日本共産党

2004年7月4日(日)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい 参院選特集 少子化問題

出生率1.29 少子化 どう克服

安心して産み、育てられる社会にすることが必要です


 女性が生涯に産む平均子ども数(合計特殊出生率)は一・二九。史上最低を更新しました。年金「改革」に関連し“情報隠し”として問題になりましたが、少子化克服は日本社会の将来にかかわる大問題でもあります。解決の方向はどこにあるのでしょうか。


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 政府はこの間、さまざまな「少子化対策」を打ち出していますが、歯止めがかかりません。それどころか、どれだけ子どもがほしいかという「理想の子ども数」(二・五六人)と「予定子ども数」(二・一三人)の差は広がっています(〇二年、出生動向基本調査)。

 もとより、子どもを産むかどうかは一人ひとり、夫婦の自由な選択にゆだねられる問題です。しかし、理想と現実がかけ離れている実態は、日本の政治、社会のあり方を問いかけています。

若者の低収入と雇用の不安定化

 保育問題に詳しい村山祐一鳥取大学教授は、「政府は、父親も子育て参加をとかスローガンだけかかげ、できないのは自己責任だという姿勢です。しかし私たちの調査でも、子育てできる働き方ではなく、日曜日いつも休める父親は五割を切っています。少子化は社会の元気をそぐ、社会のゆがみを反映した問題です」と指摘します。

 「一・二九」を明らかにした今回の調査では、二十歳代の女性の出産減少が顕著です(表1)。背景には若い層の急速な雇用の不安定化と低収入があります。

 今春、高校や大学を卒業して就職ができなかった若者は八万人余。大企業は六年間に若者の正社員を百八万人も減らしました。十五歳から三十四歳の層では、実に学生や主婦を除く五人に一人がフリーターです。

 UFJ総研の試算によれば、フリーターの平均年収は百六万円で正社員(三百八十七万円)の三分の一以下です。安定した経済的基盤なしに、自立して子どもを産み育てることはできません。

 一方、職場はリストラ人減らしで長時間・過密労働がまん延しています。子育て世代である二十歳代後半から三十歳代が労働時間が最も長く、三十歳代の男性の四人に一人が週六十時間以上も働いています。

 勢い、ほとんど一人で育児を担わなければならない母親のストレスは高まるばかりです。

 東京都内で三歳の子どもを育てながらパートで働く園田由香さん(25)=仮名=は「テレビ番組制作に携わる夫は、その日のうちに帰れば早い方。でも下請けなので給料は安く、二人目はほしいけど一人で手いっぱいです。せめて休日くらい親子三人ですごしたい」といいます。

“待機児ゼロ”も保育予算は削減

 国民に“痛み”を押しつける小泉内閣の「構造改革」が、子育て環境を貧しくしています。

 政府が応援するリストラで四百万人も正社員が減らされ、会社員世帯の年収は六年間で平均六十八万円も減りました。

 男性の育児休業取得率は0・33%にとどまり、第一子出産を機に七割の女性が仕事をやめています。

 小泉内閣は、保育所「待機児ゼロ作戦」をかかげますが、待機児は増加の一途。今年度の保育予算は三千四百五十六億円で前年度より千三百九十九億円も減らしました。四月からの国立大学法人化で、世界でも異常な日本の高学費がさらに進もうとしています。年金改悪はじめ社会保障の後退は、子育て不安に拍車をかけています。

 「理想の子ども数」をもてない理由のトップは「子育てや教育にお金がかかりすぎる」です。(〇二年、出生動向基本調査)


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どの子も健やかに育つ社会にしたい

日本共産党

家庭と両立できる働き方に

 子どもを産み育てるのが大変な社会になったのは、政治が国民のくらしを痛めつけ、個人の生活も家族の一員としての責任も無視した「働かせ方」を野放しにしてきたからです。日本共産党は、国民のくらしをささえ、人間らしい生活をとりもどす政治、経済、社会への転換こそ、少子化社会を克服する道と訴え、国民各層・団体と協力し、次の四つの対策にとりくんでいます。

 ▽長時間労働をなくし、家庭生活との両立ができる働き方にする。育児休業を男女とも取りやすく改善する。

 ▽若者に安定した仕事をつくる。正規雇用を拡充し、派遣・パートなどと一般労働者との均等待遇をはかる。

 ▽男女差別・格差をなくし、女性が働き続けられ、力を生かせる社会にする。

 ▽出産・育児と仕事の両立を応援し、すべての子どもが豊かな乳幼児期をおくれるようにする。


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自民・公明・民主

リストラを応援し不安定雇用を推進

 この参院選挙では各党とも少子化の流れを変えることや子育て支援をいっています。しかし、自民党・公明党や民主党は、最も肝心な子育てを難しくしている働き方の改善を図るどころか、正社員を不安定雇用に置き換え使い捨てる労働法制改悪を推進してきました(表2)。財界の二十一世紀経営戦略にそったものです。

 小泉内閣は「骨太の方針」第四弾でもこの流れをいっそう強めようとしています。厚労省の検討会議は、八時間労働制をはずす制度の導入を打ちだしています。際限ない長時間労働と雇用の不安定化を加速させ、少子化は進むばかりでしょう。


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上昇に転じた欧米諸国

スウェーデンは育休480日

 欧米諸国をみると、多くの国で出生率が上昇に転じ(表3)、女性の就業率が高く男女の賃金格差が少ない国ほど出生率が高くなっています。子育てに男性も女性もかかわれる家庭政策や社会保障が充実しているからです。

 例えばスウェーデンは、育児休業は子どもが八歳になるまで四百八十日(労働日)とれ、そのうち父親だけの日数は(パパ・クォータ)六十日、三百九十日は給与の80%保障です。四分の一日など柔軟に利用できます。

 男性の労働時間は週平均四十一・二時間です。(〇四年、内閣府調査)


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