日本共産党

2004年12月16日(木)「しんぶん赤旗」

大企業製造業が悪化

日銀短観、景況感

1年9カ月ぶり

中小含め景気減速に懸念


 日銀が十五日発表した十二月の全国企業短期経済観測調査(短観、企業の景況感調査)によると、大企業製造業の業況判断指数(DI)はプラス二二となって前回九月調査比で四ポイント低下し、一年九カ月(七期)ぶりに悪化しました。三カ月先の先行き景況感でも、大企業・中小企業、製造業・非製造業を問わず悪化懸念が強まり、景気の減速が裏付けられた格好です。


表:12月短観指標

 細田博之官房長官は十五日の会見で、「景気の全体の基調は強い」と強気の見方を崩していません。ただ、自民、公明両党が定率減税の縮小・廃止という国民負担増方針を決め、原油など素材原料価格の高止まりや円高傾向といった悪材料が消えておらず、先行きに明るさは見えません。

 大企業製造業の業況判断では、IT(情報技術)・デジタル関連の頭打ち感が顕著になる中、「景気回復」を主導してきたといわれてきた電気機械がプラス一一(前回比一七ポイント低下)、自動車が三七(同四ポイント低下)と軒なみ悪化し、指数全体の足を引っ張りました。こうした部門では中小企業も同様で、先行きの判断でも景気後退をうかがわせるDIの動きになっています。

 中小企業の業況判断だけをみると、製造業でプラス五(同変化なし)、非製造業でマイナス一四(同三ポイント上昇)と「横ばい」「改善」になっています。しかし、大企業とのDIの差は、製造業一七ポイント、非製造業二五ポイントと大きく開いており、政府が宣伝してきた「景気回復」が中小に及ばないまま減速局面に入っているといえそうです。



日銀短観の骨子

 一、業況判断DI、大企業製造業は七期ぶり悪化のプラス二二。二○○五年三月予想はプラス一五

 一、大企業非製造業はプラス一一と横ばい。三月予想はプラス一○

 一、中小企業製造業は横ばいのプラス五。非製造業は七期連続改善のマイナス一四

 一、大企業製造業の○四年度の設備投資計画は前年度比23.4%増と、八八年度以来の高水準。非製造業は同1・1%増

 一、国内製商品・サービス需給判断DI、大企業製造業は十二期ぶり悪化のマイナス一一

 一、仕入れ価格判断DI、大企業製造業はプラス三八と、八○年八月以来の高水準

 一、大企業製造業の下半期想定為替レートは一ドル=一○六円三一銭


 日銀短観 日銀の企業短期経済観測調査のこと。四半期ごとに実施する企業に対するアンケート調査です。現在や先行きの景況感、事業計画などを聞き、企業規模別、業種別に集計します。対象が約一万社で回収率も高く、調査表の配布から結果公表まで一カ月程度という速報性があることから、注目度の高い経済統計です。十二月調査の調査期間は十一月十日から十二月十四日まで。対象企業数は一万二百二十七社、回答率は97.8%でした。


解説

「回復」実感ないまま景気後退へ

 十二月の日銀短観で大企業製造業の業況判断指数(DI)が一年九カ月ぶりに悪化したのを受け、民間の経済専門家からは一様に、「典型的な景気後退のパターン」(UFJ総合研究所の嶋中雄二投資調査部長)、「景気のモメンタム(勢い)が鈍化したとの見方もできる」(第一生命経済研究所の嶌峰義清主席エコノミスト)という指摘が相次いでいます。

 これまでの「景気回復」の中でも、日本の企業数の99%、就業者数の約七割を占める中小企業や、税金や社会保険料の負担増によって冷え込んでいる家計は、「実感」から取り残されてきました。今回の短観でも「中小企業・非製造業の景況感の弱さが目立ち、依然として二極化の傾向がある」(嶋中氏)状況に変化はありません。原油高やドル安傾向も不安要因です。

 しかし政府は、「(外国の経済が引き続き好調で)わが国だけが急に悪い方向に向かう場面ではない」(細田博之官房長官)と、外需だのみの姿勢です。日本経済が引き続き「景気回復」の局面にあるとの見方にこだわっています。

 指標上でも、生活実感でも、経済のすそ野の広い範囲に景気回復が及ぶためには、適切な経済政策が不可欠です。ところが政府は、年金保険料率の引き上げなど国民に負担増を押し付ける一方で大企業優遇政策だけは残し、さらに定率減税の縮小・廃止を狙っています。

 景気の現実を直視するなら、国民負担増ばかりを考えている場合ではありません。

 北條伸矢記者



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