日本共産党

2004年10月6日(水)「しんぶん赤旗」

CO2最大の排出国 米国の責任は

温暖化防止の京都議定書

ロシア批准で発効へ


 ロシア政府は九月三十日、地球温暖化防止のための京都議定書の批准を議会に求める法案を提出し、同議定書は一九九七年十二月の京都での採択から七年をへて、ようやく発効のめどが立ちました。今年の夏の異常気象でますます関心の高まる地球温暖化。その防止に向け拘束力をもった初の国際協定です。

 議定書の発動を遅らせてきた大きな要因は、前政権が署名した議定書から脱退するという、ブッシュ米政権の空前のルール破りにありました。

 それは、単に米国だけの離脱にとどまらず、議定書そのものの死文化を狙った、国際的な法の支配を破壊する行為でした。

 というのも、京都議定書の発効要件が(1)五十五カ国以上が批准する(2)批准した先進国の二酸化炭素排出量の合計が先進国全体の55%となる―の二つだからです。先進国の温室効果ガス排出量の36・1%(九〇年時)を占める米国が参加しなければ発効が難しくなる仕組みです。

 米国はまた、日本、オーストラリア、中南米諸国などに対し、議定書を批准しないよう圧力をかけました。

ロシアの思惑

 米国が離脱した後、発効のカギを握ったのは、排出量の比率が17・4%のロシアでした。九月末現在、議定書を批准した国は百二十五カ国・地域に達していました。そのうち先進国の排出量の合計は44%しかなく、(2)の要件には届いていませんでした。ロシアが批准すれば合計は61%を超え、達成できるのです。

 あくまで議定書発効を妨害しようとするブッシュ政権は、批准を思いとどまるようロシアに圧力をかけました。

 他方で、議定書発効のカギを握ったロシア側は、その立場を最大限に利用しようとしました。

 京都議定書に設けられた抜け穴の一つは、ガス排出量削減目標達成に余裕のある国が、目標達成が難しい国に対し、その余裕分を売却できる仕組み(排出量取引)にありました。ロシアは、二〇〇八―一二年までに温室効果ガスを一九九〇年水準に保つことが議定書で定められています。

 しかし、ソ連崩壊後に経済が縮小したロシアでは、ガス排出量は減っていました。7%削減の目標を課せられた米国が、ロシアの余裕分を金で買い、自国の削減数値に含めるというのが、この排出量取引条項の当初の狙いでした。米国の離脱で、このもくろみは破たんしてしまいました。ロシアにとって、急いで批准するメリットがなくなってしまったのです。

 議定書発効を急ぎたい欧州連合(EU)諸国は、ロシアへの働きかけを強化しました。結局、ロシアの世界貿易機関(WTO)加盟に協力することなどを条件に、ロシア政府はついに批准を決断したのです。

孤立する米国

 京都議定書に関して米国に同調しているのはオーストラリアだけです。イラク戦争で米国と緊密に協力したブレア英政権でさえ、EU諸国と足並みをそろえています。京都会議の議長国として議定書発効に特別に責任を負う日本政府は、ブッシュ政権の離脱表明後も「米国の参加なしには批准しない」との態度をとっていましたが、結局、〇二年、議定書批准に踏み切りました。

 難産の後に、何度も死文化の危機にさらされた京都議定書が、ついに発効へ。それは、圧倒的な軍事力を背景にしたブッシュ米政権の単独行動主義に対する、多国間協力主義の大きな勝利です。

 しかし、世界の温室効果ガスの四分の一を排出する米国が不参加のままでは、温暖化防止にはおのずと限界があります。地球の存続と両立しない米国の単独行動主義の一掃が求められています。坂口明記者


グラフ

京都議定書

先進国全体の削減目標12年までに5・2%

 大気中には、地球の熱を逃げにくくする温室効果ガスが含まれています。人間活動にともなって、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの濃度が急激に上昇。急激な地球温暖化をまねくと予想されています。

 これを防止するために、一九九二年、「気候変動枠組み条約」が成立。同条約締約国が参加して九七年に開かれた地球温暖化防止京都会議で締結されたのが京都議定書です。

 京都議定書では、先進国全体で二〇〇八年―一二年の間に、一九九〇年比で温室効果ガスの排出を5・2%削減することが決められました。各国ごとの目標は、欧州連合(EU)が8%、米国が7%、日本とカナダが6%などとなっています。

 京都議定書が発効すれば、各国は決められた削減目標を達成する義務が生じます。日本の場合は〇二年度の温室効果ガス排出実績は、九〇年比で7・6%増加しており、合わせて13%以上の削減が必要となっています。



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