日本共産党

2004年5月26日(水)「しんぶん赤旗」

生存権侵害の 年金 改悪法案

保険料上限なし、給付は50%以下に

日本共産党参院議員

小池 晃さんに聞く


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 自民党と公明党、民主党の合意で、衆院での採決が強行された年金改悪法案。参議院では、日本共産党・小池晃議員(党政策委員会責任者)の質問で「保険料に上限はなく、給付は50%を下回る」ことが明らかになりました。年金法案の問題点や、何をどう解決したらいいのか、小池さんに聞きました。

国民は踏んだりけったり

 年金問題にたいする国民の関心は非常に高く、街頭でも立ち止まってよく聞いてくれます。保険料は上げ、給付は減らすという踏んだりけったりの法案に、不満と怒りがマグマのようにたまっていると感じます。

 実際、衆院通過後の新聞の世論調査でも、「成立させるべきでない」「見送るべきだ」が六、七割を占めます。これまで衆院を通ってしまうとマスコミは成立してしまったかのような報道を始め、国民もあきらめ感が強くなりましたが、今回の年金法案は逆に、「反対」の世論が高まっているのが特徴です。

与党の二枚看板はウソだった

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 参院の審議で、自民党・公明党がいってきた“保険料は上限がある”“年金は現役世代の手取り収入の五割以上”という二枚看板がウソだったことがはっきりしました。私の質問(参院本会議、十二日)で、政府も数字を認めました。

 保険料の上限を設けたといいますが、物価も賃金も一円も上がらない仮定の話です。上がればどうなるかと質問したら、保険料も上がっていくと答えました。国民年金の保険料は二〇一七年に月一万六千九百円になり、これが天井だといっていたんですが、実は二万八百六十円になる。二七年には二万五千六百八十円、三七年には三万一千六百十円と上がっていくんです。

 受け取る年金の方はどうか。確かに、夫は四十年サラリーマン・妻は四十年専業主婦というモデル世帯が年金を受け取り始めるときは五割以上ですが、すぐに下がります。現在六十五歳の人の受給額は現役世代の手取りの59%ですが八十五歳では43%に下がる。給付水準は三分の二になります。現在四十五歳以下の人が八十五歳になるときは40・5%まで落ち込んでしまいます。

 これでどうやって生きていけるのかと私が追及すると、小泉総理も坂口厚労相も、“高齢者は消費水準がだんだん下がっていくから、六十五歳の人と八十歳の人と同じ年金をもらえなくて当然だ”という。高齢者の人権をなんと思っているのか、ひどい話じゃないですか。

 六十代後半の消費水準を100とすると七十五歳以上の人は93。年々、消費水準は近づいてきているんですよ。みなさん、スポーツや旅行など活発に人生を楽しんでいらっしゃる。それと高齢者になれば医療費や社会保障費の負担が増えていくからなんですね。国民年金法の第一条には、年金制度は憲法二五条(国民の生存権、国の社会保障的義務)に基づく制度だと書いてあるのに、まったくないがしろにしていますね。

全額国庫負担の最低保障年金制度を

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 いまの年金制度の一番の問題は、制度の空洞化がすすみ土台が崩れてきていることです。保険料を払っていない人が国民年金で一千万人を超えています。受け取る年金も低額です。国民年金だけの人は月平均四万六千円、厚生年金でも女性は十万円ですからね。このうえ、保険料を引き上げ給付を下げれば、年金の支え手をどんどん減らすことになる。これは土台を打ちこわすやり方です。

 いま必要なのは崩れかけた土台をたてなおすことです。日本共産党は、国民年金、厚生年金など年金全体の共通の土台として全額国庫負担の最低保障年金制度をつくろうと提案しています。最低保障額は当面月五万円から始め、そのうえに払った保険料に見合った額を上乗せして受け取るようにしようということです。

 私たちの提案では、基礎年金部分の国庫負担を二分の一にすることが前提になっています。国民年金額の二分の一がかけた保険料に見合うことになります。いま四万円の国民年金なら、そのうち半分の二万円が五万円の最低保障額に上積みされ、受給額は七万円になります。厚生年金も一定額までは同様に基礎年金部分が底上げされます。

 最低保障年金の上に、保険料に応じた部分が乗るという仕組みは、国民年金も厚生年金も共通のものとなり、年金間の格差を是正する第一歩となります。財源は、税金の無駄遣いを見直し、大企業と高額所得者に応分の税負担を求めることでまかないます。

与党・民主の「一元化」をどうみる

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 年金制度間の格差をなくし、国民から見て公平な制度をめざすことは大事です。ところが、自民党や公明党、民主党の「一元化」は、いまの制度の枠組みのまま、保険料や年金の額だけをそろえていこうというやり方です。

 もし、国民年金を厚生年金に合わせれば、国民年金の保険料負担はたいへん重くなります。厚生年金の保険料は年収の13・58%で、その半分は事業主負担です。国民年金に事業主負担はありません。国民年金の保険料がいまの数倍にもなったら、とてもじゃないが多くの中小業者やフリーターのみなさんが払えません。

 厚生年金を国民年金に合わせると企業負担がない制度になり、受け取る年金の水準も大幅に下がることになります。これを期待しているのは財界です。日本経団連は、昨年一月の「奥田ビジョン」のなかで、厚生年金の企業負担をなくすことを提唱していますからね。年金を貧しくする方向での「一元化」には反対です。

消費税増税に道ひらく三党合意

 さらに三党は、二〇〇七年に消費税の大幅増税をすることで合意しています。

 これは根本的な誤りです。消費税は低所得者に負担が重い不公平税制で、最大の暮らし破壊税、景気破壊税です。大企業は、商品価格に転嫁するので消費税は負担になりませんから虫のいい話です。

 これまでも「消費税はくらしに使う」といいながら、実際には社会保障の切り捨てを続けてきました。消費税導入以来十六年間の消費税の総額は百四十八兆円、この間の法人三税(法人税、法人事業税、法人住民税)の減収額は百四十五兆円(今年度予算含む)。消費税は法人税などの減収の穴埋めにされたわけです。

 今回の年金改悪は、自民党、公明党の唯一のうたい文句だった二枚看板がはがれたことだけでも撤回すべき内容です。引き続き参院の審議で追及し、廃案に追い込みたいと思います。


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