日本共産党

2004年6月19日(土)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい 参院選特集

ヨーロッパ並みに あたり前の働くルールを


 人間らしく働く―だれもが願うルールある経済社会の確立は、参院選挙の焦点です。日本共産党は、ヨーロッパ並みのルールをつくって、国民のくらしと権利が守られる日本に切り替えようとよびかけています。


残業

上限を法律で決め長時間労働ただす

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 「ルールなき資本主義」といわれる日本。その象徴といえるのが、一家だんらんを奪い、過労死や過労自殺をも生む長時間労働です。

 サービス残業(ただ働き)を含む実労働時間の実態をとらえている総務省「労働力調査」によると、二〇〇二年の週平均労働時間は四十二・三時間。年換算で約二千二百時間です。国際比較をすると、日本が突出して長いことがわかります。

 過労死する危険性の高い年間三千時間(週六十時間)に達する層は、12・1%を占めます。

 労働基準法は一日八時間、週四十時間を定めています。しかし、労使が協定を結べば残業が可能になる例外規定(三六条)があり、残業規制の上限はありません。

 政府と財界は、長時間労働の是正や違法なサービス残業を根絶するのではなく、裁量労働制の拡大などでいっそうの長時間労働を押しつけ、サービス残業を「合法化」してきました。

 新たに導入しようとしているのが、ホワイトカラー・イグゼンプション(適用外)制です。ホワイトカラー労働者を労働時間の規制対象から除外するこの制度が導入されれば、一日に何時間働こうと、休日労働をしようと、使用者は割増賃金をいっさい支払わなくてすみます。一日八時間労働制の解体です。

 ヨーロッパでは、週三十五時間などと労働時間が短いうえ、残業の上限を法律で規制しています。ドイツは年六十日を限度に一日二時間まで。フランスでは年百三十時間が限度です。

 日本は長時間労働と裏腹に年次有給休暇(年休)の付与日数が少ないうえに、取得率もきわめて少ないのが実態です。

 政府の試算でも、年休を完全消化すれば、百五十万人の新規雇用創出と十二兆円の経済波及効果があります。

 ヨーロッパでは、長期のバカンス休暇を楽しむのは当然のことになっています。ドイツやフランスなどでは、夏と冬に四週間、二週間とまとめて休暇を取得し、年休の完全消化は当たり前です。


パート派遣

非正規の労働条件 正社員と平等に

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パート、臨時、派遣労働者への均等待遇を求める女性たち=5月21日、東京・厚生労働省前

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 この五年間で、正社員が四百万人も減る一方、非正規の労働者が三百七十万人も増えました。急増するパートや派遣などの労働者は劣悪な労働条件におかれています。

 フリーター青年の85%が年収二百万円未満で働いています。パートの七割は女性が占めていますが、パート女性の一時間当たりの賃金は男性正社員の34・4%という低さです。「最低賃金ぎりぎりの時間給」「妊娠したら解雇」がまかり通る非正規労働者の増加は、正社員の賃金と労働条件まで引き下げています。

 不安定雇用労働者の増加を後押ししてきたのが「労働市場の構造改革」をすすめる小泉政権です。労働法制改悪で製造業での派遣労働を解禁し、有期労働契約をやりやすくしました。

 ヨーロッパではフルタイムとパートとの労働条件の格差を規制しています。たとえば賃金でも、日本はフルタイムの一時間当たりの賃金を100とすると、パートは49・7と五割を切っていますが、スウェーデンでは87・2です。ドイツでは82・5%、オランダでは73・2%、フランス73・0%となっています。

 「パートだから」といった雇用形態による差別は本来あってならないものです。「同一労働同一賃金」は、近代社会が確立した大原則です。

 ILO(国際労働機関)は、パート労働者がフルタイム労働者と差別されないよう求める条約を採択。EUでは、法的拘束力のある「EU指令」を採択し、各国が歩調を合わせてパート労働者の保護をすすめています。

 ところが日本政府は、ILO総会で条約作成に反対。パートと正社員との「均等待遇」をはかる流れに逆らう世界の“孤児”となっています。

 日本共産党は昨年、「パート・有期労働者均等待遇法案」を国会に提出し、賃金をはじめ、休暇や福利厚生、解雇など労働条件でパートや有期雇用の労働者と正社員との差別をしてはならないと提案しました。派遣労働者に派遣先で正規雇用の道をひろげる、法律違反や不当な賃金のピンはねがまかり通っている業務請負を厳しく監督するよう求めています。


解雇

企業の勝手許さず法律で規制する

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 先進国の中で日本ほど雇用を守るルールが弱い国はありません。いまあるルールさえ乱暴に踏みにじった違法なリストラが横行しています。辞めさせたいと思う労働者を「隔離部屋」に押し込めて仕事を取り上げる、遠隔地へ転勤する、繰り返し面談を強要し無能よばわりする―こんな人権侵害の手口で大量の労働者を追い出しています。

 小泉内閣発足後三年間で、非正規雇用は、雇用者全体の三割に達しました。完全失業率は三月、四月と5%を割りましたが、依然高止まり。完全失業者数は三百三十五万人になっています。

 大企業は、大規模リストラをすすめ、大もうけしています。製造業では、この十年間で三百四十五万人、22%も減少。他方、日経新聞社が集計した上場企業千六百三十八社の二〇〇四年三月期連結決算は、本業のもうけを示す経常利益が前期に比べて27%増の二十兆二千八百七十億円と過去最高を更新しています。

 日本にはヨーロッパのような解雇規制の法律がありません。二〇〇三年に労働基準法改悪案が国会に提出されたとき、日本共産党は全労連などとも連携し、「使用者は労働者を解雇できる」という改悪案を「合理的な理由のない解雇は無効」と修正させました。しかし具体的な基準は法律で明示されていません。

 日本共産党は、解雇・人員整理を社会的に規制し、労働者の雇用と人権を守るために、▽正当な理由のない解雇の禁止、人員整理計画の事前協議制の確立▽希望退職や転籍など「退職」を強要するための人権侵害を許さない―などの「解雇規制・雇用人権法」の制定を提案しています。

【ヨーロッパの解雇規制ルール】

 ドイツには、「解雇制限法」があり、集団的解雇を厳しく規制しています。州職業安定局に届け出る必要があり、同意されなければ無効です。フランスは「経済的理由による解雇の防止と職業転換の権利に関する法律」で解雇を規制、被解雇者の職業転換を支援する措置がとられています。

 各国の解雇規制立法とともに、ヨーロッパにはEU(欧州連合)共通のルールがあります。

 大量解雇指令(一九七五年制定、九二年一部改正)は、労使の事前協議を義務づけ、二〇〇一年には、「欧州労使協議指令」を合意。多国籍企業が工場閉鎖や大量解雇をする場合、ヨーロッパ規模の企業内協議機関の設置を義務づけています。

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共産党

サービス残業根絶し160万人の雇用創出

自公、民主

労基法改悪で協力

 日本共産党は、もうけ第一で労働者のくらし・雇用破壊をすすめる大企業・財界の横暴とこれを支援する小泉・自公政治を正面から追及する一方で、各地の職場・地域のたたかいと連携し、「大企業は社会的責任を果たせ」と運動を広げ、現実政治を動かしています。

 その一つが労働者に残業をさせても手当を払わないサービス残業。日本共産党は一九七六年、サービス残業問題を初めて国会でとりあげて以来、二十八年間で二百四十回を超える質問で追及。サービス残業の根絶をくり返し求めてきました。

 厚生労働省が重い腰をあげ、二度の通達を出し、三年足らずの間にトヨタ自動車やNEC、日立、三菱重工業という大企業などから二百六十億円以上もの未払い残業代を支払わせてきました。

 サービス残業が、労働者一人当たり平均で年二百時間を超え、これを新規雇用に振り向ければ百六十万人もの雇用を創出する効果があると推計されています(第一生命経済研究所)。

 自民・公明与党は、深刻な労働実態の改善にまったく関心を示さないどころか、財界の要求をそっくり入れてリストラ支援を推進し、労働法制を相次いで改悪してきました。民主党も、連合組合員も反対した二〇〇三年の労働基準法改悪に賛成しました。正規労働者を減らしてパートや有期などの不安定雇用に置き換えやすくしました。

 自民、民主両党は、リストラで人減らしをすればするほど税金をまけてやるという究極の大企業リストラ支援法である産業再生法の事業対象を拡大する改悪に賛成してきました。企業が労働者を一人削減するたびに九十一万円の減税になるこの改悪で二百十七社が九万人を減らし、八百十億円の減税になりました。

 日本共産党は参院選挙政策で、大企業経営のリストラ応援することをつうじて“首切り”を推進してきた産業再生法をきっぱり廃止すべきだと主張しています。


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