日本共産党

2004年12月6日(月)「しんぶん赤旗」

『週刊ヤングジャンプ』連載漫画

南京大虐殺の描写削除

「威嚇で修正、許されない」

言論界に広がる「出版・表現の自由守れ」


 雑誌『週刊ヤングジャンプ』の連載漫画が南京大虐殺などを描いたところ、右翼団体などから抗議を受け、発行元の集英社と作者の本宮ひろ志氏が該当部分を大量に削除・修正しました。この問題で、いま「表現・出版の自由を守れ」という声が広がっています。

 この漫画は「国が燃える」で、九月二十二日発売号の第八十八話などで南京大虐殺を描きました。「南京では、人類が絶対に忘れてはならない愚行があった」と書き、日本兵が競って中国人を刀で斬るシーン、逃げ惑う人たちに機銃掃射するシーンなどが登場します。

 南京大虐殺は、旧日本軍が一九三七年の南京入城後、多数の捕虜や敗残兵、一般市民を大量虐殺し、略奪などの蛮行をくりひろげた事件。国際的非難を浴び、日本兵自身の証言などもある歴史の事実です。

右翼が街宣車で

 ところが、九月二十九日に「集英社の不買運動を検討する会」が、「偽造の歴史を注入する有害図書」などとして集英社に抗議。つづいて「集英社問題を考える地方議員の会」という団体が、「大東亜戦争従軍の将兵の誇りを傷つけた」などと抗議しました。

 「不買運動を検討する会」の代表の西村修平氏は、右翼政治団体「維新政党新風」の役員として女性団体の講演会を妨害した威力業務妨害罪で有罪判決を受け、執行猶予中の人物。「地方議員の会」には東京都議会で「君が代」強制を推進した民主党の土屋敬之都議、自民党の古賀俊昭都議らが参加しています。

 集英社本社には十月初めの計三日間、右翼団体の街宣車がおしかけました。

 結局、同社は十一月十一日号で「再検証した結果、描写として適切ではないシーンがあった」として計二十一ページの削除・修正を発表。南京大虐殺の存在自体については変更しなかったものの、抗議の対象となった描写はほとんどページごと削除し、一時休載しました。

マスコミに圧力

 こうした事態に出版労連は十一月に発表した声明で、「威嚇的手段で中止・修正を求めたもので、言論・出版の場では容認できない」と指摘。「マスコミに圧力をかけ南京虐殺事件を扱うことをタブー視させる効果を意図したもので、表現・出版の自由を侵害した」と警告し、「平和憲法、教育基本法を守る運動」を呼びかけました。

 中小出版社九十一社でつくる出版流通対策協議会も一日、声明を発表。毅然(きぜん)とした態度でのぞむよう全出版人に訴えました。

 日本ジャーナリスト会議は今月十六日に開く出版部会で、「『国が燃える』問題の本質をつかみ、確信を持とう」と南京事件の研究者らを講師に招いた会合を計画しています。


否定しようのない歴史的事実

 子どもと教科書全国ネット21事務局長の俵義文さん 南京大虐殺は、日本軍の記録、日本将兵の日記・回想、無数の証言などに裏付けられた、否定しようのない歴史的事実であり、世界に確認されている。

 「国が燃える」に書かれた南京大虐殺の描写は全体として間違いなく、削除、修正の必要はなかった。たとえば、日本兵による百人斬り競争と見える漫画中の描写が、「裁判で係争中」を理由に削除されている。しかし、この裁判では百人斬り競争をした少尉らの部下の体験記などが新証拠として提出されている。“斬るための農民を連れてくるよう命じられた”と証言されていて、事実は明白になっている。ただ、本宮さんが南京でのことのように参考にした写真の一部に、南京のものだったかどうかの検証が必要なものがあり、抗議した勢力はそこにつけこんできたということだ。

 右派勢力は、南京虐殺は「まぼろし」であるとして、肯定するものはいっさい許さないとキバをむいてくる。彼らは、日本の戦争は正しかったとするために、国民が南京虐殺を認識するのをなんとしても妨げたい。それは、戦争をする国の国民をつくるため、「愛国心」を持たせるため、忠誠を尽くさせる国に見せかけたいのがねらいだ。こんな歴史の歪曲(わいきょく)は許してはいけない。歴史の事実をきちんと伝える運動を盛り上げなくてはいけない。



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