日本共産党

2004年10月9日(土)「しんぶん赤旗」

京都議定書批准へ転換の訳は?

ロシア WTO加盟支持と引き換え

環境NGO “EUの働きかけで決断”


 【モスクワ=田川実】地球温暖化防止を目指す京都議定書の批准に向け、ロシア政府は七日、批准法案を下院に送付しました。議会側も採択間違いなしと語り、上院の承認、大統領の署名まで含めた批准作業は年内に完了しそうです。議定書はロシアの批准の九十日後に発効します。


 ロシアは昨年秋から今年春にかけ、「経済成長を妨げる」などとして批准に消極的な姿勢を示していました。批准に踏み切った背景には、批准を強く求める欧州連合(EU)から、引き換えにロシアの世界貿易機関(WTO)加盟支持を取り付けたプーチン大統領の政治決断がありました。

一部は依然不満

 政府や与党の一部幹部は依然として京都議定書そのものに不満そうです。ミロノフ上院議長は六日、上院も批准に問題はないとする一方、政府の動きを「経済的な決断ではない。政治的実利主義の立場で、批准が政治的に利益をもたらすとみてのことだ」と述べました。

 議定書を「現代の強制収容所」と酷評したこともあるイラリオノフ大統領顧問(経済担当)は、「政府の誰も、議定書が科学的だとも、ロシアの得になるとも思ってない」とマスメディアに語っています。

 ロシアでは同氏や実業界だけでなく、労組も「企業が環境浄化の設備更新に金をかける分、労働者の賃金抑制や解雇の恐れがある」などと懸念。科学アカデミーも、「議定書の科学的根拠は薄い」などと主張していました。

 転機は今年四月から五月の独仏、EU首脳とプーチン大統領の一連の会談でした。EU側は五月の加盟国拡大に伴うロシアとの新たな貿易協定で歩み寄り、ロシアのWTO加盟にも明確な支持を与えました。

 これに大統領は、「議定書の協議に肯定的な影響を与えざるを得ない」と応じ、「批准に向け動きを加速させる」と宣言したのです。

 ロシアのWTO加盟は、プーチン政権の最重要課題の一つ。貿易の自由化を進めるWTOへの加盟実現は、ロシア経済を支える石油、天然ガス、石炭の輸出と、各種製品の輸入に有利とされます。国際競争力のない国内企業などへのショックを緩和する措置を検討しつつ、ロシアは加盟を目指しています。

二国間交渉へて

 加盟の承認は、WTO内の作業部会とともに、既存加盟国との二国間交渉をへて決まります。有力メンバーであるEUからの支持獲得は、ロシアにとって不可欠のものでした。

 環境NGO(非政府組織)、世界自然保護基金(WWF)ロシアのココリン気候担当は、「議定書とWTOの取引は公式にはありませんが、ロシアの批准はEUとの“友好的合意”の結果と言えるでしょう」と語ります。

 外務省のヤコベンコ情報局長は七日の会見で、「議定書の義務は経済、社会に深刻な影響を与えるため、大統領の決定はすべての要因を精査し、ロシア抜きでは議定書が発効できないことを考慮して行われた」と説明しました。

 世界をやきもきさせたロシアの批准への動きは、「国益の擁護と、国際社会全体の幅広い利益のための建設的行動を両立させる」(イワノフ前外相)という同国の外交姿勢をあらためて印象付けました。



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