日本共産党

2004年9月21日(火)「しんぶん赤旗」

マスメディア時評

書くべきとき書くべきことを


 みずからジャーナリストでありジャーナリズム論の研究者としても『新聞戦後史』などの著書で知られる新井直之氏(故人)は、ジャーナリズムの役割を“いま伝えなければならないことを、いま伝え、いま言わなければならないことを、いま言う”ことだと定義していました。

 日本のマスメディア、とくに全国紙は、この書くべきときに書くべきことを書くという立場から、ますます遠ざかっているのではないでしょうか。

安全と主権の重大問題さえ

 たとえばこの夏、大きな問題になった沖縄での米軍ヘリ墜落です。

 八月十三日、米軍普天間基地に隣接する大学の構内に大型ヘリが墜落し、米軍が現場を封鎖し警察の現場検証まで拒否したという事件は、国民・住民の安全とともに日本の主権にかかわる重大事態です。「しんぶん赤旗」は墜落の翌日付に一面トップで報道したのをはじめ、基地そのものの撤去を求めてキャンペーンをつづけてきました。

 ところが全国紙は東京で発行されている最終版で比較して墜落事故を一面トップで報道した新聞は一つもなく、その後も一過性の報道の域を出ません。社論ともいうべき社説で取り上げたのも、「朝日」は十七日付、「毎日」は十八日付です。「読売」や「日経」は墜落から十日以上たった二十六日付でした。

 墜落から一カ月後の九月十二日、普天間基地を抱える宜野湾市で開かれた市民大会の報道も同様です。人口九万人足らずの同市で三万人が参加した大会は、戦後半世紀以上にわたり米軍基地が居座りつづける異常さと深刻さを、あらためて浮き彫りにしました。「しんぶん赤旗」は十三日付が休刊のため十四日付一面トップで市民大会を報道しました。

 ところが全国紙は「朝日」が十三日付夕刊一面トップで取り上げただけで、「読売」「毎日」は同日付第二社会面で報道するといった扱いでした。これではとても国民の安全と主権にかかわる重大問題で、書くべきときに書いたということにはならないでしょう。

 ヘリ墜落ではアメリカいいなりの小泉政権の対応の鈍さが批判をあびましたが、マスメディアのこうした消極的な報道も、まさに同じ批判にさらされるべきものです。

 ことはこれにとどまりません。この九月は、アメリカでの「9・11同時多発テロ」から三周年を迎え、年末の米大統領選も迫り、アフガニスタンやイラクでのアメリカの軍事行動の是非があらためて問われています。アメリカのパウエル国務長官がイラク侵略の口実となった大量破壊兵器の疑惑を否定する議会証言をおこない(十三日)、アナン国連事務総長がイラク戦争を国連憲章に違反すると断じた(十五日)ことは世界の重大問題です。

 「しんぶん赤旗」はいずれも一面トップで報道しました(十五日付および十七日付、ともに最終版)。ところがこの重大発言でさえ、一面トップで報道した全国紙は、ただの一つもなかったのです。

 パウエル発言やアナン発言は、ブッシュ政権が始め小泉政権が支持した、イラク戦争の大義にかかわる重大なものです。各紙の報道ぶりは、全体として日本のマスメディアが、書くべきことを書く、ジャーナリズムとしての大切な役割を失っていることを示すといわれても仕方がないものです。

権力への批判報道しない

 全国紙をはじめ日本のマスメディアが、新井氏が求めたようなジャーナリズムのあるべき姿から程遠いことを端的に示しているのは、戦争に反対する動き、時の政権に反対する動きはほとんど伝えないことです。権力の監視役として、これは致命的な欠陥です。

 最近も、憲法九条を守ろうと「九条の会」が大阪で開いた講演会について、全国紙の大阪本社版でみても、「朝日」は第二社会面の短信扱いで、「毎日」は写真付きながら一段の見出しでしか報道しませんでした(十九日付)。それ以外の新聞と全国紙の東京本社版はまったくの黙殺です。

 あらかじめ用意した会場に入りきれず、会場の外にも多くの人があふれ、「どこからこれだけの人が」と驚かれるほどの出来事が新聞で一行も報道されないというのは、まったく異常です。

 憲法問題は取り上げても、改憲勢力の動きは大きく報道するが、憲法守れの運動はほとんど黙殺するというのでは、マスメディアが国民の立場に立って書くべきことを書いているとはとても評価できません。それは結果的に改憲策動に拍車をかけることになります。

 書くべきときに書くべきことを書くことを求めた新井氏は、二十数年前の著書(『ジャーナリズム』東洋経済新報社)で、「いまジャーナリズムがしなければならないのは、時代の正体を的確に摘出し、日本はどのような方向に進みつつあるのか、を正しく民衆に提示すること」であり、そのためには「なぜ」と「どうなるか」「どうすべきか」の報道が大切であると書きました。

 いらい四半世紀を経てこのことばが色あせるどころかますます重みを増しているところに、日本のマスメディアがおちいった深刻な現実があります。(宮坂一男)



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