日本共産党

2004年10月9日(土)「しんぶん赤旗」

安保・防衛懇報告書を読む(1)

「9・11」から始まった


 小泉純一郎首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・荒木浩東京電力顧問)が四日に提出した報告書は、海外派兵を自衛隊の主要任務に格上げ(本務化)することなど日本の安保政策の大転換を打ち出しました。小泉首相は、年末までの策定を目指す新たな「防衛計画の大綱」の「参考」にすると表明しています。報告書を改めて読んでみると――。

情勢論そっくり

 報告書の全体を貫いている最大の特徴は、ブッシュ米政権が進める先制攻撃戦略への追従に終始していることです。

 そのことは、報告書が描く「21世紀の安全保障環境」に端的に表れています。

 報告書は「21世紀の安全保障環境」の説明を「2001年9月11日、安全保障に関する21世紀が始まった」という一文から始め、米国での同時多発テロを情勢分析の出発点としています。

 その上で「9・11テロ事件以降、米国は、特定国の軍事的脅威を対象とする従来の安全保障戦略を転換し、テロリストやならず者国家といった非対称的脅威への対処に全力を傾け」ていると指摘。「もはやテロリストや国際犯罪集団などの非国家主体からの脅威を正面から考慮しない安全保障政策は成り立たない」と断定し、「国際的安全保障環境の改善による脅威の予防」を打ち出しています。

 ブッシュ米政権は同時多発テロを口実に、テロリストや「ならず者国家」には米ソ対決時代のような「抑止」が効かないため、先制攻撃を含む「脅威の予防」が必要だと主張。国連憲章に違反する先制攻撃戦略を打ち出し、イラク戦争で実際に発動しました。

 報告書が描く「21世紀の安全保障環境」は、その引き写しです。

 アジア・太平洋地域に関する認識も同じです。

 報告書は「中東から北東アジアにかけての『不安定の弧』の地域」で「テロや国際犯罪などさまざまな脅威」があるとの認識を示しています。「不安定の弧」という表現は、米国防総省が同時多発テロ直後(〇一年九月末)に公表した「四年ごとの国防見直し」(QDR)報告で使われていたものでした。

協力を当然視

 報告書は、ブッシュ米政権の先制攻撃戦略そのものも肯定的に描き、それへの協力を当然視しています。

 「米国は伝統的な抑止戦略を転換し、予測困難な新たな脅威に柔軟に対処するための情報能力や機動展開能力などの充実を図るとともに、グローバルな規模で米軍の変革を進め、同盟国、友好国との更なる関係強化を図っている」と指摘。「日米協力の機会が今後ますます増大していく」とし、ブッシュ政権の先制攻撃戦略を具体化する「米軍の変革」=在日米軍再編について「積極的に協議を進めるべきである」と強調しています。

 (つづく)



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