日本共産党

2004年9月21日(火)「しんぶん赤旗」

来年度税制「改正」

定率減税廃止・縮小が焦点

働き盛り世代を襲う負担増


表

 二〇〇五年度税制「改正」で焦点となる所得税・個人住民税の定率減税の廃止・縮小。小泉内閣がたくらむ新たな増税策の影響について見てみます。山田英明記者

「回復」背景に

 政府は今年一月以来、月例経済報告で景気は「回復している」という判断を示しています。こうした判断を背景に、定率減税「縮減・廃止」の声が高まっています。

 廃止の動きが表面化したのは〇二年六月。政府税制調査会は「あるべき税制の構築に向けた基本方針」で、定率減税について「経済情勢を見極めつつ、廃止が必要であろう」と打ち出しました。政府税調の石弘光会長もたびたび定率減税の縮小・廃止についてふれ、「景気が良くなれば、あれを置いておく理由は全然ない」(〇三年十二月十五日の会見)、「(税額控除20%の半分の)10%ぐらいの話(=縮減)に耐えるような景気回復というのはあり得ると思いますから、〇五年、〇六年は」(一月十六日の会見)などと述べてきました。

 こうした議論に呼応し、〇五、〇六年度に定率減税の「縮減・廃止」の方向を明確に打ち出したのが、自民党、公明党の〇四年度与党税制「改正」大綱(昨年十二月)でした。大綱は、基礎年金の国庫負担(現行三分の一)を二分の一に引き上げるための財源として、所得課税の定率減税の「縮減・廃止」を狙っています。

個人消費押下げ

 定率減税の縮小・廃止は、働き盛り・子育て世代を直撃します。

 定率減税が二分の一に縮小された場合、サラリーマンと専業主婦、子ども二人の四人家族では、年収四百万円の世帯で、年間約八千円の増税となり、増税率は10・8%。廃止されると、同約一万六千円の増税となり、増税率は21・5%に達します。

 共働き世帯では、夫婦二人の所得にかかる所得税がそれぞれ増税され、負担はいっそう強まります。さらに、子どもが保育園に通う世帯では、共働き夫婦二人の所得税の合計によって保育料が決まるために、保育料の負担が増大します。

 民間調査研究機関の日本総合研究所は、定率減税が半減(二分の一に縮小)された場合、「年間の個人消費を一・三兆円(0・45%)押し下げる」と試算(今月二日)。「廃止・縮小は時期尚早」「〇五年度からの減税縮小は、景気減速のタイミングと重なり、景気後退をもたらしかねない」と警鐘を鳴らしています。

応分の負担こそ

 一九九九年度に導入された恒久的減税の中で、「景気回復」を理由にその縮小・廃止がもくろまれているのは企業や高額所得者に減税をもたらす法人税率の引き下げや所得税の最高税率の引き下げにではなく、庶民に増税をもたらす所得課税の定率減税だけです。

 好調な輸出やリストラ効果によって利益をあげる一部大企業が「景気回復」の恩恵を受ける一方、庶民は「景気回復」を実感できません。

 「景気回復」を理由に、財政難の打開、社会保障財源の確保を講じるなら、増税を庶民に求めるのではなく、史上空前の利益をあげる大企業にこそ応分の負担をもとめるべきです。


国民負担増計画

( )内は実施時期

 小泉内閣によってすでに決まっている2004年10月以降の国民負担増計画は次のとおり。

 厚生年金保険料引き上げ(毎年0.354%)やその他共済年金などの引き上げを合わせて

 毎年6000億円、06年度時点で1兆8000億円(04年10月、05年9月、06年9月)

 所得税 公的年金等控除縮小 老年者控除廃止 2400億円 (05年1月)

 住民税 配偶者特別控除廃止 2554億円 (05年4月)

    公的年金等控除縮小 老年者控除廃止  1426億円 (06年4月)

    均等割見直し(生計同一の妻の非課税措置の段階的廃止) 323億円 (05年度、06年度で)

 雇用保険料引き上げ 3000億円 (05年4月)

 生活保護 老齢加算廃止(3年間で段階的に廃止) 400億円 (04年度から06年度で)

 国民年金 保険料引き上げ(毎年月額280円)

 毎年800億円、06年度時点で1600億円(05年4月、06年4月)


定率減税

 所得税(国税)と個人住民税(地方税)の税額の一定割合を差し引く減税。所得税額の20%(最大二十五万円)、個人住民税額の15%(同四万円)を控除します。バブル崩壊後の長期不況に加え、消費税増税や医療改悪など橋本内閣による九兆円の負担増がいっそう景気を悪化させた一九九〇年代。こうした経済情勢のもと、九九年度税制改正で「著しく停滞した経済活動の回復に資する個人所得課税及び法人課税の制度を構築する」(九九年度税制「改正」の要綱)ための一環として、所得税の最高税率の引き下げや法人税の税率引き下げなどとともに「恒久的な減税」として導入されました。



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