日本共産党

2004年9月4日(土)「しんぶん赤旗」

どう見る ダイエー再建問題

再生機構活用めぐり対立

自主路線でも大リストラを促進


 一兆円超の負債を抱える大手スーパー、ダイエーの経営再建問題が大詰めを迎えています。再建方法をめぐり、ダイエー側と、UFJなど主力取引三銀行の主張に対立があるとされます。しかしどちらに決着するにしても事業縮小やリストラは避けられません。全国にある店舗は、従業員は、球団は、どうなるのでしょうか。

 矢守一英記者


処理を急ぐ

写真

総合スーパーとして展開するダイエーの店舗=東京・目黒区

 「あくまで自主再建です」。ダイエーの高木邦夫社長は強調します。先月末、ダイエーが主力取引銀行三行に対し示した再建計画案でも、改めて「自主再建路線」を貫く姿勢を示しました。

 計画では投資ファンドや事業スポンサーを公募して一千億円の資本を調達するほか、金融機関に四千億円程度の債務免除を要請、一兆円超に膨れ上がった有利子負債の大幅圧縮を図るというのが柱。またスポンサー企業の人材を経営陣に登用し経営を強化するとしています。

 これに対して取引銀行三行は、産業再生機構の活用を求めています。この背景には、三菱東京グループとUFJグループの経営統合にとって「お荷物」であるダイエー問題の処理を急ぎたいという思惑があり、不良債権早期処理でUFJ側に「圧力」をかける政府・金融庁のねらいも見え隠れします。

 産業再生機構は国によって設立された会社です。政府“お墨付き”の組織のもと三銀行が債権放棄(=借金棒引き)などで金融支援をする、そして新たなスポンサーを探して経営再建をゆだねようというものです。

 スポンサー企業には、世界最大手の小売業で西友をその傘下に収めたアメリカのウォルマートなども名乗りを上げるなど、外資系企業が参入をうかがいます。

解体へ危機感

 一方、ダイエー側は「バラバラに解体されてしまう」との危機感もあり、再生機構を活用しない「自主再建案」で対抗しようとしています。

 しかし、たとえ「自主再建案」であっても、事業縮小は避けられない状況です。

 全国の店舗数は二百六十六店、従業員数は三万九千三百四十二人(ことし二月末現在。アルバイト・パート労働者を含む)。関連会社は百一社におよびます。

 ダイエーの再建案によると、これまでの「総合スーパー路線」をやめて食品部門を強化し、不振の衣料品や日用品部門は大幅に縮小するというものです。

 五十店以上の不採算店舗を閉鎖するか、食品スーパーに転換するとしています。閉鎖店舗数は、今後三年間で二十から三十店を上積みする可能性もあるといいます。

 これまでにもダイエーは、不採算店舗など百店舗の閉鎖、グループ全体で七千人の削減を打ち出し、大リストラをすすめてきました。それをさらに促進しようというものです。

 岐阜市のJR岐阜駅近くの店舗は、二〇〇二年四月に閉鎖されました。市内では近鉄百貨店と並ぶ大型店の撤退です。パートやアルバイトで働いていた百十一人の職が奪われ、地域住民からは「買い物が不便になった」との声が上がりました。市の担当者は「中心市街地活性化の観点や、雇用が失われるという点でも地域経済への打撃になった」と指摘します。

球団の行方は

 ダイエー球団はどうなるのか。産業再生機構に送られることになれば、政府が間接的に球団を所有することにもなるとの見方があります。

 金子一義産業再生担当相も「『再生機構ホークス』だけはやらない。それだけは絶対だめだと機構にいってある」とのべ、再生機構が支援する際には、ダイエーによる球団保有は認めない考えを明らかにしています。

 ダイエーは、販売促進効果が期待できるなどとして球団保有を継続したい考えです。

 このため、銀行側からは、本拠地を福岡に残したまま売却する、との妥協案をダイエー側に示すとの動きも浮上しています。

 ダイエー問題は、一私企業の再建問題にとどまるものではありません。関連企業も含めた数多くの労働者の雇用や地域経済に大きな影響を及ぼす問題だけに、その行方からは目が離せません。


ダイエー問題の経過

 ダイエーが株式上場以来初めて決算で赤字に転落したのは1998年です。危機に陥った要因の一つは、「低価格・多店舗展開」を旗印に、多額の借金を重ねながら、過剰に店舗を増やしたことにあるといえます。

 加えて関連会社のカード事業の行き詰まりも経営悪化に拍車をかけました。その結果、ピーク時には2兆4000億円もの負債を抱えるまでになりました。

 これまでダイエーに対しては、01年と02年の過去2回、債権放棄や優先株の引き受けなどの金融支援が講じられてきました。同時に、店舗撤退や従業員削減などのリストラが進められる中で負債は1兆円に減りましたが、ことし8月の売上高は前年同月比で約6%減るなど、経営は依然、低迷を続けています。


カット

 産業再生機構 経営困難な企業の債権を銀行から買い取り、企業「再生」を図るために設置された株式会社。昨年成立した産業再生機構法に基づき発足しました。債権の買い取り後は、借金棒引きやリストラで身軽にした上で企業を民間に売却し、事業の「再生」を図ろうとするもの。債権の買い取り資金には十兆円の政府保証がつけられ、損失が出れば国民の税金で穴埋めする仕組みです。UFJ銀行などダイエーの主力取引銀行は、この機構を活用した「再建」を進めようとしています。



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