日本共産党

2004年4月23日(金)「しんぶん赤旗」

衆院厚労委・年金改悪案参考人質疑

公文昭夫年金実務センター代表の陳述 (要旨)

将来の不安、ますます拡大


 二十二日の衆院厚生労働委員会で行われた年金改悪法案の参考人質疑での公文昭夫・年金実務センター代表の意見陳述(要旨)は次の通りです。


 政府案は、国民生活を悪化させると同時に、将来の年金不安をますます拡大するものです。十九日に公表された新聞の世論調査でも、「支持しない」が67%、「評価する」は22%です。これが率直な国民世論です。ただちに取り下げ、国民に納得の得られる法案として出し直すべきです。

空洞化を加速

 問題点の第一は、すでに限界に達している保険料を、国民年金では30%、厚生年金では35%も引き上げ、年金制度の空洞化を加速させ、制度崩壊を促進することです。

 農漁民、自営業者の保険料は一人月一万三千三百円。夫婦だと月二万六千六百円、三人だと月約四万円で、たいへん大きな負担です。

 こうした「第一号被保険者」二千二百三十七万人のうち、保険料免除が四百三十五万人(二〇〇二年度)。滞納者は六百六十万人、未加入者が六十三万人で合計約千百六十万人にのぼります。滞納の理由の71・4%が「高くて、支払うのが困難」という経済的理由であり、生活苦の反映です。

 空洞化は国民年金に限りません。厚生年金でも新規法人の二割が未加入です。倒産または倒産を偽装して、厚生年金から国民年金へ移転する動きまで出ているのです。

 このまま推移すれば、近代国家では考えられない大量の無年金者、生活できない多くの低年金者が発生します。こうした深刻な空洞化問題の解消なくして、年金制度の未来はありえません。

 野党や労働組合などから、基礎的部分を全額国庫負担、税方式の最低保障年金制度に切り替えるべきだという提言が出ています。まったく正当な提言だと思います。

額の切り下げ

 第二の問題点は、現実を無視した年金額の切り下げです。老齢基礎年金だけの受給者は約九百万人で平均は月四万六千円にすぎず、憲法二五条の理念にもとづく生活保護基準の半分以下です。これを二〇二二年までに15%削減するのが、政府案であり言語道断です。

 第三は、国会審議を無視したやり方です。今後は五年ごとに法案を提出し国会で審議する必要がなくなり、保険料値上げや年金額切り下げが国会審議抜きで自動的に行えるようになります。まさに民主主義の形がい化です。

消費税の増税

 第四は、一九九四年の国会で全与野党一致で決めた、基礎年金の国庫負担割合二分の一への増額が先送りされています。しかも、五年後の二分の一への増額は、消費税増税を軸とした税制改革を条件としています。

 年金など社会保障の財源を、消費税に求めること自体が間違いです。国際的に見ても最も逆進性の強い日本の消費税は、社会保障の大原則である応能負担の原則に反するものです。大企業の優遇税制の是正、歳出配分の抜本的見直しでやるべきです。

 第五は、百年の「財政均衡方式」という考え方を採用し、年金積立金は二〇五〇年には三百三十七兆円、現在の二・四倍まで増やそうとしていることです。これは事実上、積立金の非民主的運用を温存・継続するものであり、年金改革の理念に反します。高齢化社会のピークとなる二〇四〇年から五〇年をめどに、段階的・計画的に取り崩し、民主的な運用機関のもとで活用すべきです。


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