日本共産党

2004年6月30日(水)「しんぶん赤旗」

多国籍軍への自衛隊参加

この無法の共犯者に

米軍の爆撃で家族全員が粉々 民家から結婚指輪まで強奪


 国際法を踏みにじって戦争を開始し、イラク占領を続けてきた米軍は、数々の残虐・無法行為を重ねてきました。イラクへの主権移譲で「多国籍軍」と名前が変わっても、駐留米軍の実態は変わりません。多国籍軍への自衛隊の参加は、日本が米軍の無法行為の共犯者になることを意味します。

岡崎衆史・伴安弘・坂口明記者

イラク人の反発強まる

 「米軍は女性、老人、子どもを殺害した。ある一家が車で脱出を図った時、戦闘機が飛んできて爆撃された。夫と妻、七人の子どもの全員が粉々になった」―米軍が四月はじめから一カ月間にわたって包囲し、住民約七百人を虐殺したファルージャ(バグダッド西方約五十キロ)の惨状を、アラブ首長国連邦のアルカリージ紙(四月二十六日付)は報じました。

 ファルージャでの無差別攻撃は、米民間人四人が殺されたことへの報復でした。米軍はテロリスト掃討作戦だと正当化しています。しかし、その後の軍事行動をみても、この理屈は通りません。

 「この残がいを見てくれ。これが(テロリストの)ザルカウィの隠れ家だというのか」―二十五日の米軍による空爆で破壊された家で、家主のアブド・アルアドヒムさんがカタールの衛星テレビ・アルジャジーラの特派員に訴えました。

 米軍は国際テロ組織アルカイダの幹部が潜伏しているとして、停戦合意したはずのファルージャで今月十九日以来、三度も空爆。しかしそのたびに、現地の警察や治安責任者は、テロリストの存在を否定しています。

 ファルージャ警察のサダル署長は「私たちに何の断りもなく行われた(二十五日の)爆撃で一家が皆殺しにされた」と非難しました。これらの空爆で女性や子どもなど六十人が死んでいます。

 「対テロ戦争」の名で米軍の無法がまかり通っています。掃討作戦で押し入った先の民家の家具を破壊し、現金や宝石、結婚指輪までも奪う米兵の行為さえ、「対テロ作戦」の看板で正当化されています。イラク人の死者は最大で一万八千人近くにも達しています。

 イラクの米占領当局「連合国暫定当局」(CPA)が五月に実施した世論調査で、米軍を「占領軍」とみる人は92%にのぼりました。

多国籍軍は米軍が指揮

 八日採択の国連安保理決議一五四六で米主導の占領軍である「連合軍」は多国籍軍に変わりましたが、イラク国民を抑圧してきた米軍の実態は変わるのでしょうか。

 「ファルージャなどでの(米軍の)活動は…七月一日(主権移譲発動)以降の状況を先取りするものになる」。パウエル米国務長官の五月十四日の発言です。主権移譲後も米軍はファルージャ虐殺と同様の軍事行動を行うとの宣言です。

 安保理決議は多国籍軍の「統一した指揮」をうたっています。ロドマン米国防次官補は十六日の下院軍事委員会公聴会で「統一された指揮権は現状では米国の指揮を意味する」と述べています。

 主権が移譲されるイラク側は、米軍が指揮をとる多国籍軍の軍事作戦に「ノー」といえるのか。安保理決議は「多国籍軍が、イラクにおける安全と安定を維持するのに役立つあらゆる必要な措置をとる権限をもつ」と述べています。米軍の行動に対し、イラク側は拒否権がありません。

 安保理決議の付属文書として承認された暫定政府のアラウィ首相とパウエル長官の安保理あての二つの書簡は、多国籍軍とイラクとの「戦略的パートナーシップ(協力関係)」をうたい、事実上、暫定政府が米軍に協力することを宣言。これまで同様、「反乱者」に対する掃討作戦を行うと宣言しています。

 しかも、アラウィ首相が米中央情報局(CIA)と結びつきの強い人物であるのをはじめ、イラク暫定政府は米国が任命した旧統治評議会メンバーから横すべりした人々で占められています。

日本の説明は米も否定

 イラク多国籍軍への自衛隊参加を強行しようとする勢力は、「イラク多国籍軍は武力行使を主とする湾岸戦争型の多国籍軍とは違い、復興支援型だ」と宣伝しています。しかしイラク多国籍軍が「武力行使を伴う多国籍軍」であることは、米軍も認めています。

 イラクへの主権移譲に伴い、イラク駐留米軍の任務が、武力弾圧型から、暫定政府を守る防御型の活動に移行するとの見方は、国際的にも出ていました。ところが、多国籍軍司令官に就任するケーシー米陸軍副参謀総長自身が二十四日の上院軍事委員会の公聴会で、「攻撃的な考え方から防御的な考え方への移行という話は聞いたことがない。攻撃的な考え方を維持しなければならないというのが私の主要関心事だ」と証言しました。

 同氏は、ファルージャ攻撃作戦を例に引き、多国籍軍として「引き続き、反政府派を追跡する情報活動を発展させ、精密な武力行使をする」と述べました。看板を塗り替えても、駐留米軍の占領軍としての本質に変化がないと、多国籍軍司令官自らが言明したのです。

 政府は「自衛隊は多国籍軍に参加はするが、その指揮下には入らない」と釈明しています。これも米軍当局者が否定しています。

 イラク駐留米軍のキミット副司令官は二十一日のバグダッドでの記者会見で、多国籍軍に参加する自衛隊も多国籍軍司令官の「作戦上の統制」下に置かれると述べ、自衛隊が多国籍軍の指揮を受けることを認めました。

 安保理決議一五四六は、「占領終結を歓迎」するとしています。しかし、無法な侵略戦争を強行し、残虐行為を繰り返す米軍が居座る限り、「占領終結」はありません。米軍居座りに加担する自衛隊の多国籍軍参加は、イラク国民の主権回復にとっても有害です。

 小泉首相はイラク暫定政府から自衛隊駐留を要請されたと主張しています。しかし、イラク国民は暫定政府への支持を留保しており、CPAの調査で「米軍の即時撤退」または「正式政府後に撤退」を求める声は合わせて86%に達しています。


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