日本共産党

2004年3月7日(日)「しんぶん赤旗」

国民年金世帯で年3万4千円
厚生年金は1人6万5千円

5年連続引下げへ

物価スライドで3.1%削減


 小泉内閣は、国会に提出している年金改悪法案で、一九九九年―二〇〇一年の過去三年間の物価下落分(1・7%)についても、さかのぼって「物価スライド」を適用して年金給付額を削減する措置を盛り込みました。


表

 〇六、〇七年度の二年間で実施しようというもの。これが実施されると、〇三年度から五年連続の「物価スライド」による給付減となり、削減額は約一兆二千億円にもなる見込みです。

 物価スライドによる給付削減は、〇三年度に戦後初めて実施され、前年の〇二年一月から十二月の物価下落分0・9%(約三千六百億円)が、〇三年四月支給の年金から減額されました。〇四年度も0・3%の削減を閣議決定。〇五年度も政府の経済見通しを受けて0・2%の削減を計画しています。(表参照)

 さらに政府は、〇五年の物価上昇率を0・5%、〇六年の物価上昇率を1・2%と見込み、この上昇分が反映される〇六年度、〇七年度の給付額を増やさないことによって、九九年―〇一年の下落分と「相殺」するとしています。

 〇六年度、〇七年度にも「物価スライド」が実施されると、〇三年度から〇七年度までの削減幅は3・1%にもなります。年金の給付総額は年間約四十兆円ですから、この削減額は一兆二千億円にものぼります。

 3・1%削減によって、国民年金(平均月四万六千円)の場合、年間約一万七千円(夫婦で三万四千円)もの年金額が減らされる計算。厚生年金受給者の〇二年度の平均受給月額は十七万四千円ですが、その場合、年間で六万五千円も削減されることになります。

 物価スライド 物価の変動に応じて年金給付額を変える制度。物価上昇時に年金の価値が下がることを防ぐために導入されましたが、〇三年度から「物価下落」を理由にした削減が実施されています。



解説

物価スライドで年金額削減でも

社会保障負担は重く

 小泉内閣は、物価が下がったことを理由に年金削減を合理化していますが、医療、介護など社会保障関係のサービス利用に必要な料金(自己負担)は、この間の相次ぐ社会保障改悪によって「下落」どころか値上げばかりです。

 医療制度では、〇一年一月から病院の窓口で支払う老人医療費の自己負担に定率制(原則一割負担)が導入され、〇二年十月には定額負担制をすべて廃止して一割負担を徹底しています。

 六十五歳以上の介護保険料は、月額二千九百十一円(全国平均)が、〇三年度から三千二百九十三円へ13・1%値上げされました。

 こうした負担増を高齢者に押しつける一方で、給付のほうは「物価下落」を理由に削減するのは、国民の暮らしを守る政府の責任を投げ捨てるものです。そもそも「物価スライド」は、物価上昇で年金の価値が下がるのを防ぐために導入されたもので、制度発足当時、削減は想定されていませんでした。ましてや、過去の物価下落分までさかのぼって削減することは、収入を年金だけに頼る多数の年金生活者をいっそう苦しめるもので、公的年金制度の趣旨に反するものです。

 国民年金法では、「健康で文化的な最低限度の生活」を明記した憲法第二五条の理念に基づき、「国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止」し、「健全な国民生活の維持及び向上に寄与する」ことを、目的としています。国民年金受給者の46%を占める月四万円未満の年金生活者の年金額まで削減する「物価スライド」は、これを踏みにじることになります。

 山岸嘉昭記者


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