日本共産党

2004年7月2日(金)「しんぶん赤旗」

参院選の論戦を追う

記者座談会


 参院選が公示されてから一週間余。年金、消費税、イラク、憲法など熱い焦点で、論戦の特徴はどうなっているのか、担当記者で話し合いました。



自民

 首相が言い訳に回った

写真

自衛隊のイラク多国籍軍参加問題や年金改悪法について言い訳を並べた自民党のパンフレット

  小泉首相を迎えた奈良、三重の街頭演説(六月二十六日)を取材して驚いた。「国民が辞めろといえば、私はすぐに辞めますよ」といい出した。選挙まっただ中に冗談でも「辞める」と口にするのは異常だ。

  首相は年金問題でも「いろいろご批判を浴びている」(六月二十九日、長野市)という言葉から演説を始めている。首相就任三年ではじめて言い訳に回ったという声がもっぱらだ。内閣支持率が急落したのも関係している。

  自民党の青木参院幹事長は年金問題で「野党は簡単に三十秒でいえる。われわれは説明するのに五分も十分もかかる」(六月二十七日、NHK討論)と嘆いているし、竹中金融相も年金改悪法について「まったく不十分だ」「止血しただけ」(六月二十九日、金沢市)と欠陥ぶりを認めていた。

  細田官房長官は、多国籍軍参加の問題でも「なかなか厳しい選挙だ。特に多国籍軍参加問題で、大きな誤解を生じたことが大きな影響があった」(六月三十日、記者会見)とのべていた。

 E しかし、本当の反省とは無縁だ。自民党は、多国籍軍参加と年金改悪法で『なぜ自民党は決断したのか』という言い訳パンフレットを作ったが、「年金破たんを防ぐ決断」「イラク支援活動を続ける決断」をしたと開き直っている。

  景気回復を追い風に「小泉改革」の実績を訴えようとした戦略も空回りしている感じを受ける。首相は「ようやく明るいきざしがでると、いつの間にか経済問題はなんの争点にもなっていない」(福岡市、六月二十八日)とぼやいていた。

  公示第一声から一貫して強調しているのは、「政局の安定」だ。「自民党をぶっ壊す」といってきた小泉節から百八十度の転換だ。守りに入ったという印象を語るジャーナリストもいた。


公明

 「安心」の「あ」もいえず

  昨年の総選挙から「年金に100年の安心」を大宣伝した公明党は、つい最近まで「年金改革は公明党がリード」と吹聴していた。しかし、公示後の演説を聞くと、「安心」の「あ」の字もいえなくなっている。

  冬柴幹事長は「われわれは人気が悪くなろうが泥をかぶろうが、年金問題をはっきりさせる」(六月二十九日、埼玉・川越市)と開き直っているが、最大の成果と売り込めなくなったうらみがにじみ出ている。

  多国籍軍問題でも、「マスコミが連日報じているが、大きな問題では別にありません」(神崎代表、六月二十六日、盛岡市)などといい、冬柴幹事長は、小泉首相が真っ先にブッシュ米大統領に約束したことも「けしからんという方がけしからん」(同前)とかばう始末だ。

  高知市の例だが、熱心な創価学会員が知人の共産党員に「年金改悪やイラク派兵での公明党のやり方に納得できないので、学会の会で、今度の選挙はやらないと言明した」と話したそうだ。各地でこんな話を聞く。

  それだけに、公明党・創価学会は“反共バネ”で組織をフル活動させようと躍起だ。当初は民主党批判に力を割いていたが、最近では児童手当や年金問題でいいがかりとしかいいようのない「反共攻撃」を展開している。


民主

 自民政治変えぬ「対決」

  民主党は、「ストップ・ザ・小泉」「ストップ・ザ・自公政権」(岡田代表)と、対決色を前面に押し出してきたが…。

  「対決」の中身をよくみれば、自民党政治の土台を変えるという立場ではない。たとえば、年金、社会保障問題では、「消費税をどう位置付けるか、言わないのは無責任だ」(六月二十七日、民放テレビ)という攻め方だ。

  年金財源問題では、自民党議員からは「右のポケット(保険料)から国民は出すか、左のポケット(消費税)から出すか、それだけの話だ」といわれていた。同じ負担増の土俵だから、そういう攻め方しかないのだろう。

  だから、与党からは「民主党は3%(増税)というけれど、それですむとは思っていない」(小泉首相)と切り返されたりするのだ。

  民主党が年金改悪法案の衆院通過を前提に自民・公明と結んだ「三党合意」についても、あいまいな態度をとっていることが、与党の攻撃材料にされている。

 E 「党と党の約束を破る、こういう民主党が国民との約束を守ることができるんでしょうか」(六月二十九日、福井市、安倍幹事長)というわけだね。

  最近では、岡田氏自身「三党合意」で「自らの不明を恥じる。これは危ないかな、だまされるかなという気持ちはあった」(六月二十七日、東京・銀座)といっている。

  多国籍軍参加問題でも、四月末にアナン国連事務総長に「検討可能」と表明していたこととの矛盾をつかれている。安倍幹事長などは「彼らは、選挙に勝ちたいがために国連との約束を破った」(同前)と非難しているよ。

  こういう論戦を通じて、「二大政党」の正体が総選挙のときと比べ、ずっとみえやすくなっている感じだ。


共産

 対決軸すっきりと共感

  共産党の論戦はどうかな。

  印象的なのは、年金問題でも多国籍軍参加問題でも、政治のゆがみを土台から変えるという共産党の訴えが新鮮な感動を呼んでいることだ。

  志位委員長が出演したラジオ番組で、経済アナリストの森永卓郎氏が年金財源の話まで突っ込んで聞いて「きわめてすっきりした議論だ」と感想を語っていた。

  政見放送の収録を聞いていた全国紙の記者は、「公共事業に四十兆円、社会保障に二十五兆円」という逆立ち財政をただすという話を聞いて、「はじめて聞いたが、わかりやすい。勉強になった」と話していたよ。

 E 「政治の土台」まで掘り下げると、なぜ自民党や民主党が国民負担増しか考えないのかがよくわかる。逆立ち財政や大企業・財界の負担増につながることには手をつけないからね。

  多国籍軍参加や憲法「改正」問題でも、根源にある日米安保条約の廃棄まで主張し、憲法擁護で首尾一貫しているのは共産党だけだ。

  そうした訴えが届いたところでは、「民主党は自民党と同じに見える」という思いと重なって、「共産党に入れよう」となるんだね。

  ある著名な評論家はイラク問題、憲法問題などをあげて、「客観的には共産党支持の大動員ができるタイミングだ」とのべていた。問題は、共産党の元気な姿をどれだけ多くの人に見てもらえるか、どれだけ多くの人に共産党支持のお願いが広げられるか、これからの奮闘にかかっているね。


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