日本共産党

2004年9月26日(日)「しんぶん赤旗」

児童相談所 夜間・休日体制というが…

人、予算「なお不十分」の指摘

厚労省概算要求


グラフ

 親などから虐待を受ける子どもが増え続けるなか、厚生労働省は来年度予算の概算要求で、児童相談所が夜間・休日も相談に応じられる体制の整備を盛り込みました。

 対象となる児童相談所は、都道府県と政令市に一カ所ずつ。全国百八十二カ所の相談所の約三分の一、六十カ所で、二十四時間・三百六十五日いつでも相談に応じられる体制をつくるとしています。

 夜間・休日の相談に応じるために、児童福祉司などの退職者や、福祉職の経験者らを非常勤職員として雇用。このための人件費の半分を国が補助し、〇五年度予算の概算要求では、約一億七千万円を計上しました。

 厚労省が三月に全国の児童相談所を対象に行った、時間外の相談処理状況についての調査では、併設の一時保護所の職員が対応したのが40%、警備員や宿直職員が38%、帰宅した職員の携帯電話に転送したのが8%と、その場で専門的に対応しきれなかった状況が明らかになりました。

 こうしたなか、厚労省が今回打ち出した対策について、関係者からは「不十分」との声もあがっています。

 児童相談所での児童虐待の相談件数は、〇三年度は過去最高の二万六千五百七十三件。前年度より約二千八百件増え、統計をとり始めた一九九〇年度の千百件と比べると二十四倍に急増。それにふさわしく人と予算を抜本的に増やすことが急務となっています。

 児童福祉司 児童相談所に勤務するケースワーカー。児童虐待だけでなく、児童の養育、保護、育成などについての相談に応じ、必要な援助をします。施設や関係機関とも連携をとりながら、問題解決に向けた支援を行います。給与は、国から地方への地方交付税で措置されています。




緊急対応できるのか

浅井春夫立教大学教授の話

 緊急時に児童相談所が二十四時間対応できるようにすることは必要なことです。いまの児童相談所は夜間・休日はもとより、平日の日中も児童福祉司が非常に少ないため、一人ひとりが抱える相談件数は膨大で、緊急時の対応が必ずしも十分とはいえません。

 原因には、児童相談所数が絶対的に足りないこと、児童福祉司の配置基準は四十年以上昔の、虐待問題がそう複雑でなかった時代のまま、改善されずにいることがあります。いまは相談件数が格段に増えていますし、相談内容も複雑で、対応にはかなり難しい判断が必要なケースが増えています。専門職としての児童福祉司の位置付けを明確にし、研修などで専門性を高めることは急務になっていますが、そうしたことへの国の対応は後回しです。児童相談所の果たす役割は強く求められていますが、そのための条件整備はあまりにも遅れています。こうした問題をあいまいにして、非常勤職員を少し上乗せすることで、本当に緊急対応できるのか、非常に不十分だと思います。



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