日本共産党

2004年4月4日(日)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい特集

道路特定財源
一般財源化って?


 ムダな公共事業への批判が高まる中で、見直しが問題になっているのが道路特定財源です。日本共産党はこれを一般財源化して、基礎年金の国庫負担を引き上げる財源などに使うことを提案しています。道路特定財源とは何か。その一般財源化とは、どういうことか。

 清水博記者



表
■どんなもの

 表を見てください。道路特定財源になっている税金の一覧です。

 代表的なのはガソリンにかけられる税で、揮発油税と地方に譲与される地方道路税です。この二つを合わせて「ガソリン税」と呼びます。

 軽油には軽油引取税が、LPG(液化石油ガス)などには石油ガス税がそれぞれ含まれています。

 購入した自動車を登録するときには自動車取得税を支払い、その後は車検のたびに自動車重量税を支払います。

 これらの税金は、全額または定められた割合を、「道路整備費の財源」や「道路に関する費用」に充てています。「特定財源」と呼ぶのはこのためです。ただし、自動車重量税のように、道路目的に使うとする根拠法はなく「税創設の経緯等から」(国土交通省ホームページ)と説明されているものもあります。

国と地方で5.7兆円

 二〇〇四年度予算の道路特定財源は、国と地方合わせて約五・六六兆円になります。

 国は、揮発油税、地方道路税、石油ガス税、自動車重量税として四・三兆円を徴収します。自動車重量税の一部は一般財源なので、道路特定財源としては四・一兆円です。

 ただし地方道路税は全額を、石油ガス税の二分の一、自動車重量税の三分の一を、それぞれ地方に「譲与税」として配分することになっています。今年度は合計〇・七兆円。差し引き国の分は三・四兆円です。

 地方の道路特定財源は都道府県が徴収する自動車取得税、軽油引取税の一・五兆円です。国からの譲与税〇・七兆円を合わせると、二・二兆円となります。

グラフ
■できた経緯は

 揮発油税は二・八兆円で、道路特定財源全体の半分近くを占めています。

 揮発油税は、もともとは政府の財源対策の一環として一九四九年につくられました。当初は、酒税やたばこ税などと同じような間接税の一つで、使い道を特定しない一般財源でした。

 ところが五三年に、のちに首相となった田中角栄議員も提案者に加わった「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」(議員立法)が成立。翌年から始まる道路整備五カ年計画で、揮発油税の税収相当額を国の負担金・補助金に充てなければならないとしました。これが道路特定財源の始まりです。

 揮発油税は、「臨時措置法」が廃止された五八年以降も、別の特例法により「道路整備費の財源」に充てられます。このあと、あらたな道路目的の税が次々とつくられていきました。

道路支出は米国なみに

 道路特定財源はふくらみつづけました。七〇年度には〇・八兆円であったのが、現在はその七倍以上の五・七兆円に達しています(グラフ)。国・地方の道路支出は、特定財源と一般財源からの支出をあわせて毎年度十兆円を超える(九二―二〇〇一年度)など、国土面積が二十五倍のアメリカに並ぶほどになったのです。

■なぜいま焦点に

道路整備の緊急性なく

 揮発油税を特定財源にした五三年当時は、国道や都道府県道でも、「改良されたものは約30%」「約一万六千キロの自動車交通不能区間」「舗装道の状況は簡易舗装も含めて…改良済み延長の15%にすぎない」(田中角栄議員の提案理由説明)という状況でした。道路整備を急ぐことには、一定の根拠があったといえます。

 しかしいま、国道・都道府県道の舗装率(簡易舗装を含む)は96%に達しています。日本の面積あたりの道路密度も一平方キロあたり三キロを超え、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどの二―三倍です。道路整備を急ぐ緊急性は薄れてきたといえるでしょう。

 それでも入ってくる税金を、ひたすら道路づくりに投入し続けるのが、道路特定財源です。ムダな公共事業を拡大するしくみの最たる例として、見直しを求める世論が高まってきました。

小泉内閣は温存、拡大

 三年前に発足した小泉内閣が、道路特定財源の見直しを経済財政運営の基本方針(いわゆる「骨太方針」)の柱の一つとし、参院選の自民党の公約として打ち出しました。〇二年度の当初予算案では、約二千二百億円を「一般財源化」して「改革の成果」だと自賛しました。

 ところが〇二年度秋の補正予算では、大幅に道路整備費を積み増し、〇三年度予算以降は、「一般財源化」を一切やめてしまいました。逆に、本州四国連絡橋公団の債務処理に投入したり、採算がとれない高速道路を国・地方の負担で建設する「新直轄方式」の財源にするなど、道路特定財源を温存するような使途拡大を進めています。

課税そのものをやめたら

 道路整備の目的が達成されたのなら、廃止するか減税すべきではないかという意見もあります。

 揮発油税などは、酒税、たばこ税などと同じ個別間接税で、一部の消費者が負担しているという点では同じです。日本共産党は、消費税には反対していますが、個別間接税に一般的に反対しているわけではありません。

 ガソリンや自動車への課税は、ヨーロッパなどの諸外国でも一般に行われています。環境への負荷にたいし自動車所有者に一定のコストを負担してもらうという考え方からです。イギリス、フランス、ドイツでも税収の全額または多くの部分が一般財源です。

 揮発油税は、すでに紹介したようにもともと「目的税」ではなく、「道路整備財源臨時措置法」などで期限を限って特定財源にされただけで、期限がすぎれば「一般財源」にもどす性格のものです。自動車重量税も法律的には「目的税」ではなく、「一般財源化したら廃止する」というものではありません。

 今回の日本共産党の一般財源化の提案は、増税などによらずに、現行の税収の枠内でその使い道を変えていこうとするものです。国民に新たな負担をかけることはありません。



日本共産党の提案
年金財源にもあてる

 いま日本共産党は、アメリカ・財界優先の逆立ちした税金の使い方を、国民のくらし中心に切り替えることをめざしています。その柱の一つが、安心できる年金制度への財源などに充てるため、道路特定財源を一般財源化することです。

 日本共産党が提案しているのが、最低保障年金制度(最低保障額五万円から開始)。これを実現するには、基礎年金への国庫負担割合(現行は三分の一)を二分の一に引き上げるための二・七兆円のほかに、あらたに約五兆円が必要です。二・七兆円は、道路特定財源の一般財源化をはじめ歳出の見直しで確保することを提案しています。

 日本共産党は、早くから一般財源化を主張してきました。

 七七年の『日本経済の提言』では、「ガソリン税の道路特定財源方式をやめる」ことを提言。八一年の『国民のための財政百科 財政再建への提言』でも、「一般財源化し、社会保障・福祉、生活密着型公共投資などにも使えるようにすることが緊急に必要」だと主張しています。



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