日本共産党

2004年10月11日(月)「しんぶん赤旗」

「雇用情勢は好転」って本当?

東北の高校生の就職事情


 「景気は着実に回復している」「雇用情勢も持ち直している」―小泉首相は得意満面、そう繰り返しています。本当にそうなのか? 就職活動が本格化している高校生の最新就職事情と、雇用の確保に向けたおとなたちの取り組みを、東北地方から報告します。

 東北総局・吉武克郎記者


「あきらめた」生徒大幅増

雇用に奨励金出す自治体も

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各県知事への要請キャラバンの途中、街頭で署名を集める教組共闘北海道・東北ブロックの人たち=9月16日、青森市

 「たしかに求人は増えている。製造業は昨年の倍で、大手の自動車メーカーに三人も内定した。とくに地元からの求人が増えているのは、うれしい傾向だ」―。

 仙台市の北隣、大和(たいわ)町の宮城県立黒川高校で進路指導部長をつとめる佐々木弘明教諭は、今年の感触をそう話します。

 今年、高校生の就職活動が解禁されたのは九月十六日。直後に出願した同校の生徒八十九人は、およそ三分の一が、九月中に早々と内定通知を手にしました。仙台周辺の自動車や精密機器産業などが大きな受け皿となっています。

回復遅れる地方

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 しかし、来年卒業する宮城県の高校生の求人倍率は、昨年よりも〇・〇九ポイント上昇しただけの〇・三五倍(七月末現在、厚生労働省調べ)。全国平均の〇・六九倍(同、昨年より〇・一六ポイント上昇)の半分程度です。これは仙台が好転する一方で、そのほかの地域が取り残されていることを示しています。

 青森県の県立木造高校(木造町)三学年主任・水島康雄教諭は、さらに深刻な状況を話します。

 「良くなっているとは思えない。地元のハローワーク管内からの求人は、工務店の現場監督見習いやパチンコ店など六社だけだ。求人数は依然、景気が良かったころの十分の一程度しかない」

 青森県の高校生の求人倍率は全国最低の、わずか〇・〇九倍。昨年より〇・〇一ポイントの下落となっています。青森は四十七都道府県のうち、高知と並んで二県だけの悪化した県です。

就職率95%の裏

 東北全体で見ると、高校生の求人倍率は〇・二九倍。求人が増えていると言っても大きな地域格差があることを、数字は浮き彫りにしています。

 「本当に、求人がない。専門学校に行くお金がなければフリーターになるしかないね、と友達同士で話しています。二年生、一年生でさえ、あきらめている人が多い」

 青森市内の県立高校に通う三年生の男子生徒(18)は、学校内の様子をそう話します。

 95・4%―今春、青森県内の高校を卒業した就職希望者の就職率です。一見すると、高い数字。しかし、裏があります。それは途中であきらめてしまう生徒が膨大な数いるということ。三年生になった当初、五千五百十四人いた就職希望者は、一年で三千七百十七人にまで減っています。実に、33%減。初めの数で計算すれば、就職率は64・3%に落ち込みます。

 「あきらめた層は、大部分がフリーターになっている」。前出の水島教諭は話します。「事務や販売など、以前は高校生にもあった仕事が、大学生やパートなどに置き換わっている。構造的に、高校生の仕事は減っているのではないか」

 猶予できない事態を前に、さまざまなおとなたちの取り組みが始められています。各地の教職員組合でつくる「教組共闘北海道・東北ブロック」(代表・菊池英行宮城高教組委員長)は昨年度から、北海道と東北各県の知事にあてて、青年の雇用確保を求める要請キャラバンを展開しています。

若者励ます施策

 独自施策に取り組む自治体も生まれています。 岩手県大船渡市(人口四万五千人)は昨年から、新高卒者を常用雇用した事業主に十万円を交付する事業を始めています。昨年は二十三社に交付。参考にしたい、と他市町村から照会も来ているといいます。商工港湾課の新沼辰男課長は話します。

 「景気の低迷が続くなか、採用を抑制したり、『即戦力』を求める企業が増えている。そのもとで高校生の就職先を確保するには、特別の施策が必要と判断した」

 山形県は二〇〇二年から、トライアル雇用(注)の期間を終えた若年者を本採用した事業主に一人当たり十万円を支給する制度を設けています。適用されている中心は高卒者。昨年は五百人分の予算をつけたところ、中小企業から大きな反響があり、八百八十人分が支給されています。

 雇用対策室の佐々木秀博室長補佐は話します。

 「次代を担う若者が職業経験を身につけられないことは、本人にも不利益なうえ、地域の将来の発展も阻害する。限られた財政だが、常用雇用を増やす刺激になれば」

 「こういう施策は、中小業者や若者にとって大きな励みだ」―全山形教職員組合の情野貞一委員長は、そう評価します。

 最後に、高校生自身の取り組みを紹介します。前出の高校生は、雇用の確保を求める署名を同級生から集めています。

 「ほぼ全員が署名してくれている。みんな、何も言わないけど、何とかしてほしいと思っているのがよくわかった。働きたい人は、いくらでもいます。みなさん、僕たちに力を貸してください」

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トライアル雇用(事業) 三十歳未満の若年者などを試行的(トライアル)に雇用した事業主に、最大三カ月間、一人につき一カ月当たり五万円が支給される国の制度。




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