日本共産党

2004年6月20日(日)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい 参院選特集

各党の年金政策

本当の年金改革の道は


 年金改悪法の強行直後に行われる参院選(二十四日公示)。有権者の最大の関心事となっている年金問題で、どの党が国民の願いにこたえる改革を提案しているのか――。



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自民・公明

物価上昇分から毎年カット

世界に例ない大改悪

 物価の上がった分だけ給付も厚くしていくことで、受け取った時点の年金の価値を毎年維持していくことができます。自公両党が強行した改悪法は、「マクロ経済スライド」の導入によって、この公的年金の重要な役割を二〇二三年度まで棚上げにしました。

 給付の上げ幅を物価上昇率から0・9ポイントを引いたものに圧縮し、実質給付を減らしていくのです。しかも、月二万、三万円(国民年金)という、いまでも暮らしに足りない低額の年金にまで適用する非道な仕組みです。自民、公明両党は、それを偽って「暮らせる年金」といっているのです。

 物価上昇分の上積みを毎年毎年カットする「マクロ経済スライド」のような仕組みを実際に発動させる国は世界でも例がありません。このままでは日本が初となる「世紀の大改悪」(十五日参院財政金融委員会、池田幹幸議員)です。

「映画も見たいけど」 87歳女性のなげき

 自民・公明が強行した年金改悪法。高齢者の暮らしを直撃しています。

 「もう少し余裕があれば、映画や演劇を見にいきたいわよね」。東京都北区で年金生活をしている八十七歳の女性はいいます。

 十五歳から定年退職まで長年の民間会社勤務。何度も失業しながら、電力会社、出版業、工具店と勤めあげました。厚生年金保険料を十九年間納めて、受け取る年金は月八万九千円。家賃三万六千円のアパートで一人暮らしです。

 眼科と内科の医療費、介護保険料、風呂代など毎月必要なお金は、年金だけでは足りません。

 貯金を取り崩しての生活です。「本当は、自分の部屋にトイレがあるところに住みたい。若いころは映画も週三回くらい見にいったのよ。とくにフランス映画がいいのね。でも、いまは生活だけでギリギリ。こうなると交際範囲も狭くなっちゃう」と話します。

 二年前まで九万円台の給付でした。昨年は物価下落分の給付カット(0・9%)で八万円台に下がりました。ことしも物価スライドで0・3%の減額。“前は上がっていたのに…”と腹が立ってきます。

 自公の改悪法によってこれからは物価上昇分の給付アップも保障されなくなりました。



民主党

無年金者除外、業者は負担増

弱者に冷たい「一元化」

 民主党は、国民年金と厚生年金、共済年金をいっしょにした年金「一元化」を選挙公約(マニフェスト)にしています。所得に応じて同一の保険料(13・58%)を徴収する「所得比例年金」と「最低保障年金」を組み合わせる仕組みで、「最低保障年金」は、〇九年度から導入します。

 しかし、看板と中身は大違い。満額(月六万六千円)を受け取れるのは新制度になってから四十年間の加入期間が必要です。現在の無年金者、低額年金者ははじめから除外されているのです。

 新制度の加入期間が一年しかない高齢の人は「最低保障年金」の給付も一年分で、六万六千円の「四十分の一」の千六百五十円というわずかな額にしかなりません。

 「一元化」による「所得比例年金」の保険料は、厚生年金にならって所得の13・58%。自営業者、農民は全額自己負担になるため、現行の国民年金保険料(月額一万三千三百円)に比べると一気にはねあがります。

 給付水準も政府案と同じように減らされます。

 枝野幸男前政調会長は「マクロ経済スライドはとらざるをえないと考えている。給付のところでは基本的に政府案と大きな違いはない」(四月七日)と説明しています。

 少子化の進行や高齢化を口実にして給付水準を毎年引き下げていくという立場は、自民、公明と同じです。

07年度から年金目的消費税

低所得者に重く大企業は負担なし

 「最低保障年金」などの財源として、低所得ほど重くのしかかる「年金目的消費税」(3%)が〇七年度から導入されます。

 消費税は保険料と違って事業主負担がないため、大企業は一円も負担する必要がありません。年金「改革」の柱として財界が目の色をかえて求めているものです。

 民主議員は、日本経団連の矢野弘典専務理事にたいし「保険料より年金目的消費税のほうが、企業に与えるダメージが少ないんではないかと思う」(四月二十二日、衆院厚生労働委員会)と売り込みました。


自公も民主も 国民負担増70兆円超
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消費税増税に道を開く「三党合意」を結んだ(中央左から)民主・岡田克也(現代表)、自民・安倍晋三、公明・冬柴鉄三の各幹事長=5月6日

 保険料を二〇一七年度まで国会審議ぬきで毎年引き上げる自民・公明の年金改悪法と、3%の「年金目的消費税」を導入する民主党案。国民へ巨額の負担増を押しつける立場はどちらも共通しています。

 一七年度までの負担増の合計を比べてみると、自民・公明の年金改悪法では、保険料引き上げにより〇四年度は五千億円、〇五年度以降は毎年七千億円負担が増え続け、合計七十兆七千億円の負担増になります。

 民主党案で〇七年度から導入される「年金目的消費税」は、年間七兆二千億円の負担増で、一七年度までの十一年間で七十九兆二千億円もの負担増になります。





グラフ
日本共産党

まず5万円を最低保障
年金の土台立て直す

 日本共産党は、多くの無年金者や低額年金受給者をかかえる日本の劣悪な年金の実態を解決するため、「最低保障年金制度」を提案しています。全額国庫負担による月額五万円(当面)の最低保障額に、払った保険料分の給付を上乗せする改革案です(図参照)。

 ヨーロッパ諸国では、最低保障年金が老後の生活を支える大きな柱になっています。フランスでは、六十五歳で無収入の人には、単身者で月約八万円、夫婦で約十四万円の最低年金が支給されます。ドイツでは、国が全額負担する基本保障年金制度により、六十五歳以上の高齢者、障害者に月額十一万円が支給されます。

 日本共産党の「最低保障年金制度」によって、日本もこれらの国と肩を並べ、不安の年金から抜け出すことができます。

改悪年金法廃止法案を提出へ

 日本共産党は、年金改悪法廃止法案の条文をまとめ、参院選後の国会に提出することを明らかにしました。参院選後の新たな国会で年金改悪法の廃止が決まれば、改悪の実施に待ったをかけられます。

 そのうえで真の年金改革に向けた国民的討論を行おう――いま日本共産党はこう呼びかけています。

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年金改悪法案を廃案にせよと請願をうける日本共産党国会議員団=2日、参院議員面会所前

財源は逆立ち財政の改善で

 年金「改革」といいながら自民、公明や民主から負担増と給付減の案しか出てこないのは、税金の使い方を改めようとしないからです。

 国と地方を合わせて公共事業に四十兆円、社会保障に二十五兆円という財政の逆立ちを改めない限り、同じような「改革」案になるのです。社会保障より公共事業の予算が多いというのは、欧米諸国では考えられないことです。

 企業の税・社会保険料負担が国民所得に占める比率も、日本は12・3%(二〇〇〇年)。フランスの23・6%、ドイツの17・7%、イギリスの16・0%に比べて低く抑えられています。そのうえ日本では、この十年間、相次ぐ法人税引き下げによって、大企業の負担が大幅に軽減されました。

 日本共産党は、道路特定財源(年間六兆円)の一般財源化やムダな公共事業、軍事費の削減などムダ遣いを削ることで、社会保障、暮らしに予算を回すことを訴えています。さらに将来新たな財源が必要になったときには、大企業や高額の所得者に応分の負担を求めることによって「最低保障年金」に必要な財源を確保することを提案しています。

 安定した年金財源を確保し、国民の暮らしにプラスとなる年金制度にするには、大企業優遇にかたよった政治を切り替えることがどうしても必要です。企業献金を受け取らない日本共産党だからこそ、税金の使い道の転換を堂々と主張する本物の年金改革を提案できるのです。


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