日本共産党

2004年10月2日(土)「しんぶん赤旗」

強力な投手陣、「粘っこい」打線

選手自ら判断、監督も尊重


 中日が5年ぶりのリーグ優勝を決めました。

 強力な投手陣がチームを引っ張りました。防御率は6球団で唯一の3点台。エース川上の16勝をはじめベテラン山本昌が12勝、ドミンゴが10勝を挙げ、落合、岡本ら中継ぎや抑えの岩瀬など抜群の安定感を見せました。

 落合監督も「野球において攻撃できるのは投手だけ」という考えを持ちます。投手にけが人が続いた時期、鈴木・投手チーフコーチを二軍に派遣し、故障者の早期復帰を目指したケアに努めました。また固定観念にとらわれず局面に応じた継投策で、年間を通して投手の力を発揮させました。

勝負強さ発揮

 打撃面では、立浪が中盤まで得点圏打率5割の勝負強さを発揮。荒木、井端の1、2番コンビが定着し、大きな得点源になりました。

 「中日は粘っこい」と対戦相手も認める最後まであきらめない打線は、数々の逆転劇を生みました。8月14日のヤクルト戦は八、九回で9点を奪い、6点差を逆転。落合監督に「すごい選手たち。泣かせてくれた試合だ」といわしめました。

 最終盤には、チームの勢いを象徴するように、日替わりヒーローが出てきました。9月14日の阪神戦では九回、3点差で負けていた試合を、代打・高橋光の今季1号同点3ランで延長にもち込み勝利。26日には今季初スタメンの森が先制本塁打を放ちました。

 集中力を切らさない、ボールに食らい付く、常に次の塁を狙う――。今季の中日には、その意識が浸透していました。

 井端は「プレーに対する考え方が変わった。たとえば、併殺打はいけないと思っていたが(監督から)併殺も安打も紙一重みたいなものと言われ思い切っていけるようになった」といいます。マジックを1にした試合。井端はこれまでほとんど打ったことのないカウント0―3から本塁打を放ちました。落合監督は「一死三塁、0―3なら打つ確率が一番高いんだ。だから待つ必要なんてない」。積極的なプレーを引き出す監督の姿勢は最後まで貫かれました。

1、2軍超えて

 今春キャンプ、落合監督は一、二軍の枠を撤廃し「新人もみんな戦力。いまの力を10%引きあげれば優勝できる。それを引き出すのが指導者の役目」と強調し、シーズン中も二軍から頻繁に選手を呼び寄せました。

 そのなかで大きく飛躍を遂げたのはプロ6年目の蔵本英智(登録名・英智)です。俊足と強肩を生かし、広い守備範囲と矢のような返球で、チームのピンチを何度も救ってきました。

 序盤は守備固めでの出場でしたが、落合監督から「『ゆったり、大きくタイミングをとる』ということを、小学生でも分かるような言葉で教えてもらった」ことで打撃面でも成長しました。

発想と感性で

 落合監督は「素質は大事だが、発想や感性はもっと大事」「グラウンドでは誰も助けられない」と、選手に自ら考え行動するように指導してきました。

 8月11日、2位巨人との直接対決で象徴的な場面がありました。1点差に追い上げられた直後の五回、無死一塁の好機で荒木が三遊間に安打を放ちました。「走者は投手。最低でも自分と走者が入れ替わればいい。三遊間を狙おう」。続く井端も「送りバントも考えたが投手が安打しているし、流れを切らないようにと思った」と積極策を選び、初球をたたいて試合を決めました。

 ほかにも、選手同士で重盗を試みたり、投手の調子を捕手が判断して交代機を監督に進言――。選手を自分の駒のように動かす監督が多いなかで、落合監督は選手の判断を尊重してきました。

 選手は「マウンドでは必ず励ましてくれる」「監督は結果に関して怒ったことはないし、逆にアドバイスをしてくれる」といいます。選手の奮闘と“オレ流”さい配がかみ合った優勝でした。

 栗原千鶴記者



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