2004年10月9日(土)「しんぶん赤旗」
UFJ銀行が、金融庁の検査で隠そうとしたのは大口不良債権でした。
UFJの前身の一つ・旧三和銀行はバブル時代、他の大手銀行と同様、過剰融資に走りました。財閥系でないため、建設や不動産、流通などの業種につぎ込み、それがバブル崩壊などにより、焦げ付きました。
旧三和銀行や合併後のUFJは、中小企業などの不良債権処理はどんどん進める一方、マンション分譲最大手の大京や、大手スーパーのダイエーなど大口不良債権の処理を事実上棚上げしてきました。たとえば、大京では他行が融資を引き揚げる中、旧三和銀行が肩代わりをつづけ、現在では借入金の大半の約四千億円がUFJグループとなっています。
こうした大口不良債権の実態を検査から隠す行為は銀行という金融機関に求められる経営の透明性、金融機関の公的性格から見ても大きな問題です。こうした実態を放置してきた政府・旧大蔵省の責任も問われています。
同時に、今回の事件の背景として見なければならないのは、竹中前金融担当相がすすめてきた不良債権処理の加速化です。資産査定や自己資本の計算を見直すなどして、日本の金融の現実を無視した、アメリカ流の厳しい基準を打ち出し、金融機関の淘汰(とうた)、選別を強引にすすめてきました。今回の事件のなかで、UFJグループと三菱東京フィナンシャル・グループが統合するのもそうした流れの結果です。
金融庁は、UFJ銀行など公的資金注入行が経営健全化計画の収益目標を二年つづけて30%以上下回った場合、経営責任の明確化を求める方針を掲げてきました。不良債権の実態が明らかになり貸し倒れ引当金の大幅積み増しを迫られれば、大幅赤字となり、経営責任が問われる結果になります。この路線が中小企業などの貸し渋りや融資引き揚げの事態を引き起こし、中小企業倒産に拍車をかけてきました。
今回の事件では、銀行だけでなく、国民にツケをまわす金融行政の改革という根本問題もまた問われています。
山本豊彦記者