日本共産党

2004年6月26日(土)「しんぶん赤旗」

日本共産党はこういう政党です

国民の力で、二十一世紀の希望ある日本への道を切り開こう

埼玉・大宮での不破議長の第一声


 日本共産党の不破哲三議長は二十四日夕、埼玉・JR大宮駅西口前で参院選の第一声にたちました。その大要を紹介します。


 みなさん、こんばんは。日本共産党の不破哲三でございます。

 いよいよ参議院選挙が始まりました。

 選挙のたびに、埼玉のみなさんとは、この大宮の駅前でお会いすることが恒例になっておりますけれども、きょうは初日から、応援に駆けつけてまいりました。どうか、よろしくお願いいたします。(拍手)

 今度の選挙は、何よりも政党を選ぶ選挙であります。日本の政党の中で、どの政党が力を伸ばしたら、今の政治のよどんだ状況が打開できるのか、国民の暮らしの支えになるのか、そして平和の見通しが開けるのか、そういう問題を有権者のみなさんに見きわめていただくことが一番大事だと思います。

 私はきょうは、そのご参考として、日本共産党がどんな政党なのか、何をやろうとしているのか、こういうことについて、訴えさせていただきたいと思います。

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訴える不破哲三議長=24日、さいたま市大宮駅前

本当の改革に取り組む政党

年金改革――政治の土台を変えてこそ、安心できる年金制度がつくれる

 まず第一に申し上げたいのは、日本共産党が、国民の立場で本当の改革を実行できる政党だということであります。言葉の上だけの「改革」ならだれでもいえます。しかしみなさん、改革というなら、良いことがあると思うのが普通ですが、今度の年金改革は、政府からは、悪いことずくめの「改革」しか提案されてきませんでした。「改革」にもいろいろあるということが、はっきりわかったんじゃないでしょうか。

なぜ日本の年金は貧しいのか――社会保障の財政の基盤があまりにも薄い

 みなさん、もともと日本の年金の制度は、同じ資本主義の国の中でも、たとえばヨーロッパにくらべると、うんと悪いのです。私どもは「しんぶん赤旗」をつくっておりまして、世界中に特派員を送っております。ヨーロッパから帰ってきた特派員がいっておりました。“フランスでは、年金問題というのは、大変楽しい話題になる。自分の子どもが通っている幼稚園の先生に会ったら、「私、まもなく年金生活に入るのよ」とにこにこしていた。しかし日本に来ると、年金というのはつらい話題にしかならない”

 みなさん、同じ資本主義の国なのに、なぜこれだけの違いが生まれるのか、私はここを考えなきゃいけないと思います。

 日本では、政治がゆがんでいるために、年金など社会保障の財政の基盤があまりにも薄いのです。薄い理由が二つあります。

 一つは、ヨーロッパではどこでも、税金を使うといえば、社会保障が第一です。ところが日本では、公共事業がずっと第一なんです。国と地方の財政から公共事業に注ぎ込まれるお金は年間四十兆円。社会保障に使うお金は二十五兆円。公共事業の方が社会保障を大きく上回っています。これが、私どもが「逆立ち財政」と呼んでいるものです。こんな国は、ヨーロッパにはどこにもありません。

 たとえば、社会保障に使う税金の総額を経済の規模に引き直してくらべてみますと、日本の財政での使い方は、だいたいヨーロッパの二分の一から三分の一です。この「逆立ち」をただせば、税金を増やさないでも、相当大きな財源を社会保障に回すことができる。ここに、年金など社会保障の基盤が薄い第一の理由があります。

 二番目は何か。みなさん、社会の中で一番負担能力を持っているのは、日本でもやっぱり大企業でしょう。ところが、税金や社会保障の負担で大企業が担っている割合は、ヨーロッパにくらべると、日本はとりわけ軽い。日本の企業の負担率はイギリスの七割五分、ドイツの六割七分、フランスの五割二分というところです。ここもヨーロッパ並みの負担をしてもらえれば、新しい財源が、負担能力のあるところから、出してもらえるようになる。これがたださなければならない日本の仕組みの二番目の欠陥であります。

日本共産党の提案――国民に負担をかけないで、年金を抜本的に充実させる

 これらの欠陥をきちんとただせば、国民のみなさんに大きな新しい負担をかけないでも、いまの貧しい年金をよりよく充実する改革案がりっぱにできるのです。

 それが、日本共産党が提案している最低保障年金を柱にした年金改革案です。

 いろいろな理由から、年金制度からはずれてしまっている、いわゆる“無年金”の方がたをふくめて、最低五万円の年金を保障する。その上にみなさん方がいま支払っている掛け金の額に応じて加算分を積み上げます。数字を上げて説明しますと、いま国民年金が四万円という方なら、最低保障の五万円の上に、いまの年金の半分の二万円を積み上げますから七万円になる。いま六万円という方なら、五万円の基礎の上に半分の三万円を積み上げて八万円になる。こうして、国民年金を受けている方は、どなたでもそれだけの増額になるという改革です。

 厚生年金や共済年金をもらっている方の場合は少ししくみは違うのですが、国民・厚生・共済の各年金を合わせて全体の八割の方は今よりも増額になるし、もらえる年金の額が下がる方は一人も出ません。

 みなさん、こうして、年金の内容をより良くし、充実させる改革案を、日本共産党は提案しています。

 そんな良いことをやるとしたら、ばく大な財源がいって、国民の負担が途方もなく増えるのではないか、こういうことを、テレビ討論会などで、自民党や民主党の人はよくいいます。しかし、みなさん、私たちはさきほどいいましたように、ヨーロッパなどにくらべて、大企業の勝手放題で日本の経済の仕組みがゆがんでいるところをただそうというのです。税金の主役を社会保障が担うようになれば、それだけでも社会保障の財源の大幅な増額ができます。大企業に、その力に応じたヨーロッパ並みの負担をしてもらうことをやれば、国民のみなさんに新たな重い負担をかけることなしに、すべての方の年金を充実させる新しい改革ができる。これだけの力が日本の経済にはあるのであります。

政府(自・公)も民主党も、「負担増・給付減」は共通です

 ほかの党は、そこが違うのです。みなさんがご存じのように、政府が出した自民党・公明党の案は、年金の給付がこれからどんどん下がります。みなさんが払う掛け金はこれからどんどん上がります。このことは、政府自身がタイコ判をおしていることです。掛け金の値上げによる負担は、最初の年は総額七千億円、次の年は一兆四千億円。その次は二兆一千億円、という調子で、これから十四年間増え続けます。結局、十四年間で七十兆七千億円もの新しいお金を、みなさんから取り立てようというのが、自民党・公明党の改悪法です。それで受けとる年金が下がってゆくというのですから、まさに国民は踏んだりけったりではありませんか。(「そうだ」「はんたーい」の声)

 では、野党第一党の民主党の提案はどうか。「負担増・給付減」は政府案と共通で、掛け金は上げないといいますが、その代わり、その分を消費税で取り立てようじゃないか。消費税の税率を3%上げる。年間七兆二千億円もの増税です。この増税を三年後から始めようということですから、政府案との比較のために、今から十四年間の増税分を勘定すると、自民党は七十兆七千億円でしたが、民主党案での消費税増税の総額は、さらに大きくて、七十九兆二千億円もの取り立てになります。

 消費税というのは、弱い者いじめで有名な税金で、今でもみんな、ひどい目にあっています。社会保障というのは、弱い者を助けることが一番大切な柱です。その社会保障のためといって、税金での弱い者いじめをもっとひどくする、そんなとんでもない話はないじゃありませんか。(拍手。「はんたーい」の声)

 しかも、このやり方でゆけば、大企業の負担は政府案よりも軽くなるのです。掛け金を上げる場合には、厚生年金の掛け金を企業も負担しますから、七十兆七千億円のうち企業負担分がだいたい三十兆円ぐらいになります。ところが消費税なら、大企業は負担しないですみます。全部国民負担になるわけで、だから、経団連・財界も民主党案大歓迎ということになるわけであります。

 みなさん、自民党や公明党や民主党からはなぜそんな国民いじめの案しか出てこないのか。討論会では、「だれがやっても同じだ」ということを、自民党の代表がよくいいます。国会でも、自民党のある議員が、「うちの案と民主党の案の違いは、国民からお金を取り立てるのに、右のポケットからとるか、左のポケットからとるかの違いだけだ」といいました。

“大企業が主役”という自民党政治の土台に手をつけるかどうか

 なぜ、ほかの政党はこういうことになるのか。それは、今の日本の経済が、同じ資本主義国でも、ヨーロッパにくらべて、大企業・財界に有利な方向に大きくゆがんでいる、そのために社会保障の財政の基盤がたいへん薄くなっている、その大もとをただそうとしないから、どっちに転んでも、国民がいじめられる「改革」案しかでてこないのです。みなさん、ここに、日本共産党の年金改革案と自民党、公明党や民主党の「改革」案との違い、大企業から一円の政治献金もうけず、大企業・財界とのあいだに何の腐れ縁もない日本共産党と、大企業・財界としっかり結びつき、企業献金をうけているその他の政党との一番大きな違いがあるのです。

 そんな改革をしたら、大企業のもうけがなくなって困るのではないかと、心配する方があるかもしれません。しかし、いまは、世界化、「グローバル化」の時代でしょう。日本の大企業も、みんなヨーロッパに行って、子会社や、工場をつくって仕事をしています。そのときには、ヨーロッパ並みの負担をきちんと背負い、ヨーロッパのルールにきちんと従って仕事をやり、大きなもうけを上げているではありませんか。なぜ、同じことが、おひざ元の日本でできないのか。日本の政治が、大企業にやるべきことをやらせる勇気と立場がない、そこにみなさん、ヨーロッパと日本との大きな違いがあります。この違いを、国民の力でただそうではありませんか。(大きな拍手)

 新しい国会では、この悪法を強行した自民・公明に審判を下し、あの改悪年金法をご破算にして、あらためて、いま私がお話しした大もとの問題を含めて、大きな国民的討論をやり、これなら国民が希望がもてる、これなら安心ができる、そういうまともな年金改革の方針を、みんなでつくりだそうではありませんか。(大きな拍手)

自衛隊派兵と憲法改悪――“アメリカいいなり”政治がここまで来た 

 外交の問題ではどうでしょうか。

 みなさん、よくご存じのように、ここでは、“アメリカいいなり”という、今日のひどい状態からどうやって抜け出すかが、いま、日本の政治の一番の問題であります。それが、もっとも極端に表れたのが、イラク問題です。

戦争への態度も自衛隊派兵も“アメリカいいなり”

 アメリカのブッシュ大統領が無法な戦争を始めたとき、小泉首相は「同盟国のアメリカがやった戦争だから、賛成して当たり前だ」といって、賛成しました。文字通り“アメリカいいなり”でした。それで、アメリカが自衛隊の派遣を求めてきたときにも、「同盟国アメリカが求めているんだから、出すのは当たり前だ」といって、自衛隊をイラクに派遣してしまいました。日本の航空自衛隊がイラクで活動を始めたとき、在日米軍のホームページはこう書きました。日本の航空兵が戦闘地域に配備されるのは「第二次世界大戦後初めてだ」。小泉首相は、「非戦闘地域」だとか、いろいろごまかしをやりますが、本家のアメリカの方は、ごまかしの言葉ぬきに、日本の自衛隊は、「戦闘地域に配備された」とはっきりいうのです。

 そういうことをやってのけたのは、歴代自民党内閣のなかでも小泉内閣が初めてであります。

「多国籍軍」参加――まともな説明もできないままで強行 

 そのうえに、今度はさらに、とんでもないことが起きました。イラクの様子が変わって「多国籍軍」という軍隊が編成されるようになった。そうしたら、まだ国会開会中だったのに、小泉首相は国民にも報告しない、国会にも相談しないまま、ブッシュ大統領に「日本は参加します」とすぐ約束してしまったのです。

 ところが、多国籍軍というのは、その名前の通り、はっきりした軍隊ですから、自民党政府も、「多国籍軍は武力行使を必ず伴うから、いまの憲法のもとでは自衛隊は参加できない」ということを、政府の公式見解としてくりかえし発表してきた問題なのです。ところが小泉首相は、自分たちがこれまでいってきたことを全部投げ捨てて、ブッシュに頼まれたらただちに「参加する」の約束です。

 多国籍軍の中心は米軍ですから、日本がその一員となれば、当然、この米軍の指揮下に入ることになります。日本の自衛隊が、イラクであの乱暴ろうぜきをやっている米軍指揮下の部隊に変わってしまうのです。

 そのことが問題になると、政府は、“多国籍軍に入っても、その指揮は受けない”ということをアメリカ、イギリスの政府との間で確認しあっているんだといい出しました。しかし、みなさん、その了解をいつどこでとったのかを追及すると、驚くじゃありませんか。こんな重大問題についての話なのに、日本の政府のまともな代表と、アメリカ、イギリスの政府のまともな代表が会談したわけではない。日本側はロンドンとワシントンにいる公使の一人、その人がアメリカとイギリスのさる「高官」と会って確認しあったということです。さる「高官」とは何者だと国会でいくら聞いても、いまだに名前が出てきません。名無しの権兵衛と名無しの権兵衛が交渉して、これが大問題をとりきめた。そんなことが通用するとしたら、日本では民主主義も道理もない国になってしまうじゃないですか。(「そうだ」、拍手)

 そういうでたらめをやって、あくまでアメリカいいなりを通す。私は、今度の選挙の審判をふまえて、こういうことをやめさせ、イラクからの自衛隊撤退に道を開かないと、日本は大変危険な立場に立たされると考えています。

アメリカの次の注文――憲法を変えて「戦争のできる」海外派兵を

 しかし、みなさん、アメリカの注文はそこに止まってはいないんです。日本をせっついて、とうとう自衛隊をインド洋に引っ張り出し、つづいてイラクに引っ張り出すところまでやってきた。しかし、いくらイラクに自衛隊がいっても、日本には憲法九条がありますから、この自衛隊に戦争させるとは小泉首相でもいえない。アメリカでも注文できないんです。ですから、“そこまできたんだから、つぎの海外派兵のときには、戦争ができる状態にして派兵してほしい”、これがアメリカの次の注文です。それが、みなさん、憲法九条をやめる憲法改定、憲法改悪の話なんです。

 去年の総選挙のときに、民主党と自民党が、どっちが最初に「憲法改定」の旗をあげるか、競争しあったことを、覚えておられるでしょう。こうして憲法問題が、にわかに風雲急になりました。その根本は何か。アメリカの注文にこたえて、日本の自衛隊を本格的に戦争ができる軍隊として海外に送り出す。その条件を憲法九条をやめることでつくる。そういうことなんです。

 みなさん、アメリカいいなり政治が、ついに日本の国民の大事な憲法までいけにえにしようとするところまで、いま来ている。これが現状であります。こんなことを許すわけにはゆかないではありませんか。(拍手)

憲法改悪は、平和望むアジアで日本を孤立させる

 いま世界では、アメリカの横暴をやめさせて、本当に平和な秩序をもった世界をつくろう、そういう流れが強く大きくひろがっています。そして、その流れが、世界でいちばん強い地域がどこかというと、われわれが生きているアジアであります。

 地球には六十二億の人口がいますが、イラク戦争が始まるときに、アメリカがいくら数えても、戦争賛成の国は四十九カ国、人口にして十二億人しかいなかった。残りの百四十二カ国、五十億人は、戦争に賛成しないか戦争反対の国。つまり、世界の世論は五十対十二で、圧倒的に戦争反対でした。

 そのなかで、アジアは、中東をふくめて、日本以外に三十八の国があって人口三十七億人です。そこで戦争賛成の立場をとったのはわずか七カ国、二億人。戦争反対・不賛成が三十一カ国、三十五億人。平和を願う声、アメリカの横暴を許すなという声が圧倒的に強い地域が、アジアです。そのアジアで、日本がアメリカの横暴勝手な戦略の仲間になり、憲法まで変えて、アメリカが戦争を始めたら、どこまでもついていきます、という国になる。そうなったら、日本という国は、アジアのなかでまったく仲間のない国、だれからも信頼されない国になってしまうじゃないですか。(拍手)

 私は、世界の平和のためにも、そのなかで日本がしっかりした役割を果たすためにも、アメリカの注文による憲法改定のたくらみを絶対に許すわけにはゆかないと考えています。

やめるべきは、“いいなり”政治の根源・日米安保条約

  やめなければならないのは憲法ではありません。アメリカいいなり政治の大もとになっている日米安保条約・日米軍事同盟こそ、早くやめなければならないものではありませんか。(拍手)

 みなさん、この問題で日本の政党の状況をみてください。日本の政党のなかで、憲法改定にきっぱり反対する、この立場を一貫して堅持している政党はだれか。日本共産党しかいないのです。それからまた、アメリカいいなり政治の根源、日米安保条約をなくそうと主張している政党はだれか。やっぱり日本共産党しかいないのです。

 みなさんが国会をみていて、民主党はイラク派兵反対といっているけれども、ときどきぐらつく、どうも心配だと思われる方が多いかと思いますが、あのぐらつきの根底には、憲法改定賛成、日米軍事同盟賛成、政治の大もとの土台で自民党と変わらない立場をとっているという民主党の立場の根ぶかい弱さがあるということも、よくみていただきたいことです。

 みなさん、日本共産党とともに、憲法を生かす自主的な平和外交の道を、そして外国の基地も軍事同盟もない、独立した非同盟日本への道を切り開こうではありませんか。(拍手)

自民党政治の土台の上での政権交代(民主党)では本当の改革はできない

 いま私は、年金の問題と海外派兵の問題について話しました。そこでぶつかるのは、内政では“大企業が主役”という政治のゆがみ、外交・軍事では、“アメリカいいなり”という政治のゆがみ、この二つのゆがみです。実はこれが、長く続いた自民党政治の土台となっている二つの柱であります。「二大政党制」ということがいわれますが、この同じ土台の上にのって政権交代をもとめようという民主党のやり方では、内政でも外交でも、国民のもとめる改革は絶対に実行できません。大企業・財界となんの腐れ縁もない清潔な国民の政党、アメリカであれだれであれ、どんな大国の横暴も許さない自主独立の政党、日本共産党が伸びてこそ、国民の望む本当の改革への展望が開かれるということを、この機会にみなさんに強く訴えたいのであります。(拍手)

こういう活動を展開しています

北朝鮮問題で 何をやってきたか

日本共産党は「何でも反対」の政党ではない

 このように日本共産党は、いまのまちがった政治とは正面から対決して、これを国民のための政治に切り替えるために、がっちりとがんばりぬく政党です。しかし、あわせて申し上げておきますが、日本共産党は「何でも反対」の政党ではありません。

 とくに外交の問題では、日本国民にとって、どうしても解決しなければいけない大事な利益のかかる問題がしばしばあります。そういうときには、私たちは、相手が自民党の政権であっても、その問題に間違いない方向でとりくむならば、いくらでも協力するという立場をとっている政党であります。

 私は、いま問題になっている北朝鮮問題というのは、そういう性格の問題だと考えています。

 だいたい、この東アジアで大きな心配事があるとすれば、それは、だれが見ても朝鮮半島です。この朝鮮半島の問題が解決される、日本との間の拉致問題が解決される、そして、懸案の北朝鮮との間の国交がきちんと結ばれる、こういうことになるならば、われわれが生きている北東アジアで、本当に安定した、心配ない状況が開けるわけですから、北朝鮮の問題は、政党の立場がどうであっても、協力して解決すべき問題です。ですから、小泉首相が北朝鮮を二年前に訪問したときにも、今度の訪問についても、民主党は強い反対と非難の態度をとりましたが、私たちは、最初から大きな流れをきっちり評価する態度をとってきたわけであります。

 それには理由があります。北朝鮮問題の解決にあたっての問題点も、その解決の方向もやり方も、実は私たちが早くから提唱してきたことなのです。

拉致問題の存在を政府に認めさせ、国政の大問題にした

 第一に、拉致問題です。みなさん、北朝鮮との間に拉致問題があるということを、日本の国会で正面から問題にした政党がだれであったかご存じでしょうか。いまから十六年前、一九八八年に、参議院で日本共産党の橋本敦議員がこの問題を取り上げて政府を追及した。このとき、初めて日本政府が「拉致」という言葉を使い、そして全国のこれこれの行方不明者は北朝鮮に拉致された疑いが強いということを初めて認めました。その時から、この問題が、日本の国政の大問題になってきたのです。

 実はこの拉致問題が明らかになる前から、北朝鮮は国際的にいろんな無法行為を重ねていました。私たちはその一つひとつに対して批判をしましたので、そのなかで、北朝鮮との関係が断絶し、現在も私たちは北朝鮮と何の関係も持っていません。

 しかし、そのときに、そういう態度をとる政党は、わが党のほかにはなかったのです。自民党、社会党、公明党――みんな競い合って、だれが北朝鮮と仲の良い政党になるかの競争までしたくらいでした。だから、拉致問題が起きても、これを国会で取り上げる政党は、わが党の以前には、ほかにはどこにもありませんでした。

 そのなかで、日本共産党が取り上げて政府に認めさせ、日本の国の大問題にする道を開いたわけであります。

交渉での解決を提案して日朝政府間交渉に道を開いてきた

 第二に、問題解決の方法です。北朝鮮の様子も変わってきて、アメリカも韓国も、北朝鮮との問題を交渉で解決する態度をとるようになってきました。しかし、残念ながら日本は、国交正常化の交渉も中断したままになり、交渉ルートをもたない状態がずっと続いてきました。

 そのときに、今から五年前の一九九九年、私は、小渕内閣の時に二度にわたって、国会で、提案をしたのです。“このままでは大変だ、交渉ルートもなしでたがいに非難しあうだけの状態をつづけていたら、何が起こるか分からない。中断している日朝国交正常化の交渉を再開し、そのなかで拉致問題、テポドン問題、核問題などをみんな話し合いで解決する方向にすすもうじゃないか”という提案です。

 はじめはなかなか政府は動きませんでした。しかし後で聞きますと、アメリカからも韓国からも、“共産党の代表が国会で提案しているのに、どうしてそれを無視して動かないままでいるのか”、こういう働きかけがずっとあって、その年の年末近くになって政府もとうとう動き出しました。

 そして、超党派の国会議員団を十二月に北朝鮮に送ることになり、わが党にも参加を呼びかけてきたのです。その呼びかけのさいに代表団の団長となる村山さん(元首相)が、“不破さんが国会でやってきた提案をちゃんと頭において活動する”ということをわざわざいってきました。実際、代表団の会議でも、その方針を確認し、北朝鮮との会談で翌年(二〇〇〇年)から政府と政府の交渉をはじめることを確認したのです。

 つまり、政府を動かして、いまの日朝政府間交渉を開くようにしてきた役割も、日本共産党はしっかりと果たしてきたのであります。(拍手)

 その交渉の流れのなかで、二年前の小泉首相の北朝鮮訪問と今年の訪問があり、そこで国交正常化を目指しながら目の前の問題を一つひとつ解決してゆくというレールが定められ、また再確認されたわけですから、私どもがこれが前進だといって評価するのは当たり前であります。

「毅然とした交渉」の原則を行動で示してきた

 もう一ついいますと、こういう交渉のときには交渉にのぞむ態度の問題が大事です。相手側にへつらって、ご機嫌をうかがいながらやる迎合の態度では、交渉は成功しません。この問題では、一九九九年の十二月の超党派の代表団に参加して、たいへん驚いたことがありました。北朝鮮に行くと、交渉に入る前に“儀式”があるのです。「拝礼」といって、金日成(キムイルソン)という前の指導者の像の前に行っておじぎをする。遺体をおさめた廟(びょう)のところでは前後左右から四回おじぎをする。そして、「記帳」といって、この人がいかに偉大であったかをほめたたえる文章を書く、この儀式が押し付けられるのですね。私たちの代表(衆院の穀田恵二議員と参院の緒方靖夫議員)は、行って初めてそのことを知りました。ほかの党は、自民党も社民党も公明党も全部いうがままにちゃんとおじぎをし、ほめ言葉を書き連ねます。しかし、日本共産党の代表は一国の国会を代表し、また自主独立の党の代表として、こういう「拝礼」や「記帳」はきっぱり断る態度を貫きました。

 その後で会談が開かれました。相手側が、その儀式を断った日本共産党の代表を非難したり差別扱いしたりするかというと、かえってその発言に耳を傾け、評価する言葉までのべたということであります。(拍手)

 私たちの代表が帰国して外務省にその話をしましたら、外務省の幹部が、“日本共産党の自主独立とはそこまでやるのか”という感想をもらしたそうでありますが、そこがみなさん、毅然(きぜん)とした外交であります。外交交渉での毅然さとは「制裁」とか「圧力」とか、げんこつをふりまわすことではないのです。そういう点もふくめて、道理と筋道を尽くすことが、外交の一番大事な点であります。

 私たちはこういうことで、北朝鮮問題にとりくんでまいりました。今後とも、日朝交渉や北京での六カ国協議が成功して、朝鮮半島がアジアの一番の火種となる状態が取り除かれ、北東アジアに安定した国際関係が生まれて日本の平和の環境が守られるように、これからも力を尽くしてゆくつもりであります。(拍手)

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不破哲三議長の訴えを聞く人たち=24日、さいたま市大宮駅前

世界平和のための野党外交の展開

 外交の問題では、私たちは、日本の政府に注文をつけるだけではありません。

 日本共産党の独自の活動でも世界の平和のための外交を大いに展開しています。

イラク戦争をやめさせるために

 さきほどイラク問題のことをいいました。アメリカいいなりに小泉首相が戦争に賛成した。私たちはただこれを国会で見て批判していただけではないのです。あの時期に私たちは世界を駆け巡って、平和のための外交活動をやりました。

 私自身、一昨年の八月に中国に行って、当時中国の最高責任者だった江沢民氏と会談をして、そこでアメリカの計画しているイラク戦争に反対だということで合意し、そのことを発表しました。これは、中国がイラク戦争反対の立場を表明した最初の機会となりました。そういう活動をやりながら、さらにいろいろな国ぐにと話し合いを進めていたのですが、そのときに、当のイラクから招待状が舞い込んできたのです。十月に大統領の信任投票をやる、その投票の監視に来てほしい、そのときには政府との会談もできるようにする、こういう招待状でした。私どもはこれを重視して参議院議員の緒方国際局長を団長とする代表団を派遣することにしました。イラク側の説明によりますと、この招待状は日本の全政党にいっていたようですが、それをうけて代表を送ったのは日本共産党だけでした。

 そして緒方代表団はイラクへ行き、大量破壊兵器があるかないかを国際的な調査団を受け入れて調べる査察の問題についてイラク政府の代表と談判して、国際機関の査察をどんな例外も設けないで無条件に受け入れるということを、イラク政府代表に約束をさせたのです。

 緒方代表団は、このとき、イラク周辺のアラブ諸国――エジプト、ヨルダン、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦、この五カ国を続けて訪問しました。このなかには、サウジアラビアのように、国の防衛を全部アメリカにまかせているという、いわゆるアメリカ寄りの国もあるのですが、私たちの代表との話し合いのなかでは、アメリカのイラク戦争反対という点で全部の国で意見が一致しました。そのあと十二月には、志位委員長が、南アジアのインド、スリランカ、パキスタンを訪問して、政府と会談しましたが、そこでもイラク戦争反対という態度は三国に共通のものでした。まさに、さきほど世界は五十億対十二億で戦争反対だったといいましたが、私たちは、世界の世論がまさにその方向にあることを自分たちの外交活動でしっかりとつかんで、国会でもその主張をしたわけであります。

 私たちも主張し国連も要求し、イラクが受け入れた国際査察は一昨年の十一月から始まりました。そしてその成果があがり、着々と進行しているさなかの昨年三月、アメリカのブッシュ政権は、「査察をやったって意味がない。イラクが大量破壊兵器を持っているのははっきりしているんだ。われわれは証拠を握っている」といって、査察をやめさせて、一方的に戦争を開始したのです。アメリカのこの主張をそのまま受け入れてアメリカの戦争を支持し、同じように国会で「査察なんかやったって意味がない」といったのが、日本の小泉首相です。

 明らかに、ここには二つの違った外交の方針がありました。しかしみなさん、どっちの方針が正しかったのか。それから一年半たったいまでは、あまりにもはっきりしているではありませんか(「そうだ」の声、拍手)。当のアメリカでさえ、大量破壊兵器はなかったことを事実上認めています。私たちが主張したとおり、あのまま査察を続けていれば、平和の方法で大量破壊兵器がなかったことが証明されたでしょう、だから戦争も起きず、いまのようなイラクの破壊もなかったでしょう。イラクがテロの戦場になって、そこから世界中にテロが広がるという現在の惨害も起きなかったでしょう。

 みなさん、外交の方針を間違うとどういうことになるのか。私たちは、今度のイラク問題の経過で、このことをまざまざと体験しました。

立場の違う政府とのあいだでも友情と連帯の輪が広がる

 この外交活動のなかで、私たちは、新しいことをいろいろと体験しました。さきほどイラク問題で私たちが、一昨年訪問して話し合った国ぐにの名前をいろいろあげましたが、そこにはイスラムの国が数多く含まれています。イスラムというと、アラーの神を絶対としている、その人たちが政治を握っている国ぐにで、宗教の面では、私たちとずいぶん開きがあります。しかし、そういう国ぐにも、私たちが訪問すれば、喜んで迎えいれて会談し、そして平和への願いが共通であれば、お互いにしっかりと一致点を確認しあう。こうして友情と連帯の輪がどんどん広がるという体験を、私たちはいたしました。

 また、これらの国ぐにがどんな日本を望んでいるかということについても、本当に実感的にわかりました。憲法改定と軍備増強、アメリカと一緒に戦争をする日本を望んでいる国はほとんどありません。日本が憲法を守り、自分の考えで平和の道を歩む自主外交の国になることをだれもが望んでいます。

 そして、「共産党では」といった偏見などなしに、相手が道理に立っているとわかれば、どこでも心を開く。そういう関係が本当にいたるところで生まれました。たとえば、私は昨年七月に北アフリカのチュニジアを訪問しましたが、チュニジアのイスラム政権党と日本共産党のあいだには、おたがいの党大会に代表を派遣しあうという、政党としてもっとも緊密な関係まで生まれました。

 私たちはまだ訪問していませんが、イラクの東側に、イランというイスラムの国があります。昨年の十二月に大地震がありましたので、私と志位委員長の連名でお見舞いの電報を打ちました。そうしたら先日、イランの大統領からお礼のメッセージが届きました。「神の御名において、日本共産党の指導者と党員のみなさんに特別のあいさつをおくる」。こういうメッセージが、あのイスラムの国からわが党に届く。世界はみなさん、本当に姿が変わっているのです。

イスラム諸国の首脳会議――政党のゲストは世界で日本共産党だけだった

 世界中のイスラムの国五十七カ国がイスラム諸国機構をつくっていまして、昨年秋その首脳会議がマレーシアで開かれました。そこへ私たちも招待されましたので、緒方国際局長が出かけたのです。その会議は、首脳会議ですから、大統領や首相、王様の国では王族が参加する会議です。そこには、国際組織からのお客さん(ゲスト)も、イスラムではない国の政府のお客さんもいました。しかしみなさん、世界の政党のなかで政党として招待されたお客さん(ゲスト)は、日本共産党の緒方国際局長ただ一人だったのです。(拍手)

 緒方さんが、マレーシアで現地の日本大使と会いましたら、本当にびっくりしてこういったそうです。「あなたはなぜここにいるのか」(笑い)。聞きますと、“この首脳会議は本当に警戒厳重で、マスコミも入れない、日本大使などの外交官も寄りつけない。そういう会議なのに、日本共産党の代表は平気で中に入って、大統領や王族がやっている会議でも自由自在に出入りして、どこでも交流している。なぜ日本共産党がそんな特別扱いを受けるのか”という驚きだったようであります。

 みなさん、私たちとイスラム諸国との交流は、五年前に私がマレーシアを訪問したのが最初ですが、わずか五年の間に、私たちは、心を開きあう、親密な交流の関係をイスラムの多くの国ぐにと、またイスラム世界と打ち立ててきました。ここには、世界がいかに変わってきているかの大きな表れがあると、私は思っています。

 みなさん、野党である日本共産党が、これだけ世界に連帯の輪を広げることができるなら、その日本自身が“アメリカいいなり”から自主平和の外交にかじを切りかえたら、どんなにすばらしい展望が日本と世界のあいだに広がるでしょうか(拍手)。二十一世紀の将来が本当に楽しくなるではありませんか。(「ヒュー」という口笛)

議会政治を徹底して まもりぬく党

 最後に、日本共産党が議会政治を徹底してまもりぬく政党だということを一言紹介したいと思います。

「議会政治の基本をわきまえた見事な出処進退」との評価

 今度の国会では、与党の側は、討論をさけ、事実をかくし、最後には強行採決というやり方。野党の側では出席しない(いわゆる“審議拒否”)とか、バリケード戦術、こういうものが双方から横行しました。日本共産党はそのどちらにも反対して、もっとも討論を重視する態度を貫きました。

 さきほど大門みきしさん(参院議員)が、「一〇〇年安心」という年金の偽りの看板を暴く点でも、イラク派兵のごまかしをつく点でも、国会で日本共産党が一番がんばって成果をあげたと話しましたが、まさにその通りであります。出席しないという戦術は一見威勢よく見えますが、国会というのは、討論を通じて政府がやっている悪いことやごまかしを国民の目の前に明らかにすることがなによりも大事な仕事です。それを投げ捨てるわけですから、こういうやり方は、結局は政府与党の暴挙を一番助けることになるのです。

 とくに参議院での年金審議の最後の段階では、この特徴が一番はっきり出ました。野党共同で議長の不信任案を出しました。ところが民主党や社民党が途中から退場してしまったために、この不信任案が議題となって、さあ討論というときになったときに、不信任案賛成の討論をやったのは日本共産党だけだったのです。ほかはだれもいないのです。それから年金法案の討論採決になったときにも、堂々と反対討論に立って政府与党の横暴を糾弾し、審議打ち切りの無法をつき、年金改悪の内容についても論点をあげてこれを批判する議論を展開したのは、日本共産党だけでした。(拍手)

 この様子を見て、自民党の国対の関係者からも、民主党の国対関係者からも「共産党の対応には負けた」という声が上がりました。ある政治評論家は「議会政治の基本をわきまえた見事な出処進退だった」とのコメントを寄せてくれました。(拍手)

「国民が主人公」の信条――その歴史と現在と将来と

 みなさん、日本共産党の議会重視の態度はここまで徹底しているわけですが、これは一時の戦術ではけっしてありません。

 私たちは、戦前のあの暗黒政治の時代から、侵略戦争反対とともに、「国民が主人公」・国民主権の民主主義政治を党の信条とし、その立場を命がけで貫いてきた歴史を持つ政党であります。議会政治をまもりぬく日本共産党の立場は、この歴史と信条に裏付けられたものであります。

 私は、一九六九年の初当選以来昨年の総選挙まで、国会で三十四年間連続して活動してきましたが、“日本共産党の国会議員団が大きな力を持っているときは、国会が元気になる”――これは、他の党派の人々も認めている、日本の国会の大事な特徴であり、歴史が証明した事実であります。(拍手)

 みなさん、今度の選挙で日本共産党の大きな前進を勝ち取って、国民のために元気で働く国会を築きあげようじゃありませんか。(拍手)

 将来についていえば、日本共産党は国民多数の合意ということを何よりも大切にし、日本の政治や経済のどのような改革を実行するにあたっても、選挙に示された国民多数の合意をもとに行うことを、不動の大方針にしている政党であります。二十一世紀を展望すれば、日本はその前途にいろんな段階を迎えるでしょう。しかし、どんな段階でも、国の主人公は国民であり、どのような問題を解決するにも国民多数の意思が決定的であります。これが、私たちの変わることのない信条であり、行動の大原則であります。(拍手)

二十一世紀の希望ある未来を開くために

 みなさん、二十一世紀に生きる日本の明日は、国民の力で開かなければなりません。希望がある未来を開くために、どうか国民の党、平和と民主主義の党、自主独立の党である日本共産党へのご支援をお願いし、新しい国会が、新しい希望に満ちた日本への門出となるように、みなさんのご支援、最後までよろしくお願いして、話を終わるものであります。どうも長い間、ありがとうございました。(大きな拍手)


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