日本共産党

2004年8月19日(木)「しんぶん赤旗」

財界

強める政治介入(上)

消費税増税

07年度に向けた野望


 財界は、昨年の総選挙と今夏の参院選挙の二つの国政選挙が終わったこの時期が「絶好のチャンスだ」として、政治への圧力を一段と強めています。財界戦略の足跡を追いました。

 金子豊弘記者


 参院選挙が終わって間もない七月三十日。首相官邸では、消費税増税を含めた税と社会保険料負担の見直しを議論する「社会保障の在り方に関する懇談会」(官房長官の私的懇談会)の初会合が開かれました。

 二〇〇七年度までに消費税率を10%に引き上げることを提言している日本経団連の西室泰三副会長(東芝会長)は、同懇談会の一員です。西室副会長はこの懇談会に「大きな期待を寄せている」といいます。

首相訪ね懇談

 それもそのはずです。それに先立つ三カ月前の四月二十六日。日本経団連の奥田碩会長(トヨタ自動車会長)が首相官邸に小泉純一郎首相を訪ねた際、社会保障問題を検討するための協議会の設置を求めていたからです。小泉首相はその場で「検討する」と応じていました。

 年末までの論点整理へ向け具体的な議論はこれからです。しかし、初会合が開かれる前日の七月二十九日。細田博之官房長官は消費税増税について、「(小泉首相の任期中には上げないという)約束に反しない形で(引き上げの方針を決めることは)あり得る」と記者会見で述べました。

 これは、〇六年九月までの首相任期中は公約通り引き上げないものの、引き上げ方針の決定はあり得るとの認識を示した重大発言です。

 大企業の社会保障負担の軽減を求め、消費税増税で国民に負担を押し付けようというのが日本経団連の戦略です。

 日本経団連が描く消費税増税の「時間表」は、〇五年夏から本格的な準備に入り、〇六年春には増税法案を成立させて、〇七年度に実施するというもの。細田発言は、この「時間表」と一致します。

 日本経団連の消費税増税へ向けた舞台づくりは周到です。

 奥田会長が、具体的な増税率まで公言したのは二年前の秋のことでした。〇二年十月二十一日、東京都内のホテルで開かれた日米財界人会議の会場で、詰めかけた記者団に奥田会長は「消費税を毎年1%ずつ引き上げる。そうすれば(将来)16%でいける」ともらしました。

 その後、この「消費税率毎年引き上げ構想」は姿を消し、〇三年五月の税制提言では「遅くとも二〇〇七年度までに、地方消費税とあわせて10%まで引き上げることが不可欠」と、現行の「時間表」を明らかにしています。

 これを受けた政府税制調査会は翌六月の「中期答申」で、「(消費税を)二桁(けた)の税率に引き上げる必要もあろう」と明記したのです。

 当時、奥田会長は「(政府税調と)うちの主張と一緒になった」と自信に満ちた表情で語っていました。

今度は政党も

 それから一年の期間。今度は政党が動きました。自民・公明の「与党税制改革大綱」(〇三年十二月)は、「〇七年を目途に消費税を含む抜本的税制改革」をうたいました。

 民主党はさらに露骨です。今年三月に発表した年金「改革法案」では、〇七年度から年金目的消費税を導入して3%上乗せする、と具体的な税率まで示し、消費税増税を先導しています。

 この間、政党と財界の間に何があったのか。日本経団連は、財界が求める政策を忠実に実行する政党には企業献金をおこなうという新方式(政党評価の通信簿方式)で、企業献金「あっせん」を再開したのです。財界のカネに動かされる政治。これでは、「主権財界」になってしまいます。

 消費税増税を許さない国民のたたかいは、真の民主政治への道のりでもあります。

 (つづく)


 日本経団連 正式名称は日本経済団体連合会(略称・日本経団連)。財界総本山と呼ばれています。二〇〇二年五月に経団連(一九四六年発足)と日経連(四八年発足)が統合して誕生しました。会員数は千六百二十三社・団体等にのぼります。外資系企業九十一社を含む日本の代表的企業千三百六社、製造業やサービス業など主要な業種別全国団体百二十九団体、地方別経済団体四十七団体などから構成しています。



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