日本共産党

2004年3月20日(土)「しんぶん赤旗」

いつも心に解雇不安

これでいいのか!? パート、派遣…

急がれる均等待遇の法整備

倉内節子弁護士に聞く


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 「これでいいのか!?『多様な働き方』―雇用の安定と均等待遇を目指して」をテーマに日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会がシンポジウムを開きました(七日付既報、一部地域は八日付)。基調報告をした倉内節子弁護士(シンポジウム実行委員長)に聞きました。聞き手・矢藤 実記者

非正規雇用の大半は女性

 パートや派遣など非正規雇用労働者が急増し、大きな社会問題になっています。しかも、その大半が女性です。非正規労働者は、常に解雇の不安を抱え、低賃金など生活の根底を危うくされています。さらに、業務請負制の導入で、使用者責任が不明確となり、仕事や収入がさらに不安定になっています。このような不安定雇用労働者の保護を法的にどのように確立していくかという問題意識でシンポジウムを開きました。

 政府統計(二〇〇二年)でも、「パート、アルバイト、派遣労働者などの非正規雇用」は全就業者数の23%を占めています。とくに「パート、アルバイト」は非正規雇用の72・6%にのぼります。一九九七年と比べ正規雇用労働者は2・3%減少し、非正規労働者が2・7%増加しています。

 非正規の労働者がなぜこのように増大したのか、最初に財界のスタンスを調べました。規制緩和のなかで、財界は二十一世紀戦略として、「新時代の『日本的経営』」(日本経営者団体連盟)を九五年に発表しました。

 その中で、就職すれば定年まで働けたこれまでの日本型雇用、終身雇用制を、経済のグローバル化に伴い雇用を流動化させ、正規を減らし、非正規を増やす方向を打ち出しました。長期雇用を前提としない「高度専門能力活用型」、パートや契約社員、臨時、アルバイトなどの「雇用柔軟型」で、いずれも有期契約の雇用形態に労働者をグループ化することを明らかにしたのです。これがひとつの契機になったと考えられます。

財界の本音はコストの削減

 財界の本音は、根底にコスト削減があります。女性に「就労の機会の拡大」といいながら、母性保護や深夜労働の制限を労働基準法から外し、非正規雇用を拡大しました。

 賃金では、女性の一般労働者は男性に比べ、66・1%ですが、女性パート労働者は、43・9%(時給比)と極めて低い(図)。しかも、パートでも正規と同じ時間、働いている人が多いのです。年収三百万円以上は、わずか1・3%。圧倒的に五十万円から三百万円以下。これでは生活はできません。母子家庭など、本当に深刻です。

 シンポジウムでも、非正規雇用は賃金が低く、有期契約のため問答無用に解雇された深刻な発言が続きました。

 現在、企業が非正規雇用をどう扱っているか、日弁連の両性の平等に関する委員会は、企業にたいしてアンケートをおこないました。百九十七社に送り、五十六社から回答が寄せられました。それを見ますと、「非正規雇用の従業員がいる」は五十三社。パートや派遣、嘱託、契約社員が多く、業務請負もありました。しかも、百パーセント近くが有期雇用で、期間は六カ月、一年が圧倒的です。採用理由は「人件費削減」がトップで次が「業務量の変動にあわせての雇用調整」です。非正規雇用に女性が多いことも表れています。

 有期雇用は、企業が期間満了を理由に契約を打ち切れるので、労働者は企業のいいなりになりがちです。その結果、雇用不安がもたらされます。契約を破棄される不安から権利も主張できず労働者同士の団結権すら奪われます。これでは、人間らしく働くことができません。非正規に女性が多いのは女性差別であり、「男は仕事、女は家庭」という性別役割分担が大きく作用していると言えます。

日本の働き方国連から懸念

 国際的にも日本の労働者の働き方、非正規雇用の拡大に懸念が広がっています。昨年開かれた国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本ではパートタイムや派遣に女性の割合が大きく、「賃金が一般労働者より低いことを懸念」し、改善を求めています。EU諸国では均等待遇の原則を定め、各国で国内法の整備をすすめています。労働組合は、未組織労働者にも適用される労働協約締結のとりくみをすすめています。

 男女平等、非正規雇用労働者の労働権を確立するためにも、憲法を生かし非正規雇用を規制する法の整備が急がれます。(1)雇用の安定をはかるため、有期雇用は代替、短期などの特別な場合以外は、原則禁止(2)パートは、労働時間に比例して同一または類似の業務をおこなう正規フルタイム労働者と賃金、母性保護などで均等待遇の原則を明文化し、不利益扱いを禁止する法整備―をめざし、これから私たち法律家も取り組んでいきたいと思っています。


日本共産党が提出した法案のポイント

 日本共産党は、パート労働者と有期雇用労働者にたいし通常労働者との均等待遇を確保することを盛り込んだ「パート・有期労働者均等待遇法案」(パート労働法一部改正案)を参議院に二月に提出しました。ポイントは次の通りです。

 ○パート労働法の対象を、期間を定めて雇用されている有期労働者に拡大。

 ○賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件について、事業主は通常の労働者と差別的取り扱いをしてはならない。

 ○事業主が通常労働者を募集する場合、現に雇用しているパート・有期労働者に応募機会を優先的に与える。

 ○育児や介護など家族的責任を負う通常労働者が申し出た場合、一定期間パートで働ける措置をとる。

 ○厚労省は、事業主に助言・指導、勧告でき、従わなければ公表できる。なお従わない場合は是正命令を発し、罰則も。


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