日本共産党

2004年11月27日(土)「しんぶん赤旗」

教員配置の安定性確保を

「特別支援教育」の中教審中間報告

予算、人員増の保障なし


解説

 文部科学省は、特別な支援を必要とする教育をスタートさせる方向をうちだしました。その背景には、特別な支援の制度が確立していないLD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)、高機能自閉症などの子どもたちの問題が学校現場で表面化し、抜本的な対応を求める父母や教職員の切実な要求があります。中央教育審議会の「中間報告」も、こうした子どもたちへの支援は、「学校教育における喫緊の課題」と位置づけています。

 文科省によれば、小中学校の通常の学級に在籍している、LD、ADHD、高機能自閉症などの子どもたちは約6%、六十七万人といいます。これまで日本では障害児教育の対象とされず、独自の教育条件も整えられてきませんでした。こうした子どもたちを支援することは重要です。

 しかし、「報告」の特別支援教育には、大きな問題があります。特別支援教育の対象となる子どもたちが従来の五倍となるにもかかわらず、障害児教育予算や人員は現状のままで対応しようとしていることです。これでは十分な教育ができず、教育の質が低下することにもなりかねません。

 「報告」では、小中学校の障害児学級や通級指導教室を見直し、「特別支援教室」にすることをうちだしています。特別支援教室は、障害児学級などと違って教員の配置の保障がありません。各地の父母や教職員から「生活と学習の場である学級をなくさないで」の運動が広がり、「報告」ではこうした意見を「配慮」するとしました。しかし、「学級」を維持する保障はありません。

 また「報告」は、LDなどの子どもたちに通常の学級や特別の場での指導、支援を受けられるようにするとしています。しかし、制度的な中身や予算・人員の保障はなく全国LD親の会などは「教員配置の安定性確保」を強く求めています。

 各地では、秋田県などのように盲・ろう・養護学校を集めた学校を開校し、教員を百人以上減らす計画や東京都の寄宿舎を減らす計画など、特別支援教育の具体化といいながらリストラを進める動きも広がっています。

 日本共産党は、二月十五日に発表した政策で、現在の予算・人員の枠内で対応するという政府の姿勢をあらためさせ、特別な教育を必要とする全ての子どもたちへの支援を本格的に前進させることを呼びかけました。そのための運動を広げていくことが求められています。

 竹本恵子記者


多様な選択肢を準備してほしい

 ADHDををもつひとびと、悩む家族、教師を応援するNPO法人えじそんくらぶ代表・高山恵子さん ADHDやLDなどは、見えにくい障害であるがゆえに、本人の努力不足や親のしつけとして片付けられることが多く、本人が自信を失ったり、うつになったりするなど、二次障害が大きな問題となってきました。一人ひとりのニーズに合わせた特別支援教育によって、二次障害を防止することになればいいと思います。

 カリフォルニア州の学校に視察にいきましたが、そこでは、通常学級での支援、補習などちょっとした小集団での支援、個別の支援計画をもった特別な支援と三段階の支援がされていました。ADHDは、個性といえるレベルから障害として認識できるレベルまで連続性があります。日本でも通常学級への支援を基本に、特別支援教室、障害児学級と、子どもにあわせた多様な選択肢を準備してほしい。特別支援教室を実現するにあたっては、教員配置を加配でなく、定数配置するよう求めてきました。「中間報告」をみて、システムだけで終わってしまうのではないか、中身の保障が十分でないことが心配です。

 私たちはADHDなどの子どもたちの問題を考えることを通じて、一人ひとりの違いを認め、サポートしあう社会を実現するきっかけになればと考えます。

 ホームページ http://www.e-club.jp/

条件整備の投資が必要

 宮城教育大学名誉教授、特別ニーズ教育学会副代表・清水貞夫さん 障害児教育には自治体によって大きな格差があります。障害児学級でいえば、90%の小学校区に設置されているところもあれば、50%をきるところもある。「中間報告」は、この「格差」を「格差」ととらえるのでなく、それをてこに低いところにあわせ、しかも条件整備なしに特別支援教育構想を推進しようという考えが見え隠れしています。

 たとえば、障害種別ごとに設置されている盲・ろう・養護学校を一本化して特別支援学校にするにあたっては、知的障害や視覚障害などの部門を設けることが有効だと認めています。それにもかかわらず、都道府県など「設置者等にゆだねることが適当」と、国の条件整備の責任をあいまいにし、自治体任せにしています。教員配置定数がどのようになるかで、教育条件が悪化する可能性が大きくなります。

 養護学校には就学者増加で、教室不足が深刻化し、プレハブ対応をしている学校や、大規模化し過密化した学校もあり、教育条件整備のための投資こそ大事です。



もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp