日本共産党

2004年8月15日(日)「しんぶん赤旗」

欧州 労働時間短縮に逆行

独・シーメンス社 週35→40時間が口火

労働組合は反撃へ


 労働時間短縮が大きな流れとなっていた欧州で、企業などが労働時間延長を狙う逆流が強まり、労働者、労働組合は警戒心を強めています。欧州労連(ETUC=三十五カ国七十七組合、六千万人)は加盟組合に対し詳細な情報を提供するとともに、秋からの反転攻勢に向けた構えをとりつつあります。(パリ=浅田信幸)

 「欧州ではより長い労働時間は必要ではない。必要なのはもっと賢く働くことだ」

 モンスクETUC書記長は三日、少なくない国で労働時間延長を公然と主張する声が企業の間に広がりつつあることに強く警告しました。

雇用確保と交換

 グローバル化や欧州連合(EU)の拡大のもとで、競争力強化を口実に、労働力の安い国への工場移転・大量解雇か労働条件切り下げかの二者択一を企業が労働者に迫るケースが増えていることを反映したものです。

 時間延長の口火を切ったのはドイツ電機大手のシーメンス社で、労使は六月下旬、ノルトライン・ウェストファーレン州の二つの携帯電話工場で雇用確保と引き換えに週三十五時間から週四十時間労働への延長で合意。続いてドイツ自動車産業のダイムラークライスラー社で非生産部門、研究開発部門での労働時間弾力化で妥結したほか、同じくドイツ自動車産業のフォルクスワーゲン、フランスのボッシュ(自動車部品・工具)の一部工場など、独仏で時間延長あるいは向こう何年かの賃上げ抑制が推し進められています。

180度の方針転換

 これまで欧州では、時短への取り組みが主流となっており、労働時間延長の問題がおおっぴらに提起されることはあまりありませんでした。ところが最近、経営者団体や政府が公然と主張するようになり、労組側は警戒を強めています。

 オランダではブリンクホルスト経済相が最近、「週四十時間が標準になるべきだ」との見解を表明。百八十度の方針転換だと注目されています。

 週三十五時間労働を法律で定めているフランスのシラク大統領は「三十五時間は社会的既得権」だとして、これを擁護するかのような姿勢の一方で、実施面でのいっそうの弾力化を示唆。さらに、経営者団体の仏企業運動(MEDEF)セイエール会長は「法定労働時間」という考え方自体を放棄すべきだと迫っています。

 仏経済紙レゼコーは「シーメンスがパンドラの箱を開けた」と報じました。

 こうした攻勢に対し、仏労働総同盟(CGT)は「もっと稼ぎを少なくして、もっと働け。いやなら解雇だ」という論理は「恐喝」だと反発。「企業利潤と株主への配当を守る一方で労働者の権利を弱めようという企業の恐喝を不法とすべきだ」と反撃に出ています。

 欧州全体で9・1%と高い失業率が続いている事実も問題です。ETUCは「労働時間の全般的延長は雇用問題を解決せず、むしろ悪化させる」と反論し、「労働時間短縮への権利を守るために反転攻勢を組織する」との決意を表明。九月に予定された欧州団体交渉調整委員会で具体的行動を検討するとしています。



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