日本共産党

2004年11月12日(金)「しんぶん赤旗」

ウルグアイ作品にグランプリ

第17回東京国際映画祭

観客・映画人の交流深夜まで


 第十七回東京国際映画祭は、東京・六本木と渋谷で開かれ、前年より三割以上増の参加者を得て、十月三十一日、九日間の日程を終えました。東京グランプリのウルグアイや、マケドニアなど、映画後進国の作品が新鮮な印象を残しました。


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高野悦子さんらの記者会見

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受賞者と審査員

 コンペティションの最高賞「東京グランプリ」と主演女優賞の二冠に輝いたウルグアイ映画「ウィスキー」は、ファン・パブロ・レベージャ(29)、パブロ・ストール(30)の共同監督作品。零細の靴下工場を営む一人暮らしの主人公が、海外に住む弟の一時帰国の間だけ、工場の女性事務員と偽装の夫婦を務め、たんたんとした描写に人生の孤独を感じさせます。会見でレベージャ監督は、「描き過ぎるのではなく、ジグソーパズルの一つ二つを抜かしそれを考えてもらうような、観客を信頼し想像してもらう作り方をしたい」と。会見の終わりを告げられてもマイクを離さず、祖国で百年に一度というほどの大変動が起ころうとしている最中の受賞でこんなうれしいことはない、と喜びを満面に表しました。その日、ウルグアイでは左翼のバスケス大統領が誕生しようとしていたのでした。

 コンペの審査委員長を務めた山田洋次監督は、発表後の会見で「きわだってユニークな作品で一度見ると忘れられない。動きを殺し、静かな抑制が効き(他の委員から)小津の作品を連想させるという意見も出ました」とのべました。

韓国映画界の層の厚さも…

 「大統領の理髪師」(韓国)で最優秀監督賞のイム・チャンサン監督は、一九六九年生まれ。理髪師一家の変遷に軍政以来の韓国の現代史を重ねます。軍政の苛烈さをユーモアに溶けこませる巧みさ。「六〇〜七〇年代に抵抗した人たちのことが忘れられているので関心をもたらしたかった」とチャンサン監督。これがデビュー作で、あらためて韓国映画界の層の厚さを感じさせられました。

 森崎東監督の「ニワトリはハダシだ」に最優秀芸術貢献賞が贈られ、これがコンペで唯一の日本映画の受賞作となりました。審査員の会見のなかで、チャレンジ精神あふれる映画を撮り続ける森崎監督に審査員一同大きな敬意でこの賞が決まったと紹介しました。

 このコンペは、五十九の国と地域からの応募作三百十作品から選ばれた十五作が上映され、そこから受賞作が選出されたものです。

 人口二百万のマケドニアからの出品作「ミラージュ」は、夢をつぶされ救い手のいない少年の悲劇から、国情の厳しさが伝わります。映画産業のないこの国から「コンペの作品に自作が並び、感謝の気持ちでいっぱい」とズベトザル・リストフスキ監督は、語っていました。

創造の世界で生きるために

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東京グランプリと主演女優賞を受賞した「ウィスキー」

 こうした、映画祭でこそ見ることのできる作品に接するのも喜びなら、観客と映画人とがじかに触れ合うのも映画祭の大きな魅力です。人に愛されることを願い誰をも裁かず生きる青年の孤独が迫ってくる「ダンデライオン」(アメリカ)。空手の名手を描く「風のファイター」(韓国)。これらの夜の上映後、十一時を過ぎても観客と監督、出演者らの国を超えた熱心な質疑応答が続くさまに、これこそ映画祭のだいご味、との思いを深くさせられました。

 協賛企画の「東京国際女性映画祭」も十七回目。女性映画人の思いをつづった日韓双方のドキュメンタリー上映とシンポジウム「日韓女性映画人は今」を開催。女性映画人が創造の世界で生きるために、苦難を乗り越えてきたさまが、映像からもシンポからも伝わり、女性映画祭の蓄積の尊さも痛感させられました。

 (児玉由紀恵記者)



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