日本共産党

2004年6月19日(土)「しんぶん赤旗」

年金

老後の不安 募ります


 年金改悪法の成立を受け、小泉内閣は今年十月の厚生年金保険料の引き上げ、来年四月の国民年金保険料の引き上げを手始めに、順次実施する予定です。高齢者の暮らしを悪くするものばかり。老後の安心のために日本共産党が提案しているのが最低保障年金制度。各党の案とくらべると―。


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毎月赤字 東京・中野 尾形テルさん

いま、月4万5500円 暮らせません

 東京都中野区で一人暮らしをしている尾形テルさん(89)。近くに弟さんもいて、住み慣れた街です。自宅はアパートの四畳半一間。家賃は月二万五千円です。国民年金が唯一の収入で月額四万五千五百円。介護保険料(月二千五百五十円)が天引きされ、家賃を払うと手元に二万円も残りません。

 「年をとっても人の世話にならず、自分で保険料を納めた年金でなんとか暮らしていきたい」

 こう思う尾形さんはギリギリまで出費を切り詰めています。食品や雑貨は一番安い店を探します。野菜もばら売りを買い求め、ジャガイモを一個で売ってくれる店までいくこともあります。

 それでも月々の支出は平均で六万四千四百円になり、毎月約二万円の赤字。いつかは必要になる自分の葬式・お墓代にと、七十歳まで働いてためたお金を削って赤字分に充てています。

 三月は五万円以内におさまりました。家計簿の余白に「うれしかった」と書きこみました。

 ところが五月初旬。うっかりカギを部屋に置いたまま出かけ、ドアを開けられなくなりました。カギ店に頼むと六千円もかかってしまいました。

 「やれるところまでやってますが、もう限度です」と尾形さん。年金改悪で生活への不安が募ります。

改悪で衣食住の消費支出下回る

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家計簿を見る尾形テルさん=東京・中野区

 国民年金の支給平均は月額約四万六千円です。尾形さんは平均的な受給例となります。四十年間保険料を欠かさず払いつづけた場合の満額が約六万六千円となります。

 この満額の給付水準は、老後の衣食住にかかる消費支出を最低限カバーしようと決められました。国民年金は生存権の保障という憲法の原則にもとづく公的年金で、政府も受給後は毎年の物価上昇分だけ給付を上げ、購買力が下がらないようにしてきました。

 これを改悪法では「マクロ経済スライド」の導入によって二〇二三年度までの十九年間、物価上昇分の給付増を認めない制度にしたのです。物価上昇率から0・9ポイントを引く仕組みで、物価上昇率が1%だと0・1%の上乗せにしかなりません。

 受け取る給付の額面(名目額)が毎年いくらになるか、厚生労働省の推計によると、いま六十五歳の人の国民年金は〇四年で月額約六万六千円。二〇一五年(七十五歳)で六万七千円、二〇二三年(八十四歳)になっても六万九千円。わずか三千円のアップです。(表上)

 一方、政府が基準にしている高齢者の基礎的消費支出(全国消費実態調査による)は現在一人約六万円。これを政府推計の物価上昇率で引き上げていくと、二〇一五年には六万八千円になり、いま六十五歳の人が七十六歳になったときの給付額六万七千円では足りなくなるのです。生存権の保障が求められているはずの国民年金の重大な変質です。

首相も“年金だけで生活費ムリ”

 自民、公明の与党は、“保険料は上限で固定”“給付は引き下げても50%確保”という改悪法の二枚看板の偽りが国民に知られ、「百年安心の年金」とはいえなくなりました。国民年金の給付削減で、満額給付であっても衣食住の基礎的消費支出さえまかなえなくなるのですから、「暮らせる年金」の宣伝も偽りです。

 「どうやって生きていけというのか」。日本共産党の小池晃議員の追及(五月三十一日、参院決算委員会)に小泉首相は「公的年金だけで全部、生活費をみるというものではございません」などと答弁しました。

 年金だけで生きてはいけない、自分のたくわえで老後に備えよということですから、「暮らせる年金」の偽りを首相自身認めたことになります。


共産党提案 最低保障5万円に上積み

尾形さんニッコリ

 「年金をあと二―三万円増やしていただければ、どんなに助かることか」。尾形さんの切実な願いです。

 日本共産党が提案する最低保障年金制度が実現すれば、尾形さんは最低保障五万円と現在の給付の半額二万三千円が上乗せされて月額七万三千円になります。

 尾形さんは「それなら貯金を崩さず生活できます。貯金は減る一方でそろそろ底が見えて不安です。ぜひ共産党さんにがんばってもらいたい」と期待します。

 最低保障年金制度の財源は全額国庫負担で、大型公共事業など税金のムダ遣いをあらためることでまかないます。歳入の面でも、大きな利益をあげている大企業や、高額所得者に経済力に応じた負担を求めることで確保します。「年金財源」を目的とした消費税の増税などには絶対反対です。

 最低保障年金制度が実現すれば、無年金をなくし低額年金を底上げすることができます。

民主も「最低保障」いうけれど

 民主党も「最低保障年金」をいっています。しかし、二〇〇九年度から制度をスタートさせ、満額(六万六千円)を受け取れるのは四十年後という内容です。すでに受給している尾形さんの年金額は変わりません。

 しかも民主党の案は、財源を消費税としています。いまの5%の消費税に加えて3%の「年金目的消費税」を〇七年度に導入するとしています。尾形さんの場合、消費税の増税だけが重くのしかかることになるのです。


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