日本共産党

2004年3月13日(土)「しんぶん赤旗」

命を削る深夜勤

郵政公社の実態をみる

仮眠なく4日連続

血圧、健康に悪影響


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 日本郵政公社が「深(ふか)夜勤」(別項参照)といわれる制度を導入して約一カ月がたちました。十一日深夜、日本最大の郵便センター・新東京郵便局(東京・江東区)を日本共産党の小池晃参院議員、今村順一郎参院東京選挙区候補が視察しました。そこで見たものは、深夜勤務に慣れているはずの郵便労働者も悲鳴を上げる「深夜勤」の非人間的な実態でした。東京総局・室伏敦記者

小池、今村氏視察に労働者が告発

 小池、今村両氏は、同局を訪れ真っ先に労働者たちの声を聞きました。

 「つらいですよ」と開口一番語ったのは、三連続夜勤を二回経験した男性労働者(42)です。「昼間寝ようとしても眠りが浅く、疲れがとれません。夕方にはまた仕事に行かなければならない重圧感もある。仕事を続けられるか不安です」といいます。

 二夜連続勤務を二回経験した男性(56)も、「こんなにつらいのは初めてです。二晩目は出勤しても頭はボーっとしている。周りの仲間も顔色が悪い。休憩時間には長いすで横になっている人が多い」と語りました。

 同局の正職員の平均年齢は四十六歳。連続夜勤はこたえます。

 郵産労新東京郵便局支部の橋本忠委員長は、「一週おきに昼夜が逆転し、食事も不規則で食欲も出ない仲間が多い」「父親が朝帰ってくると、(昼間眠れるようにするため)子どもを外に連れ出すなど、家族も神経質になっている」と、家族にまで影響を与える「深夜勤」を告発しました。

深夜の局内…

 一日に二千二百万通の郵便物を処理する新東京郵便局は延べ床面積約十万平方メートルと広大です。正職員が千百五十八人、非常勤職員が千二百五十四人働いています。

 小池、今村両氏は午後十時から、間中幸男局長らの案内で局内を視察しました。

 トラックヤードには大型の郵便車が次々到着。郵便物を満載した箱が搬送車やベルトコンベヤーで運ばれ、目的地別に仕分けされていきます。騒音のなか、労働者が黙々と作業していました。

 巨大な建物のあちこちで深夜勤の始業前のミーティングが行われていました。正規の職員は少なく多くは非常勤職員で、女性の姿も目立ちます。

 パソコン端末などを除きいすはなく、労働者は立ちっぱなし。パソコンボードには、「目標1時間千八百件打ちこみ」の張り紙が…。

 休憩スペースには長いすが置かれ、休み時間中の労働者が、しばしの休みをとっていました。

政府は野放し

 深夜勤務が昼間の勤務に比べ健康への影響が大きいうえ、育児や介護などの家族的な責任を果たす上でも大きな障害となります。

 ILO(国際労働機関)一七八号条約では、「夜間労働者の通常の労働時間は一般的に平均して短く」するようにとしています。九八年には「ILO一七一号条約(夜業に関する条約)の趣旨を踏まえた深夜業の実効ある抑制方策について検討する」(参院労働・社会政策委員会)との付帯決議も上げられています。

 ところが政府は、ILO一七一号、一七八号条約とも批准せず、深夜業の増大を野放しにしています。

 日本共産党の小池、八田ひろ子、宮本岳志各参院議員は一月、質問主意書を提出し、国際基準に基づく深夜労働の軽減と、郵政事業での深夜労働の改善を求めました。

 小池氏は、「郵政公社は二万人が働く、日本を代表する職場の一つ。ここの労働制度は全国に広がりかねず、日本の労働者全体に影響を及ぼしかねない。夜勤は血圧上昇など、健康に悪影響があり、それを連続するなど許されない。国会でもとりあげたい」と語り、労働者を激励しました。

非常に過酷だ

 深夜労働の健康への影響に詳しい仙台錦町診療所産業医学センター所長・広瀬俊雄さんの話

 深夜労働は、脳や循環器疾患の発症に大きくかかわります。本来血圧が低下する深夜に労働すると、血圧が下がらず、高血圧の症状が増えます。緩和のために、深夜帯に最低二時間の仮眠時間が必要です。「深夜勤」で仮眠時間がとれなくなったのは、逆行です。

 朝勤務が明けて、その夜また勤務に入るということは、通勤時間を含む一日の拘束時間は相当長いばかりか、労働力の再生に必要な休息もとれず、これを最大で四日続けるというのは、非常に過酷です。

 そもそも、現在の郵便の七割はダイレクトメールと聞いています。労働者の健康も家族的責任も社会生活も犠牲にする深夜労働をさせて翌日配達する必要があるのか、国民的な討論が求められると思います。


「深(ふか)夜勤」とは

 日本郵政公社が二月八日から導入した制度。「深夜勤」という深夜勤務を最大四日連続して行い、翌週は日勤中心の勤務となります。

 「深夜勤」の時間帯は、早いもので午後七時から翌午前六時まで、遅いものは午後十時から翌午前九時まで。拘束十一時間で、仮眠時間はありません。

 それまでの「新夜勤」は十四時間勤務で途中、約二時間の仮眠時間もありました。週単位でみると「新夜勤」の週三十八時間が「深夜勤」四十時間と増加。賃上げせずに実質的な労働時間を増やし、その分人を減らす計画です。

 日本郵政公社は郵便事業の「黒字化」を目指して、郵便事業にたずさわる労働者を二年間で一万二千二百人(約一割)削減し、人件費六百億円を減らす計画です。


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