日本共産党

2004年12月4日(土)「しんぶん赤旗」

国連改革の報告書提出

諮問委がアナン事務総長に


 【ワシントン=浜谷浩司】国連改革に関するハイレベル諮問委員会は二日、国連改革に関する報告書をアナン事務総長に提出しました。事務総長は、この提言を受けて来春に包括的報告を国連加盟国に示し、九月の国連創設六十周年記念首脳会議で議論されることになっています。

武力行使

表

 報告は「予防的軍事行動」の議論に十分な理由があり、それを支持する証拠も十分だということなら、それへの対処は国連安保理に提起すべきだと指摘。安保理が軍事行動を承認しない場合には、交渉など「他の戦略」を追求すべきだとしています。

 さらに、こうした対応に「がまんできない」国への「回答」として、次のように述べています。

 「潜在的脅威に満ちた世界で、単独での予防行動を合法化することは、世界秩序や不干渉の基準へのリスクが大きすぎる。一国にそういう行動を認めれば、すべての国に認めることになる」

 また、国際社会で「法の支配」が一段と重視されていることを指摘。安全保障が超大国によって維持されるという考えは、国際的に「ほとんど受け入れられていない」と述べています。

 報告は一方で、ジェノサイド(民族皆殺し)など国際人道法が大規模に侵されるケースを想定し、軍事力の使用を「従来からの狭い意味」でなく「広く」適用したいとし、安保理に「積極性」を求めています。

 そのうえで、武力行使にあたって安保理が検討すべき「正当性の基準」として、(1)武力行使を正当化するほど深刻な脅威か(2)軍事行動の主目的が脅威の回避におかれているか(3)非軍事措置を尽くしたうえでの最後の手段としての武力行使か(4)行動の規模や期間は最小限か(5)軍事行動が悪い結果をもたらす可能性はないか―を列挙。このガイドラインを安保理と国連総会が決議するよう求めています。

 報告はまた、軍事行動における一般市民の保護を強調したなかで、ジェノサイド条約、ジュネーブ条約、難民条約とならんで、国際刑事裁判所(ICC)設立条約を「すべての(国連)加盟国が署名、批准すべきもの」と強調しました。

機構改革

 報告は、国連活動における総会の重要性を強調。総会が「審議の主要な機関としての機能を果たせるよう新たな努力を払うべきだ」と指摘しました。

 焦点の一つとなった安保理改革については、(1)国連に財政的、軍事的、外交的に高い貢献をしている国々を含める(2)途上国世界の重視(3)安保理の実効性を損なわない(4)安保理をより民主的で責任あるものとする―ことを指針に構成を拡大するよう求め、二案を提示。また、二〇二〇年に安保理の構成を見直すよう求めています。

 一方、現在の五常任理事国に与えられている拒否権については、「変更する現実的な道はみえていない」と現状を維持。

 ただ、拒否権の制度は「時代錯誤的」だとし、その問題を改善する手だてとして、二回表決制度の導入を提案しました。非公式の第一回投票では、常任理事国が「ノー」を投じても拒否権の効果はないものとし、その後に公式の表決を行うというものです。

 報告は、これらを実行するために国連憲章の一部改定を提起。安保理構成にかかわる変更のほか、旧敵国条項、信託統治理事会規定、軍事参謀委員会の削除を提案しています。

核兵器

 報告は国連を取り巻く今日の情勢を検討した中で、核兵器保有国に対して「軍縮を再び開始する諸措置をとるべきだ」と要求。(1)核不拡散条約(NPT)に規定された軍縮の約束を守り具体的措置をとるべきだ(2)非核保有国に核兵器を使用しない約束の再確認や非核兵器地帯協定の締結などをすべきだ―としています。

 また、ブッシュ政権が進める「対テロ戦争」について、各国政府や民間団体から「人権や法の支配を侵食するとの懸念」が表明されたことに言及。テロへの対処で「軍事、警察、情報」にばかり焦点をあわせることは、世界の人々を遠ざけることになり、「テロに対する集団的行動の可能性を弱める」との見解も指摘しています。



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