日本共産党

2004年8月26日(木)「しんぶん赤旗」

自分のせい? 雇用―若者の模索(3)

就労支援システムで


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雇用・能力開発機構本部が入ったビル=横浜市

 政府の「若者就労支援策」の目玉の一つが、今年四月にスタートした「日本版デュアルシステム」(実務・教育連結型人材育成システム)です。「週三―四日は企業に通い、残りの日は職業学校で学ぶ」というドイツの制度を参考にしたもので、学校での講習(座学と呼ぶ)と企業での実習を組み合わせた訓練を通じて「若年者を一人前の職業人に育てる」ことを目的としています。対象は、三十五歳未満の学卒未就職者、無業者、フリーターなどです。

企業で実習

 「予想より順調なすべり出しです」――実施主体である雇用・能力開発機構(厚生労働省所管の独立行政法人)民間訓練支援課課長補佐の三浦健司さんは語ります。初年度は約二万五千人を訓練する目標ですが、六月末現在で八千三百四十人分、四百七十三コースが開講し、六千八百二十六人が訓練を開始しているといいます。

 四月から始まっているのは「委託訓練活用型」とよばれるもの。従来からあった、三カ月の座学のみの委託訓練(民間の専門学校・専修学校に委託した教育訓練)に、二カ月程度の企業実習を組み合わせたものです。実習先となる企業は、それぞれの専門・専修学校が開拓します。介護、営業、パソコン、一般事務、経理など、製造業以外の業種が多いといいます。

 委託訓練活用型に関しては、受講料は無料です(教科書代のみ自己負担)。受講には、ハローワークからの受講指示・推薦が必要です。

 これまでのところ、「仕事の現実の厳しさを感じられた」(訓練生)「人材を見極めることができる」(実習受け入れ先の企業)などの声が寄せられています。

 まだ全日程を終えたコースはなく、実際に常用雇用に結びつくかは未知数です。また、実習中は賃金は出ませんが、ただ働きでよいのか。短期間とはいえ、能力を発揮して企業の活動に貢献した場合、今後問題となってきます。

会話が課題

 意外だったのは、委託訓練活用型でとくに重視しているのが、実践的な知識や技術以上に、社会人としてのマナーを身につけることだ、という点でした。

 「職場の人間関係は選べない。まず会話が成立しないことにはダメですが、そういうところでつまっている若者も多い」と三浦さん。訓練生が座学で社会人としての心得を教育され、実習先の企業にスムーズに受け入れられることを、メリットとして強調しました。

 若者のマナーの低さに就職難の原因があるわけではありません。しかし、話を聞きながら、企業の面接で落とされ続けて自信をなくし、就職活動を中断してしまったある青年の姿が頭をよぎりました。「自分が人と話をするのが下手だから…」と自分を責めていた彼のように、人間関係への苦手意識から就職活動につまずいている人が、たくさん生まれているのは確かです。

 厳しい雇用・就職状況が多くの若者を追いつめていることが、デュアルシステムの訓練内容にも影を落としているということでしょうか。(つづく)


 今年10月からは、各都道府県の職業能力開発促進センターを拠点にした「普通課程活用型」、職業能力開発大学校を拠点にした「専門課程活用型」のデュアルシステムもスタートします。電気・電子、情報・通信、機械などの分野が中心で、内容も専門的です。期間は1―2年。授業料も11万―38万円程度かかります。



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