日本共産党

2004年12月5日(日)「しんぶん赤旗」

改憲勢力の動き どこまで

国民とズレ 党内にも矛盾

記者座談会


 自民党憲法調査会の「憲法改正草案大綱」とりまとめが、党内の混乱から年内見送りになりました。一方、民主党は今月中旬に開く党大会で来年三月までに「憲法提言」をまとめる方針を明記しています。自民、民主、公明の改憲勢力のこの間の動きをどうみるのか、担当記者で話し合いました。


  自民党の保岡興治・憲法調査会長は、十月に講演して、十二月中旬までに改憲草案の大綱を作り、来年結党五十年までの草案の完成を目指すという日程を明らかにしていた。十一月十七日に、大綱原案を出したのは、日程どおりだったはずだが、なぜ党内の反発を呼んだのだろう。

  一つは、まったく根回ししないまま、「読売」に出たことだ。しかも、中身が参院議員を公選制から推薦制に変えるとか、閣僚になるには参院議員をやめなければならないなど、参院軽視のものだった。

  党調査会メンバーの参院議員は、原案作成を知らされていず、「読売」に出たことを非常に驚いていた。「こんなものは認められない」「単なる保岡私案だ」と息巻いていたし、参院自民党内には「白紙に戻せ」との声が強く、保岡氏の解任を要求する声すらあるという。

  自民党は現行憲法に「時代遅れ」と毒づいているが、そうすると「参院は時代遅れで必要ない」ということになる。自民党とはいえ参院議員が怒るのも当たり前だ。

  手続き的にも、各部会・調査会をとりまとめる政調会長の与謝野馨氏にも内容を知らせないままだったらしい。与謝野会長が非常に怒ったとの話も伝わっている。

  「国民置いてきぼり」、「党内の論議すら置いてきぼり」の、政治日程優先の取りまとめが引き起こした矛盾だ。

  国民の声とのずれは非常に感じる。衆院憲法調査会の中央公聴会を取材したが、九十三歳の医師から二十二歳の学生まで、九条守れの声がそれぞれの生活に根ざした形で出てきていた。この声とのずれが根本にある。

  「九条の会」の地方講演会を取材していても感じるのは、平和のエネルギーだ。改憲をなんとしても阻止しようという炎が静かに広がっているのを感じる。改憲策動と国民との深刻な矛盾が、改憲勢力のなかに矛盾を引き起こした背景にあるのではないか。

本丸“9条改悪”では共鳴

国民投票法案で与党合意

  保岡氏の想定していた日程が崩れた意味は大きいと思うが。

  小泉首相が指示した来年十一月までの改憲草案とりまとめという政治日程から逆算すれば、十二月中には大綱をつくるというスケジュールはギリギリだった。保岡氏周辺は、改憲への「求心力」に期待してか、なんとかなるだろうという安易な“読み”を持っていたフシがある。

  気になるのは、自民党の憲法調査会関係者が、「大綱とりまとめで大技もないわけではない」といっていたことだ。大綱の議論は、憲法調査会とは別の「全党的機関」で行うとなっているが、それを飛ばして総裁決裁という非常手段に訴える方法もあるという。

写真
衆院憲法調査会の公聴会=11月25日

方針案で“提言”

  民主党の方はどうみていたのか。

  枝野幸男・党憲法調査会長は自民党の改憲大綱原案が出たとき、「自民党は憲法改正をしたくないのではないか」とのべていた。「憲法を本当に変えようとするなら、改正に必要なところから(民主党との)合意をとっていこうと思った瞬間にすべての改憲のシナリオがはじまる」ということだ。

  財界、アメリカに改憲勢力として認知されたい一方、「政権交代」をアピールするには自民党と同じに見られたくないのではないか。

  民主党の方は、改憲勢力になるということは一貫して集会でも党内でも主張している。今度の運動方針案でも、改憲の「提言」を来年三月にまとめると明記した。自民党の改憲案に対置するものを準備するという姿勢は変わらない。

  枝野発言については、両面あると思う。自民党は大綱原案とりまとめ、公明党との与党協議で改憲に必要な国民投票法案骨子をまとめるなど、この間“攻勢”に出た。枝野発言は、“攻勢”に対する一つの反応だったし民主なしには改憲できないのだよというアピールでもある。

大国主義の亜流

  「九条の会」沖縄講演で奥平康弘氏は、「自民党の『大綱』原案は単なる復古主義ではなく、ブッシュ的大国主義の亜流版だ。憲法を、権力を制限するものから、国民の行動規範にするというのは民主党と共鳴し合うもので、大国主義が出てくればくるほど、民主が引きずられていく」とのべていた。重要な指摘だと思う。

  自民党の「大綱」原案には、天皇「元首」化や「国柄」の強調など復古主義的傾向もあるが、最後に民主党と一緒になってやるのは集団的自衛権の行使を含んだ「国家緊急権の導入」など平和主義の破壊、九条の改悪だ。

  騒動の中にあっても、本丸の九条論議では決して甘く見られないということだね。

草の根に展望も

  自民党が大綱の年内とりまとめをやめても、改憲の歩み自体が止まったわけではない。改憲の手続き面で国民投票法案の骨子で合意したし、通常国会提出を決めた。

  公明党も十一月の党大会で加憲論を九条にも及ぼすことを決めて、九条改憲の方向に大きく踏み込んだ。

  自民党は、改憲草案を付託する「憲法委員会」の設置を求めていたから、ある意味で妥協だが、調査会に法案審議権を与えることで具体的な改憲論議を進める“実”を取ったともいえる。

  警戒が必要だ。投票法案が改憲策動の一部だと国民に知らせることが急務だ。

  国民不在の改憲論議のほころびに見られるような矛盾は、改憲論の内容が広く国民のものになればなるほど広がるだろう。

  草の根の取り組みも、「九条の会」地方講演などをバネに広がっている。改憲勢力の思惑どおりに事はすすんでいないし、国民との矛盾も深刻なだけに、憲法改悪阻止の展望はみえてくるね。



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