日本共産党

2004年3月16日(火)「しんぶん赤旗」

卒業式で「日の丸」「君が代」

都立高、養護学校

異常な監視、強制


 三月、卒業生の成長を喜び、門出を祝う卒業式が全国の学校で行われます。しかし、東京の都立高校や養護学校では、「日の丸」「君が代」を強制するための監視体制がしかれ「祝う」という言葉に似合わない光景が繰り広げられています。

「生徒が主人公」

 三月上旬のある都立高校の卒業式。二男を通わせる母親は、教職員席の後ろの座席から式のようすを見ました。昨年までは教職員は生徒の方を向いていましたが、今年は全員が正面壇上の「日の丸」を向くよう座席が設置されていました。

 式が始まると「一同起立」の号令のあと、そのまま「国歌斉唱」に進行しました。起立しない教師に教頭が歩みより声をかけます。緊張が走るなか「君が代」の歌声が流れました。歌が終わったとたん東京都教育委員会の職員らしき男性が険しい顔で黒い手帳にしきりと書きこんでいました。

 母親は「卒業生は思い思いの服装で個性を主張していたし、生徒代表の卒業の言葉は高校生の感性で、戦争の問題、社会の問題を語っていてとてもよかった。でも、子どもたちが卒業式の主人公のはずなのに、そうではなくなってきているように思えてなりません。都教委が主人公にしたいのは『日の丸』のうしろに透けて見える国家なのか」と不安を語ります。

 別の高校の非常勤講師の男性は「教頭が式直前まで教職員の出席を確認し、都教委とともに監視するように教職員席の最後列に着席した」と話します。式前日までに、教職員一人ひとりに職務命令書が手渡されました。職員の座席はすべて指定され、一覧表が作られました。起立しなかった職員をチェックするためです。

反対する親たち

 都立定時制高校のPTA役員をしている母親は事前に、教職員が職員会議で「生徒が主人公の卒業式に」と激しくやり合ったことを聞きました。「先生が処分されて異動になったら困る。先生が大変なら、親が頑張るから」とPTA仲間に「『日の丸』『君が代』に対する考えはいろいろだと思うが、強制されるのは納得できない。今年から司会の『歌う歌わないは、内心の自由』という説明がなくなるそうです。私は先生への強制に抗議して起立しません。これは、子どもたちと私たちの内心の自由を守ること」と親たちに呼びかけました。

 強制と監視が強まったのは都教委が昨年十月に学校行事での「日の丸」「君が代」の実施を強化する指針、通達を出して以来。先日、創立記念行事で「君が代」斉唱の際に起立しなかった教職員十人が、昇給三カ月停止などを含む戒告処分を受けました。

 今年に入り強制に反対する親たちが取り組んだ「卒業式・入学式の『通達・実施指針』の再検討を求める署名」の賛同者は都立学校八十一校、五千七百七十四人にのぼります。

 今年一月三十日には、都立学校の教職員が「国歌斉唱しないことを理由として(教職員に)いかなる処分もしてはならない」ことなどを求めて「国歌斉唱義務不存在確認請求訴訟」を東京地裁に提訴しました。


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