日本共産党

2004年3月3日(水)「しんぶん赤旗」

国民が刑事裁判の審理に参加

裁判員法案、国会に提出

“国民参加”実のあるものに

解説


 重大な刑事事件の裁判に国民が参加する裁判員制度について、小泉内閣は司法制度改革推進本部「裁判員制度・刑事検討会」の骨格案や与党案を踏まえた政府案を二日の閣議で了承しました。

委縮をしない条件づくり必要

 同制度の柱となる裁判の合議体は結局、「裁判官三人、裁判員六人」(小合議体の場合は裁判官一人、裁判員四人)となりました。

 日弁連や自由法曹団は、欧米の事例をもとに特別の専門知識や経験を持たない市民が職業裁判官と対等に議論を展開するためには、裁判員は裁判官の三倍は必要だと主張してきました。

 多様な人生経験を持った市民の常識・良識が裁判に反映され、司法の場に国民の義務と権利を行使していくことは、国民主権の裁判制度として重要な前進です。そのためには、裁判官主導による形だけの国民参加にさせてはならず、選出されても委縮しない条件づくりが不可欠です。

 裁判員には担当した裁判が終了しても「守秘義務」が課せられ、評議の経過などを漏らせば懲役か罰金をいい渡されます。懲役刑は検察審査員にもありません。

 裁判の進行中にマスコミと裁判員との接触禁止は当然です。しかし、裁判が終結した後はマスコミの取材に応じる、応じないは個人にまかせるべきです。知り得た被告人のプライバシーや他の裁判員の発言にまで及ぶことはよくありませんが、裁判員制度がどういうものなのか、広く国民に知ってもらった方がよい面もあります。

 国民参加の裁判を公正かつ迅速に進めていくためには、裁判員が法廷で見て、聞いてわかるようにしなければなりません。今国会では刑事訴訟法の改定案も併せて上程されます。

求められている“調書裁判”脱却

 刑事裁判が捜査官の取り調べで供述した調書を中心にした現在の「調書裁判」ではなく、法廷でのやりとりを集中して聞いて判断ができるように改革することが求められます。また、供述が任意のものか否かを調べるために、取り調べ過程のビデオ録画の導入が必要です。

 検察官が集めた証拠を全面的に開示しなければ争点整理もできず、裁判員からそっぽを向かれかねません。

 えん罪や誤判を生み出させないためには、国民の参加を実質的・主体的なものに充実させ、刑事裁判のあり方を抜本改革してこそ司法への信頼を取り戻すことができます。

 また、刑事裁判手続きの面では、その刑事裁判以外の目的で証拠の複製物を使用することを一切認めないなど、いろいろな問題点があり、国会審議で十分にたださなければなりません。

 創設される裁判員制度については、三年目あたりで見直し(政府の司法制度改革顧問会議での意見)することも考慮すべきでしょう。米田 憲司記者


裁判員法案/《要旨》

 政府が二日閣議決定した「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案」の要旨は次の通り。

 【総則】

 一、国民から選任された裁判員が裁判官とともに刑事訴訟手続きに関与することが、司法に対する国民の理解の増進と信頼の向上に資すると考え、必要な事項を定める。

 一、裁判員が参加するのは(1)死刑または無期の懲役もしくは禁固に相当する罪(2)懲役一年以上に相当し、故意に被害者を死亡させた罪にかかわる事件の刑事裁判。

 一、審理は裁判官三人、裁判員六人が原則。初公判前の準備手続きで被告人が公訴事実を認め、検察と弁護側に異議がなければ、裁判官一人、裁判員四人で審判できる。裁判員が被告人の所属する団体の構成員から危害を加えられる恐れがあり、裁判員の職務ができないと地裁が認めた場合は、裁判官のみで審理する。

 一、事実認定と法令の適用、刑の量定は裁判官と裁判員の合議で行う。法令解釈、訴訟手続きの判断は裁判官が行う。

 【裁判員】

 一、選挙人名簿に登録されている二十歳以上の国民からくじによる無作為抽出で候補者を選び、裁判所が選任手続きを経て決定する。

 一、七十歳以上または地方議員(会期中のみ)、学生・生徒、過去五年以内に裁判員または検察審査員に選ばれた人は辞退できる。重い疾病・傷害、介護・養育その他政令で定める理由(思想・信条の自由など)でも辞退を認める。

 一、任務は裁判の終局あるいは裁判官だけで事件を扱うこととなった時に終了する。

 【裁判員の参加する裁判の手続き】

 裁判所は対象事件の初公判前に争点整理などの準備手続きを行わなければならない。

 【評議】

 一、評決は裁判官と裁判員の多数決で決定する。

 一、評議の経過、裁判官・裁判員の意見など評議の秘密は漏らしてはならない。

 【裁判員等の保護のための措置】

 一、裁判員としての休暇取得を理由に(事業主は)解雇など不利益な扱いをしてはならない。

 一、何人も裁判員の氏名、住所、個人を特定する情報を公にしてはならない。

 一、何人も当該事件に関し、裁判員に接触してはならない。

 【罰則】

 一、裁判員に請託、威迫した者は二年以下の懲役または二十万円以下の罰金▽裁判員が評議の秘密その他職務上知り得た秘密を漏らしたときは一年以下の懲役または五十万円以下の罰金▽裁判員が正当な理由なく公判期日に出頭しないときは十万円以下の過料。

 【付則】

 この法律は公布日から五年以内に施行。


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