました。

 円借款は減額になったものの、事業規模はほぼ現状を維持するとしています。

大規模事業を推進

関空二期など空港整備費増

公共事業

 公共事業関係費は今年度比3・6%減の七兆五千三百十億円。大企業・ゼネコン奉仕の大規模事業は重点的に進めます。

 大都市拠点空港整備は2・2%増の八百九十九億円。関西空港二期工事は〇七年の使用開始をめざし施設整備費二百億円を認めました。三大都市圏環状道路整備は13・9%増の千九百六十一億円。港湾整備も重点化し、すでに指定されている京浜、伊勢湾、阪神のスーパー中枢港湾に21%増の二百七十八億円をつけ、ターミナルの高規格化・大規模化を進めます。

 また、諫早湾干拓事業には事業費九十億円を計上し、国営川辺川土地改良事業は関連経費十億円を盛り込みました。

 整備新幹線は北海道など三区間の新規着工を決定し、国費ベースで新幹線整備予算は七百六億円計上しました。地方都市の「再生」を目的に今年度から導入した「まちづくり交付金」は45%増の千九百三十億円を確保しました。

 高潮対策などの市町村事業にかかわる採択基準を八千万円に、交差点改良や歩道拡幅などの交通安全施設等整備事業の採択基準を一億円に引き上げます。

電子産業の競争力強化

大企業

 「科学技術創造立国」を掲げ、大企業の研究開発などを支援します。人間支援型ロボット実用化プロジェクトには九億円を新規計上。開発困難な高度技術部品を開発するための次世代ロボット共通基盤開発プロジェクトには四億円をつけました。短期間に実用化、事業化に直結するプロジェクトを重点化して予算措置を実施しています。また、情報家電活用基盤整備事業に新規に十五億円を認めるなど、情報技術(IT)を活用した電気電子産業の競争力強化をはかります。

 東アジアでの経済連携を進めるため知的財産制度、認証制度、貿易管理制度など制度面での共通基盤構築を目指し百四十二億円計上しています。

さらに削減の1704億円

中小企業

 中小企業対策費は前年度当初予算よりさらに三十四億円(1・9%)少ない千七百四億円(経済産業省分千二百七十四億円、財務省分三百九十一億円、厚生労働省分三十九億円)です。

 一般会計に占める比率は0・21%、一般歳出比率は0・36%で、前年当初予算と同水準です。全事業所数の99%以上を占める中小企業への支援を総体として切り捨てる方針は鮮明です。

 「やる気と能力のある中小企業の前向きな自助努力を支援する施策に重点配分」するとした政府方針どおり、中小企業・ベンチャー挑戦支援事業を前年度より八億一千万円増やし四十二億円とするなどの一方、県の制度として実施する地域産業集積中小企業等活性化補助金(二億五千万円減)や、中小企業経営資源強化対策費補助金(九億九千万円減)など、「小規模企業等活性化補助金」を全体として十二億九千万円削減し、百六十八億円(経営支援課所轄分)としました。

 金融では、「担保や個人保証に過度に依存しない融資の推進」をうたい、中小企業向け貸付債権の証券化支援に前年度より二十五億円多い三十五億円を付けました。

一般財源は前年水準

地方公務員を1万人以上減

地方財政

 地方交付税が前年度比0・1%増の十六兆九千億円、地方交付税の振り替えである臨時財政対策債が一兆円近い減の三兆二千二百億円ですが、地方税で約一兆円の増収を見込んでいるため、自治体が自由に使える一般財源(地方税、地方交付税、臨時財政対策債)は0・1%増の五十三兆四千四百億円程度です。

 〇四年度は地方交付税、臨時財政債をあわせて二兆八千六百億円も削減しました。〇七年度から本格的な地方交付税の削減にのりだすという「三位一体改革」の政府・与党合意を受け、財務省は一層の削減を狙いましたが、〇五年度は地方税も含めた一般財源の水準でみると、総額で維持されることになります。個別には今年度より厳しくなる自治体も予想されます。

 また、警察官を三千五百人増員しつつ、地方公務員を一万人以上純減する方針です。

 「三位一体改革」の関係では、国民健康保険国庫負担の一部の都道府県への転嫁などで、所得譲与税を約六千九百億円増額。義務教育費国庫負担金は、暫定的に〇五年度削減分四千二百五十億円を税源移譲予定特例交付金に加算しています。

国立大授業料引上げ

私学への補助は減少

文教費

 文教・科学振興関係予算は、前年度比四千四百三十一億円(7・2%)減の五兆六千八百九十九億円が計上されました。うち文教関係費は、四千六百三十七億円(9・6%)減です。

 この大半は、「三位一体改革」にともない、政府・与党が義務教育費国庫負担金について「二〇〇五年度の暫定措置として四千二百五十億円程度を減額する」と合意したのを受けた補助金の削減分です。

 公立学校施設の耐震関連予算は千百七十三億円。文部科学省は概算要求で五百億円以上の増額を求めましたが、十八億円増にとどまっています。

 国立大学法人の運営費は、九十九億円(0・8%)減の一兆二千三百十七億円。大学の授業料標準額の一万五千円引き上げを打ち出しました。

 私立大学への経常費補助は六十六億円(2・0%)減の三千百九十七億円。私立高校以下への私学助成も五十一億円(4・9%)減の九百七十八億円となっています。

 日本学生支援機構の奨学金事業に千三百七十八億円を計上。貸与人数は百三万四千人となり、百万人を突破します。

南極観測船の建造に10億円

科学技術

 科学技術振興費は今年度比1・6%増の一兆三千四十七億円で、他分野に比べ大きな伸びを確保しています。ナノテクノロジー(超微細技術)やスーパーコンピューターの要素技術の研究など、キーテクノロジー研究開発の推進に四十九億円を充てています。今年度は設計費計上にとどまった南極観測船「しらせ」後継船の建造費として十億円を認めました。

民間主導の「青年対策」

長期失業者対策では34億円

雇 用

 重点課題に位置付けた若年者雇用対策は、前年度比20%増の三百六十億円を計上。ニートとよばれる通学も求職活動もしていない若年無業者や、フリーターの増大を反映しています。長期失業者対策では三十四億円をつけました。

 しかし内容をみると、規制「改革」推進の立場から、職業訓練・就職支援が民間委託されるなど、事業の担い手は民間事業者が中心です。民間需要を拡大し、民間主導ですすめることを基本姿勢としています。

 フリーターやニートに対する「働く意欲の涵養(かんよう)、向上」事業に六十億円、就職支援サービスを一カ所で受けられるようにしたワンストップサービスセンター事業に七十八億円つけています。

 若年者に対する「新たな市場・就業機会の創出」(四百十八億円)では、雇用拡大ではなく「ベンチャー企業の増加、民間企業との共同研究の促進」に期待を寄せています。

政府保証枠58兆円を確保

金 融

 「金融システムの安定確保」に関連した預金保険機構向けの政府保証枠は、金融庁の要求通り五十八兆一千五百億円が認められました。このうち、破たんしていない地域銀行(地銀、第二地銀)や信用金庫・信用組合が、合併などに際して公的資金注入を申請できる金融機能強化法(六月に成立)の保証枠は、二兆円です。

 インサイダー(内部者)取引などに対する課徴金制度の開始や消費者からの苦情窓口設置に伴う人員増は見送られ、復活折衝に焦点が移ります。

公庫融資は14万戸に減少

住 宅

 住宅関係は、二〇〇六年度中に廃止し独立行政法人化予定の住宅金融公庫融資戸数を、今年度の二十二万戸から十四万戸に減らします。

 一方、長期・固定で低金利の公庫融資の廃止をにらんで重点化するのが証券化支援業務です。今年度の八万戸から十万戸に増。民間金融機関の住宅ローンを公庫が買いとって証券化したり、民間金融機関が証券化したローンを公庫が保証します。

 焦げつきなど「信用リスク」を民間金融機関にかわり公庫が引き受ける金融機関支援策です。

零細農家切捨て「改革」加速狙う

農林水産

 農林水産関係予算(一般会計分)は、前年度当初比3・6%減(千九十六億円減)の二兆九千四百二十六億円。五年連続の減額で、三兆円を割り込みました。

 内訳では公共事業関係費は同4・3%減の一兆三千百二十四億円。農林水産関係予算全体の45%を占めます。食料安定供給関係費が同1・5%減の六千七百二十三億円。一般農政費は同4・1%減の九千五百七十九億円です。

 今年度は、コメの需給や価格安定から全面的に手を引き、家族経営の零細農家を切り捨てる「コメ政策改革」実施の二年目。来年三月に決定する「食料・農業・農村基本計画」の見直しもにらみ「改革」の加速化を狙います。そのため「担い手への施策の重点化」として、大規模経営に政府助成を集中する「強い農業づくり交付金」を四百七十億円計上しています。

 地球温暖化対策として、森林整備保全費に千八百十二億円。食の安全をめぐってBSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザ対策研究に四億円が盛り込まれました。


財投計画

24年ぶり20兆円割れ

地方と住宅関連を圧縮

図

 財務省は二十日、特殊法人や地方自治体に対して出融資する二○○五年度の財政投融資計画を発表しました。総額は○四年度当初計画比16・3%減の十七兆一千五百十八億円。五年連続の二ケタ減で、二十六年ぶりの低水準となりました。二十兆円割れは二十四年ぶりです。

 地方税収の回復で地方債発行の減額が見込まれるため、地方向けを32・3%減の五兆八千九百億円に抑えたことが全体の大幅減に寄与。既にピーク時の三分の一の規模に縮小している特殊法人向けも住宅関連をさらに圧縮し、4・5%減の十一兆二千六百十八億円となりました。

 財務省は○五年度の財投編成に当たり、全事業の総点検を実施。住宅関連は、住宅金融公庫と都市再生機構で事業計画の抜本見直しを行った結果、12・3%減少しました。

 財投繰り上げ償還は計約二兆六千億円を予定しています。○五年秋に民営化する道路関係四公団は直接融資を廃止し、規模を縮小させて政府保証に切り替えます。一方、有利子奨学金の貸し付けを拡大する日本学生支援機構などで財投規模が増加しました。

 財投機関が市場から自主調達する財投機関債の発行は、二十五機関で計五兆八千八百六億円(○四年度は四兆四千四十六億円)を見込んでいます。



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