日本共産党

2004年9月2日(木)「しんぶん赤旗」

韓国が歴史問題憂う

わい曲教科書採択を批判

05年「日韓友情の年」前に


 一日、ソウルで行われた韓国の潘基文・外交通商相の定例記者会見で、東京都教育委員会が「新しい歴史教科書をつくる会」主導の歴史わい曲教科書(扶桑社刊)を採択したことに関し、日本人記者から「どの国の教科書も自国中心的だ」「韓国が政府として批判することは妥当なのか」と質問が飛びました。

 潘氏は「社会的な物事や主観は個人や国ごとに違うかもしれないが、歴史的事実については真理は一つだ。真実、真理が主観的解釈によって記述されることがわい曲だ」と明言。日本政府に「過去を直視する」よう求め、「済州島での韓日首脳会談(七月二十一日)で、韓日関係を未来志向的にしようと確認したことに留意する必要がある」と指摘しました。

不信あらわに

 日本と韓国の国交正常化四十周年となる来年は、両国政府が決めた「日韓友情の年」。韓国から韓日友好議員連盟(会長、文喜相議員=与党「開かれたウリ党」)の代表団が八月三十日に来日し、東京都内で自民党、民主党幹部や日韓友好議員連盟(会長=森喜朗前首相)と会合しました。韓国メディアによると、「友情の年」の行事を話し合う席だった会合で、韓国側議員は不信をあらわにしたといいます。

 安倍晋三自民党幹事長は、教科書採択に憂慮を表明した韓国側に対し、「歴史的事実の誤りがない限り、教科書は検定(合格)になる」と開き直り、小泉純一郎首相の靖国神社参拝についても、「戦争を起こさないという決意を確かにするもの」だと強弁しました。

 これに対し、韓国代表団長の文議員は「小事に目がくらみ大事を失うべきではない」と批判したといいます。

 安倍幹事長は三十一日、与党代表として訪韓しウリ党の李富栄議長と会談。李議長が「歴史に対する真剣な解釈があってこそ未来志向的な関係に進める」と迫ったのに対し、「歴史問題については誤解があるようだ」と語り、依然として真剣さを見せませんでした。

日本側の約束

 日韓両国は一九九八年の首脳会談で、初めて植民地支配に対する謝罪を共同文書(日韓パートナーシップ宣言)に明記。宣言は「若い世代が歴史への認識を深めることが重要である」と、歴史教育にも言及しました。

 二〇〇一年には、日本の文部科学省が「つくる会」の教科書を検定合格させたことに韓国で強い批判が起きたことを受け、同年十月に日韓両国政府の合意により両国に「歴史共同研究委員会」が発足しました。

 植民地支配を含む歴史認識の相互理解を促進することが目的の同委員会の任期は〇五年まで。この「日韓友情の年」までに、侵略と植民地支配の過ちを直視した研究成果を出すことは、日本側の約束です。

 韓国側委員会(委員長=趙東杰・国民大名誉教授)は八月二十六日、「つくる会」教科書の採択について声明を発表し、「二〇〇一年の韓日両国首脳の合意にもとづいて学術研究を推進している両国の共同研究に重大な障害となる」と懸念、「今回の件は韓日両国の歴史に対する正しい理解を妨げる極めて遺憾な事態」だと批判しました。

 有力紙・東亜日報の二十八日付社説は、歴史わい曲教科書の採択は「右翼団体や自治体の暴走ではなく、日本を率いる主導勢力のゆがんだ歴史観の産物だ」として、「日本が本当に国連安保理で世界のために貢献する意思があるなら、まず歴史の過ちを清算すべきだ」と主張しました。

 面川誠記者


 扶桑社教科書の歴史わい曲 「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した中学生用の歴史教科書。日本による一八七六年以降の近代朝鮮への介入を「近代化を助けるため」、韓国併合(一九一〇年)を「日本の安定と満州の権益を防衛するため」と正当化。日本軍「慰安婦」の存在を一切記述しないなど、侵略と植民地支配への反省が欠如しています。韓国政府は二〇〇一年五月に三十五項目にわたる修正を要求し、検定のやり直しを求めましたが、日本政府はこれを拒否しました。



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