日本共産党

2004年5月28日(金)「しんぶん赤旗」

主張

改正DV防止法

自立への支援に実効性を


 配偶者間暴力防止法(DV防止法)改正案が二十七日、国会で成立しました。改正では、暴力の内容として、これまでの「身体に対する暴力」に加え「心身に有害な影響を及ぼす言動」(精神的暴力)が盛り込まれました。配偶者間暴力の実態を反映したものであり、暴力を防止するうえで当然です。

 また、被害者の申し立てにもとづき裁判所が発する保護命令について、元配偶者にも発することができるようになりました。被害者の子どもに接近を禁ずる命令をだすことも可能になります。

「自活の道」望んでも

 国と自治体の責務に「被害者の自立を支援」が加わり、国は基本方針、都道府県は基本計画を策定することも明記されました。

 これらの改正は、DV防止法施行から二年半、被害者や支援団体、自治体関係者などから見直しが切実に求められていたものであり、暴力防止、被害者救済、自立支援をすすめるうえで一歩前進です。

 とりわけ、切実に求められているのが被害者の安全と安心を確保し生活を再建する、自立支援です。

 東京都の調査では、配偶者暴力被害者の六割を超える人が「相手に見切りをつけ、離れて自活の道を歩みたい」と思いながら、暴力から逃れられない理由に「経済的な不安」をあげている人が最も多く、四割強をしめています。

 日本共産党は、DV防止法の制定に先立つ二〇〇〇年九月、夫婦間暴力の防止と被害者保護・自立支援に関する法律案大綱を発表し、被害者の自立支援を求めてきました。

 DV防止法を契機に、地方自治体のなかには独自に、相談体制の拡充や緊急一時保護施設の開設、経済的自立促進のための生活資金の貸し付けや公営住宅の優先入居、民間シェルターへの財政援助などをすすめてきたところもあります。

 国として、被害者への公営住宅優先入居を促進する通知を出す(国土交通省)などしています。基本方針・計画は、国や自治体のとりくみ、被害者の要求の反映、予算の裏付けなど、自立支援に役立つものにすることが求められます。

 さらに、解決が必要ないくつかの課題があります。加害者更生対策もその一つです。共産党は法律案大綱でもこの問題を重視してきました。

 加害者の行動を規制する保護命令制度は緊急の場合の措置であり、期間がすぎれば命令が解かれます。加害者の反省がなければ暴力再発の可能性もあります。

子どもへの影響が

 暴力の防止・被害者救済のために、自立支援とともに、加害者更生対策の確立・強化が欠かせません。

 配偶者暴力が子どもに与える深刻な影響を解決することも急がれます。DV加害者の四割は、子どもの前で妻への暴力をおこなっており(法務省法務総合研究所調査)、五割を超える家庭では子どもにまで暴力が及んでいます(東京都調査)。

 子どもへの心身のケアとともに監護権や面接交渉権の制限についての検討の必要性が関係者から指摘されています。

 精神的暴力について、保護命令の要件としてどこまでふくめるか、被害者保護の立場からひきつづき検討が必要です。

 実効ある防止・自立支援の確立とともに社会のあらゆる場で暴力をなくし、人間の尊厳が大切にされる社会をめざす国民的とりくみの前進が求められています。


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