2004年12月3日(金)「しんぶん赤旗」
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新潟県中越地震の被災地では、地域で医療の中核となる病院が大きい被害をうけ、患者や家族、地域医療にとっても重大な支障をきたしています。十日町市の新潟県厚生連・中条第二病院(精神科百五十床)を取材しました。
新潟県・村上雲雄記者
「地震後、患者は県内の遠くの病院に転院させられて面会にいくのも大変。影響は大きい。今まで近くにあったことのありがたさが身にしみてわかった。早く元の病院に戻してほしい」。こう語るのは、中条第二病院の患者家族会の渡辺弘会長(67)です。
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中条第二病院は、十日町市・中魚沼郡地域で唯一の精神科病院として医療を行ってきました。病舎は地震で外壁が落ち、鉄骨がむき出しになったり支柱が損傷するなどで使用できなくなりました。そのため入院患者百三十五人を県内の病院に分散・転院させています。
中には県北や上越地域など遠隔のところにいる患者も少なくありません。建物と施設の被害や修復のための診断調査は十二月までかかるうえ、再建には多額の費用がかかるため、再建のめどはたっていません。
転院したため、ふだんでもめったに行かない地域となり、家族が患者に面会に行くには一―二時間以上かかり、交通費も何倍もかかります。
患者にとっても影響は深刻です。渡辺会長は「患者はふだんでも自分の意思を伝えにくいのに、慣れない病院でコミュニケーションがうまくいかなければ病気にも影響する。いつまでも転院先の病院が受け入れるわけでもないので、早く再建の方向を出してほしい」と語ります。
中条第二病院は十日町・中魚沼地域の精神科の病院診療だけでなく、障害者施設や介護施設入所者の精神医療をバックアップし、痴ほうや精神不安などで相談診療も実施。住民の生活を支える地域医療機関として重要な役割を果たしてきました。
渡辺会長は訴えます。「中条第二病院は単なる精神科病院とは違う。病院があることによって障害者も高齢者も安心感を持てた。病院がなくなれば地域医療での影響は計り知れない。患者のうしろには四人、五人の家族が控えていることも考えてほしい。同じ場所での再建はできなくても、近くの場所で再建してほしい。それには行政の援助も必要なので働きかけをしていく。病院をなくすわけにはいかない」
日本共産党の小池晃参院議員が十一月四日、被災地医療の支援措置を求めたのに対して、尾辻厚労相は「対応を考える」と答えています。