日本共産党

2004年5月23日(日)「しんぶん赤旗」

日朝首脳会談

何が話し合われたか


 史上二回目の日朝首脳会談は、終了後の記者会見で小泉純一郎首相が強調したように、二〇〇二年九月に両首脳が署名した「日朝平壌宣言」の誠実な履行を確認するものとなりました。



国交正常化交渉
「協議を再開させたい」

 「平壌宣言」は「国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注する」と確認。それにもとづいて二〇〇二年十月に交渉が再開しましたが、その後は中断したままとなっています。

 今回の首脳会談で「日朝平壌宣言」が日朝関係の基礎であることを再確認しました。小泉首相は会見で「今後、国交正常化交渉再開に向けて事務当局間でよく打ち合わせし、協議を再開したい」と表明。「今回の私の訪朝が国交正常化実現への転機となることを期待したい」と強調しました。

 一方、日本国内では自公民三党などが対北朝鮮送金停止など経済制裁措置を可能とする「改正」外国為替・外国貿易法を成立させ、さらに北朝鮮籍船舶の入港阻止を狙った新法を制定しようという動きがあります。

 こうした動きに関連して小泉首相は、北朝鮮側が「平壌宣言」を順守していく限り「日本は制裁措置の発動はしない」ことを明言しました。

 さらに小泉首相は「在日朝鮮人に対し、差別などが行われないよう友好的に対応する」ことも表明しています。

拉致問題
安否不明者の再調査約束

 「平壌宣言」は、「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題について」、北朝鮮側が「日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとる」という言い回しで、拉致問題の解決を明確にしていました。

 今回の首脳会談の結果、蓮池夫妻と地村夫妻の家族五人が帰国し、曽我ひとみさんの家族については北京で再会することとなりました。

 二〇〇二年九月の首脳会談では、生存者五人のほか、拉致被害者の八人が死亡、一人が不明であると伝えられ、その後、日本政府が調査団を派遣し、曽我さんの母親を含める十人が安否不明のままとなっています。今回の首脳会談ではこの十人について、日本側も加わって本格的な再調査を行うことで一致しました。

核・ミサイル問題
6者協議の活用を確認

 「平壌宣言」は、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を順守することを確認」し、「核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認」していました。

 今回の首脳会談で、小泉首相は「完全な核廃棄が不可欠だ。国際的検証が必要だ」と強調。さらに、「核を廃棄することによって北朝鮮側の安全はかえって確保されるのだ」とのべ、南北朝鮮と日米中ロによる六者協議を活用すべきだと訴えたとしています。

 金正日総書記は「朝鮮半島の非核化が目標だ。六者会合を活用して平和的解決に向けて努力したい」と表明。日朝二国間の協議にとどまらず、六カ国協議の場でも話し合っていく姿勢を示しました。さらに「平壌宣言」で北朝鮮側が表明していた「ミサイル発射のモラトリアム(一時中止)」を継続することも確認されました。

 六カ国協議 北朝鮮の核開発問題をめぐる南北朝鮮と日本、米国、中国、ロシアの六カ国による協議の場。二〇〇三年八月に開かれた第一回協議は「対話を通じて平和的に解決する」「和平交渉の過程で各国は情勢の悪化をエスカレートさせる措置をとらない」など六項目で同意。今年二月の第二回協議は「議長声明」で、朝鮮半島の非核化を確認し、「協調による一致という手順によって懸案事項を解決していくこと」で合意しました。




2002年9月17日調印の

「日朝平壌宣言」 (全文)

 二〇〇二年九月十七日の日朝首脳会談で調印された「日朝平壌宣言」(全文)は以下のとおりです。

 小泉純一郎日本国総理大臣と金正日朝鮮民主主義人民共和国国防委員長は、二〇〇二年九月十七日、平壌で出会い会談を行った。

 両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した。

 一、双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、そのために二〇〇二年十月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした。

 双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した。

 二、日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。

 双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、また、民間経済活動を支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。

 双方は、国交正常化を実現するにあたっては、一九四五年八月十五日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議することとした。

 双方は、在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。

 三、双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。

 四、双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。

 双方は、この地域の関係各国の間に、相互の信頼に基づく協力関係が構築されることの重要性を確認するとともに、この地域の関係国間の関係が正常化されるにつれ、地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要であるとの認識を一にした。

 双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を順守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。

 朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを二〇〇三年以降も更に延長していく意向を表明した。

 双方は、安全保障にかかわる問題について協議を行っていくこととした。

 日本国 総理大臣 小泉 純一郎

 朝鮮民主主義人民共和国 国防委員会委員長 金 正日

 二〇〇二年九月十七日 平壌




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