日本共産党

2004年5月25日(火)「しんぶん赤旗」

9条“買収”

経団連が動き出した


 米軍のイラク占領に協力するため自衛隊が戦場に派兵されている中、日本をアメリカと一緒に「戦争ができる国」にするための改憲策動に財界が乗り出してきました。「政策をカネで買う」企業献金を再開した日本経団連は、二十七日の総会で憲法問題を考えるための委員会を立ち上げることを発表。憲法九条が今、財界の買収の標的になろうとしています。


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憲法9条守れは国民の願い=3日、東京・日比谷野外音楽堂

 日本経団連の二十一世紀戦略である「奥田ビジョン」(二〇〇三年一月)は、「企業人が政治に主体的に関与し、真の国益に向けて政治を動かし支援する」と、企業献金をテコに政治を動かすことを宣言しました。同会が十年ぶりに再開した企業献金は、政党の政策を評価し財界の要望に合う政党へ献金するやり方です。政策評価の項目は「日本経団連が提言した分野」です。これまでは、経済政策の分野に限られていました。

 ところが献金問題のまとめ役、宮原賢次副会長は、政権公約を検証するために開いた「政権公約検証大会」でこう発言しました。

 「外交・安全保障政策がますます重要な政治課題となるなかで、これらを評価項目とするためには、まず経団連として、しっかりとした議論をしていくことが必要である」

 従来の枠をこえ、安全保障問題を政党評価の対象にすることを明らかにしたのです。

27日開く総会で

 この議論の舞台になるのが、二十七日の総会で設立する「国の基本問題を考える検討委員会」です。奥田碩会長は、同委員会で「憲法問題を検討していきたい」と表明しています。

 この委員会は、憲法九条を最大の焦点として、改憲に向けた財界の意思統一をはかるものとみられています。

 もし、企業献金の政党評価項目に改憲問題が入ることになれば、憲法九条がカネの力で蹂躙(じゅうりん)されることになります。

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 日本経団連が初めて設置する憲法問題の委員会の委員長には、東京三菱銀行の三木繁光頭取(日本経団連副会長)が就任することが決まっています。東京三菱銀行は、日本最大の軍事企業である三菱重工のグループ企業です。

 三菱重工は、防衛庁からの「天下り」も多数受け入れ、戦闘機、ミサイル、車両などを生産。軍需依存度は総売上高の一割を超えています。

 日本経団連副会長でもある三菱重工の西岡喬会長は、日米の軍需企業が集まり五日にワシントンで開かれた「日米安保戦略会議」で「日米防衛協力を強化するためには、武器輸出三原則の緩和が最重要課題だ」と発言しています。

 武器輸出を禁止した武器輸出三原則は、憲法の平和原則を具体化したものです。憲法を形がい化する財界側の動きは着々と進んでいます。

同友会も日商も

 財界の中では経済同友会が昨年四月、「早急に憲法改正を実現すべき」との意見書をまとめています。日本商工会議所も山口信夫会頭が四月の記者会見で「憲法九条の問題などをはっきりさせておく必要がある」と、改憲への意見書をまとめる方針を明らかにしています。

 一連の財界の動きについて、財界ジャーナリストは、「経済同友会が意見書を出したといっても、あれは(財界人の)個人の集まり。日本商工会議所も中小企業としての性格が強く、経団連の露払い役にすぎない」といいます。日本の業界団体を束ね、財界総本山といわれる日本経団連が改憲に動き出したことについて、「いよいよ財界の本丸が出てきた」と強調します。

 財界戦略に詳しい神戸女学院大学の石川康宏助教授は次のように指摘します。

 「アメリカによるミサイル防衛の売り込みから国内軍需産業の動きが目立っています。アメリカへの追随を深めることで兵器生産拡大をめざすというものです。小泉自・公内閣が昨年末に決めたミサイル防衛への参加はいよいよ憲法九条を邪魔ものとします。しかし、イラク派兵の破たんに明らかなように、平和と友好的な経済交流を求める世界の流れに逆らったこの道に未来はありません」


経団連の憲法・安全保障に関する主な意見表明

■佐藤喜一郎 経団連副会長・三井銀行会長『エコノミスト』1965年5月11日号

 「世界的に、鉄鋼や肥料がどうだ、ということになると、日本は発言力があるけれども、政治問題になるとありはしないよ。なんにも軍備をもたないで、国連軍の片棒もかつげないような状態では、あまり発言権はない」

■斎藤英四郎 経団連会長・新日鉄会長1990年9月4日の記者会見

 「憲法も含め、あるいは自衛隊法も含め、有事のさいにおける法のあり方というものは検討されるべきである」

■平岩外四 経団連会長・東京電力会長1991年7月18日 経団連の夏のフォーラム

 「武力を使わずギリギリまで平和的手段で国際貢献を果たすべきである」

■今井敬 経団連会長・新日鉄社長2000年7月14日 経団連の夏のフォーラム後の会見

 「私自身は、実態にあうように憲法を改めるべきだと思っている。(憲法の条文を)素直に読むと、今起こっている諸問題に対処できない」

■奥田碩 日本経団連会長・トヨタ自動車会長『文芸春秋』2004年1月号

 「(先送り問題は)憲法改正問題も同様だ。大事な問題を先送りしているうちに、にっちもさっちも行かないような状況に見舞われる」


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